笑顔でバスを見送った三人は、バスが消えるまで見送った後、三人揃って小さくため息をついた。本当に彼らに任せてよかったのか、ほとほと不安なのだ。
「まっ、心配してても仕方ないよな! デビ、遊びに行こうぜ!」
「何言ってるのよ、タンポポ! 今から行くとこがあるでしょっ! 特にあんたが!」
さほど心配してなさそうな声のディアンをレイが一蹴する。彼女はポーチから財布を取り出すと、一枚のお札を取り出してディアンに差し出した。
「? なんだよ?」
「あんたねぇ。リーズ兄さんへの贈り物、用意するのを忘れてたうえにお金もないって言うから、貸してあげるってさっき言ったでしょ?」
「あぁ、そうだった」
「代わりに四倍返しね♪」
「はぁっ?!」
「さぁさ、いきましょ、デビ」
「……レイちゃん、でも千リンで、リーズさんへの贈り物買うのはちょっと……。安すぎないかな?」
「リーズ兄さんにはそれぐらいでいいのよ」
「「えぇっ!!」」
金銭(リーズ)に関してとにかく厳しいレイちゃんだった。
商店街についた三人は、とりあえずぶらぶらと通りを歩いていた。千リン以内に抑えるためには、できるだけ安くて、それでいてリーズが気にいるものでなければならない。となると、服やアクセサリー類は買えないので必然的に雑貨になる、というのは三人の共通した考えだった。
「やっぱ千リンって安すぎるぞ、レイ。もう千リンだしてくれよ」
「嫌よ。変わりに二倍返しで許してあげるから頑張って探しなさい」
「レイちゃん、リーズさんには厳しいね、ほんと」
空笑いをするデビの方をそれが何か問題?とでも言いたげにレイが見る。彼女は自身の姉に言い寄るリーズに悪い感情は抱いていない。ちょっとしたやきもちなのだろうということは、デビも知っているが、お金が絡むとさらに厳しくなるのはどうにかならないものだろうか。
「あのな! 二倍返しとか言うのが間違いなんだよ! 何で倍にして返さなきゃだめなんだ?!」
「あんた、ウェン兄さんの分も大してだしてないじゃないっ! 私達が多めに出してあげたんだから、その分返すのが道理でしょ!」
「二人とも、歩きながら喧嘩するのは止めようよ……」
「全くだ……」
デビが制止しようと声をあげると、それに賛同するように声が一つ。誰だと、三人が振り向くと買い物袋を片手に、不機嫌そうなザラが立っていた。
「どこでも大声で喧嘩しやがって。恥ずかしいとかねぇのかよ」
ザラはあきれたような顔をして買い物袋を持ち直した。どうやらお使いを頼まれたらしき中身に、デビはお疲れさまと声をかける。
「珍しいね、この時間帯に買い物なんて」
「まぁ今日休みだしな。それに今週くらいは……な」
「なるほどねぇ。ザラでも父の日とか気にするのね」
ニヤリとした顔でレイがザラを見る。彼女の頭にはすでにディアンと喧嘩していたことなどない。なんだとでも言いたげにザラが彼女を見返す。ディアンだけは意味が分からないらしく、キョトンとした顔をしていた。
「ねぇ、ザラ。あなた、レム先生にプレゼント渡す気はない?」
「金貸すから、倍返せってのは受け付けないからな」
「チッ」
「なんだ、お前もレムさんへのプレゼント買い忘れてたのか。俺と一緒だな」
アハハと笑い声を上げるディアンに、ザラは「お前と一緒にするな」と一言返すとまぁ付き合ってやっても構わねぇぞと付け足した。
「買い物の釣りもあるし、ちょっとしたものぐらいなら買えるだろ」
「相変わらず素直になれないのねぇ」
「なんか言ったか?」
「べ~つに」
「やっぱり俺と一緒なんじゃねぇかよ!」
「違うっつってんだろ」
ワイワイとからかい合いながら歩いていく三人を追うデビは、「僕、しゃべる間なかった」と心内で思うと同時に「なんかザラってマサ先生に似てきたなぁ」と、先ほどの彼の様子を思い出していた。
