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紅露と黒巳と紫陽花のオリジナル小話不定期連載中
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やっと終わります(笑
おそらく、細々した漢字間違いとか表現の間違いとか色々あったとは思うんだけど、付き合ってくれてありがとーね。

  ガタゴト、ガタゴト。列車は走る。疲れきった体を座席に埋め、一行は無言で列車に揺られていた。
 あの後、面倒ごとはもうたくさんだとばかり、寝る間も惜しみ、荷物をまとめた一行は、朝一番の列車でリュウトシティへと帰ることにした。もちろん、旅館にはお辰の件も報告済みだ。これから先、神隠しが起こることもなくなるだろう。それはそれで一件落着でいい。とりあえず、良いことをしたと言うか、彼らがやるべきことはやったのだ。だが、任務で行くならまだしも、何の身構えもなく、まして体を休めるはずの旅行で起こったことだけに、疲れはピークだった。途中で来たはずの三珠樹も、厄介な仕事だったと不平を漏らし、今は別の車輌で体を休めているはずだ。
ハ「……クスン」(ショボーン)
プ「ハリトー……、元気出して」
ハ「元気なんか出ないぜぃ、プシー……。俺っちの、俺っちのお髪……(泣 剃る必要なかったぜ~ぃ」(涙
リ「分かったから一回泣き止めよ。寝られねぇだろ?
いいじゃねぇか。元に戻してもらったんだろ、髪」
 迷惑そうな顔で泣き崩れるハリトーを見、リーズは出てくるあくびを噛み殺しながら言った。ハリトーの頭は、以前と変わらない、彼のトレードマークのあの髪型になっていたが、ハリトーはふるふると首を振った。
ハ「これ、