「やぁ、いらっしゃい。レイちゃん!」
「ハナビさん、こんにちは!」
結局四人は馴染みのある店にやってきていた。岩山雑貨店……、レイの親友、岩山サクラの実家である。そこの店主の岩山ハナビは日頃から来る、愛娘の親友達を快く招き入れた。彼女の店は、雑貨店と言うだけあって、多種多様なものが揃うのでとても重宝されているのだ。
「最近暑くなって来たねぇ。で、今日は何を買いに来たんだい?」
「ディアンとザラが兄さん達のプレゼントを探してるのよ」
「っていうと、リーズ兄とレム兄だね。ならいいものがあるから、とってきてあげようか」
「おばちゃん、ほんとか?! 千リン以内で買える?」
「買えるさぁ! ちょっと待っときなよ」
何より彼女自身が悩める客達の悩みを解決してくれるサービスが、大助かりであるということがこの店が繁盛している最大の理由なのだ。ハナビが奥に引っ込むと、四人はそれぞれに店に並んだ商品を手に取り眺めていた。面白そうな本、目を引くガラスの食器、変わったデザインの鞄や帽子、色とりどりの靴下やファイルなどなど……。とりあえず、この店にないものなんかないと言わんばかりに、多様な種類の商品がちゃんとジャンルごとに分けられて並べられている。
「なぁ、これおもしろくね? サッカーボール柄の弁当箱!」
「リーズ兄さんにはちょっとお子さま過ぎるし、それ二千二百リンじゃない。あんたじゃ買えないわよ。 それよか、この熊のキーホルダー、レムさんによくない?ザラ」
「……なんでお前が決めてんだ」
「だってレムさん、熊のぬいぐるみ好きでしょ? なら熊も好きかと思って。ちょっと趣味悪いけど」
「人の兄貴を勝手に熊マニアみたいに扱うな」
「ほーら持ってきたよ」
四人がワイワイやっていると、店の奥からハナビが帰ってきて何かをバンと台の上に置いた。ジャラジャラと何かが揺れて音を立てる。四人は、その揺れる何かに目をやった。
「……ハナビさん、これなんですか?」
「お守りだよ」
「得体の知れない人形にしか見えないわ。お守りって言うより呪いの人形ね」
レイが薄気味悪そうにそう言うその人形は確かに気味が悪かった。ブラブラとぶら下がる手足は荒い縄で、適当に切られたとしか思えない木片が、その先に括りつけられたようになっている。頭は丸い木片に白い布が被せられ髪に似せた茶色い紐が数本、乱暴に張り付けられており、その小さな顔には大と小のボタンが不器用につけられていた。表情はなく、胴体はハート型に切られた布地が左胸に張りつけてあるだけで、頭のパーツより一回りほど大きいだけだ。
「おばちゃん……、一応聞くけど、これ、なんのお守り?」
「そりゃいろいろあるけど、今ここにあるのは恋愛成就のお守りだよ」
「恋愛成就のお守りにはみえねぇよ……。てか、これ以外に種類があんのか?」
「これはさ、ある一人の女が時々作る商品でね。よく効果があるって評判なのさ。そいつは占い師でね。元々、占いに来た奴にしかやらないそうなんだが、いろいろ交渉して、やっとこさ商品化できたんだよ」
嬉しそうに話すハナビを微妙そうな顔で四人は見上げる。大体、うち三人の兄と姉達はそういうことはもう間に合っていると言っても過言ではない。特にリーズは「俺はビーズ以外とは結婚しねぇ!」と豪語する程なので、まぁ必要はないだろう。
「すごいんだよ、これが。相手にどんな人がほしいかとかまで選べるんだよ。たとえば、相手に料理上手な人が欲しければ、この人形だよ」
「こわっ! ハナビさん、これ怖いよ! 片手に包丁持ってんじゃん!」
「そりゃ、料理上手の象徴だからね」
「エプロンとかお玉とか、もっとマシなのあるだろっ! もうただの呪われた人形だよ、これ!」
「お金持ちが相手に欲しいなら、これ」
「お、お金の袋にサングラスって強盗じゃないですかっ!」
「……てかなんでそれだけやけにクオリティ高いんだ?」
「ねー、おばさま? 相手じゃなくて、私がお金持ちになれるお守りはないの?」
「「「目を輝かすな、お前は!」」」
「まぁ何にせよ、どうだいディアンにザラ? お前さん達の兄さんにこれ」
「兄ちゃんにはいいや。ビーズさんいるし」
「じゃぁ、ウェンの奴はどうだい? 確かあの人、うちの愚弟より二つ年下なだけだからもうすぐ三十路だろ?」
「兄さんは俺達がその話したら悲しい顔すんだよな」
「まぁそりゃそうよ。もうすぐ「おじさん」って言われる歳だもの」
「……何にしろ、あんまり興味なさそうだもんね」
三人が三者三様の答えを返している間、ザラは少しどうしようかと言った顔をしていたが、思い切ったように人形の一つを他三人には見られないように手に取った。
「お、ザラは買ってくれるんだねぇ。それにするのかい?」
が、バレないようにしていた彼の行動はハナビの一言で簡単に打ち砕かれてしまうのだった。
「お前買うのかよ。うわっ、しかも包丁持った奴じゃねぇかそれ?!」
「趣味悪いわね、兄弟揃って」
「ハナビさんには悪いけど、止めといた方がいいよ、ザラ」
「っせーな、お前等! あのな、お前等に分かるのか? 毎日毎日白米さえまともに食えねぇ俺の苦しみを! 兄貴に料理上手な相手でもいなきゃ、いつか俺が餓死すんだよっ!」
なお、彼の頭の中に自分が料理を覚えるという考えはまるっきりない。
「兄ちゃん思いだねぇ、ザラ。代金は五百リンだよ」
ザラがハナビに代金を差しだし、隣でディアンとデビがなおも思い直せとかなんとか言ってる間に、レイはふと何かを思いだし、ハナビにこう問いかけた。
「ねぇ、ハナビさん? 今日、サクラはどうしたの?」
「ん? あー、さっちゃんなら、今日は珍しく店の手伝いしてるよ。今は奥で別の客の相手させてるんだ」
「へー。あの子、なかなかしないのに、めずらしいわね」
「そうでしょ? なんかどうも面白い相手みたいでね。そういや、確か戦教の教師だとは言ってたけど、見たことがないんだよねぇ、あの顔」
「? ハナビさんの知らない人が来たの?」
「そうなんだよ。で、サクラは知ってるって言うから相手を頼んだのさ。 なんだか幸薄そうな顔してたねぇ……。この暑いのに、タートルに長いコートなんか着てさ」
「幸薄そうで」
「この暑い中」
「タートルネックに」
「長いコートって言えば……」
誰なんだろうねぇと言いたげなハナビを残し、四人は顔を見合わせると店内の奥へと向かった。
「ねぇねぇ、先生。これは?」
「……一々一言返さなきゃだめなのか、岩山」
「じゃぁねぇ、これは?」
「……もう適当に選んでるだろ、お前」
「あー! やっぱり!」
店の奥で商品を手に取りつつ、選ぶ作業をしていた二人はその声に後ろを振り向いた。ディアン達が向こうからやってくるのを見、サクラは笑顔で「レイちゃん、やっほー」と挨拶を返すが、もう一人の人物は「なんでお前らがここにいるんだ」と言いたげな顔で、四人を見返していた。
「なんだよ、先生、その顔は! 俺達の方だぞ、びっくりしたのは! 日頃、家と図書館と本屋と果物屋しか出入りしねぇ先生がなんでこんなとこいんのさ?」
「……お前らに関係あるかよ。俺だって、ほんとは家でのんびり読書したかったけど、そういうわけにはいかなくなったんだ」
はぁとため息をつきつつ、持っていた商品を棚に戻した先生、基八班担当のレスはほとほと困り果てたかのように頭をかいた。
「でも本当、どうしたんですか、先生? もしかして、ここにある面白そうな本でも発掘しにきたんですか?」
「……いや、本があるとは思ってなかったから、今度また来ようかな。今日はちょっと別の用事で、いろいろ店回ってるんだ」
「先生ね、プレゼント探してるんだって」
「い、岩山! それはこいつらに言わなくていい」
「へぇ~。誰へのプレゼントかしらぁ?」
目ざとく光ったレイの目に、レスはビクリと身を竦めた。彼女がいるということが、彼にとってここに来た理由を知られるのを嫌がる最大の原因だったわけだが、こうなってしまったからには洗いざらい話すまで離してくれないだろう。諦めと理解が早い彼は、もう一度、今度は大きくため息をついた。
「で、誰にやるプレゼント探してんだ?」
さらに店内を物色しながらザラがそう切り出すと、レスは「あ、なんか面白そうなのがあっちにあるぞ」と話を反らそうとした。諦めてはいるが、もしできるならという最後の抵抗である。
「先生? 話さずに逃げてもいいですけど、後日先生が「ハリトー先輩のことすっごい尊敬してますっ」って言ってた。なぁ~んて、ハリトー先生に言ったら、先生、どうなるかしらねぇ?」
ガタガタタタッ!
レイがそう言い終わるか言い終えない内に、レスは一気に店の一番奥の壁まで下がり、そこでうずくまって頭を抱えた。ある意味逃げているが、それはレイから逃げるというよりも、彼の頭の中にあるトラウマから逃げているといった方がこの場合は正しいようである。「あらあら、言い過ぎたかしら」と薄笑いを浮かべるレイに、レスに担当される側の三人は哀れそうな表情をするしかなかった。
「九尾、それ以上あいつのトラウマを掘り返してやるな」
「哀れすぎて見てられないよ……」
「あら、じゃぁ聞きたくないの? レス先生がプレゼントあげる相手」
「それは聞きたいけど……、ほどほどにしろっつってんだ!」
「レス先生ってば、おもしろ~い」
「タマネギコワイタマネギコワイタマネギコワイ(以下ループ)……」
レイを中心にあーだのこーだの言っている間に、どんどん禁断症状が出てきているレスだった。
まぁ、それはさておき本題である。禁断症状からレスが立ち直るには、少々時間が必要だったがどうにかこうにか立ち直り、彼は店の外でゆっくりと口を開いた。
「……だからだな、俺が戦教に始めて雑用としてきた頃に、ハリトー先輩が箱をくれて……。それは良かったんだが、その中身が実は……」
「その話は個人的にはすごく興味があるけど、今はその話じゃないでしょ、レスせんせ」
「……あー、そうでした」と彼はそこでやっと正気を取り戻したらしく、まぁ大して隠すことでもないけどと腕を組んだ。
「ほら、今週の日曜って「父の日」だろ?」
「そうだな。けど、それがどうかしたのか、先生?」
「……一応、俺には「超音 マサ」という義父がいるんだが……」
「なぁんだ、彼女とかじゃないのね? つまらないわ」
「……なんだよ、そっちから教えろって迫っておいて。つまらないとか言うなよ。軽く傷つく……」
「お前が傷つくのに、軽いも重いもあるかよ。 いつでも重症だろうが」
「……。まぁ、ともかく、その日のために俺は何か買って来いとマサに言われ、何を買えばいいかも分からず放浪していたというわけだ」
最初は何言ってるんだかさっぱり分からなくて、その上で「とりあえず何か買って、俺によこせ!」って言われたから、わけが分からなかった。と彼は付け加えると、唯一まともに相談に乗ってくれそうなデビの方を見て、「父の日って何買えばいいんだ?」と尋ねた。
「んー、そうですね。父の日には、母の日の赤いカーネーションに対して黄色いバラを送るのが習慣だそうですよ。他に無難な所で言えば、ネクタイとかワイシャツとかでしょうか。父親の仕事に使うようなものが主流ですね」
「……マサは花とか興味ないだろうしなぁ。ネクタイもワイシャツもいらないし。そもそも、そういう硬い格好は嫌がるんだ」
「じゃぁさ、先生。肩たたき券とかは? 自分で作った奴あげたら喜ぶんじゃねぇ?」
「……カタタタタ、キケン? なんだ、それ?」
「言えてねぇよ! 肩叩き券だよっ! 無料で肩叩いてあげる券! 一回兄さんにあげたら、すげー喜んでた」
「……なんだ、無料のものでもいいのか?」
「気持ちがこもってればなんでもいいんですよ。なんなら、言葉だけとかカードだけでもいいんです」
へぇ~と感心したような顔をするレスに、他四人はどんなことを言われていたんだと呆れ顔を浮かべる。あのマサのことだから、きっと無理難題をレスに押し付けたことは目に見えて明らかだが、一体何を言われたのだろう。
「レス先生? マサ先生になんて教えられたんです? 「父の日」のこと」
「……? いや、だから最初はなんのこと言ってるかさっぱり分かんなくて、「「とりあえずなんでもいいから、俺によこせ」って言われて。六月と感謝と贈り物が唯一理解できた言葉だったかな……」
***
ある日の放課後、職員室で俺が本読んでたら、急に声かけて来たんだ。
『おい、レス!』
『……?』
『返事は!』
『はい! ……何?』
『お前、今月することがあるんじゃないか?』
『……? 学校の屋根の雨漏り対策のこと? やったけど?』
『違う。お前が果たすべき義務みたいなもんだ』
『? アパートの家賃なら、どうにか払ったよ?』
『……違う。他にもあるだろう、義務が』
『?? ウルフの狂犬病ワクチンの注射?』
『……』
『??? え? 今月二十冊本買う予定のこと?』
『違うわ、このボケ!』
『????』
急に殴ってくるもんだから、なんで殴るんだって顔でマサのこと見たんだけど、向こうはどうもそれどころじゃなかったみたいで。
『六月って言えばお前! 感謝して贈り物する行事があるだろうか!』
『? 誰に?』
『うっ、いや、それは……それはだな……』
『俺と関係がある人?』
『そ、そうだ!』
『……先輩? それとも、アパートの大家さん? あっ、古本屋の奥さんかな?』
『……』
『……それ以外だと……豊さじゃなかったおじいちゃんとか? でも敬老の日は九月だし。あとはユウイ先生と風野先生?』
『お前……』
『……?』
『どうして俺様がいないんだ。親不孝もいいとこだろう、この鈍感が。(ボソボソ ←言いたいけど素直に言うのが嫌なのではっきり言えない)
もういい。とりあえず、なんでもいいから俺に買ってよこせ。以上だ』
『……どうでもいいけど、何か欲しいならはっきり言いなよ』
『うるさい! 今週の日曜日にはよこすんだぞ』
『……はーい』(適当に返事した)
***
「……」
「あの時は適当に流したから、何も思わなかったけど 何でもないのに何か買えっておかしいだろ? なんのことかも分からなかったから、タクミに聞いてやっと「父の日」があるって知ったんだよ。さすがに、何も知らなすぎるって怒られた」
それがどうかしたのか?と聞きたそうな目で、レスは四人を見るがもはや四人は言葉すらでない。あの最凶教師は、どこまでいっても愛情表現は不器用だった。いや、愛情表現に限らず、感情を表現することにおいて、怒り以外のすべてが不器用ではあるのだが、殊愛情表現となるとそれが殊更に出てしまうのである。兄達や姉からさんざん聞かされていた話ではあるが、目の前で聞いているとほんとに言葉を失う。プレゼントをよこせと言われて、ピンとこないレスもレスだが、「父の日」があるということを素直に言えないその父親も父親である。
四人があっけにとられている横で、レスは「そうか、金かけなくてもいいのか。なら、その方がいいなぁ」と一人のんびりとあげるもののことを考えていた。
本編に比べるとレッスーがほのぼのボケボケしてますね。いつになったら、こんな風に本編でもしゃべれるようになるのやら……。私の時間とやる気次第ですね、頑張る。まだまだ続きます。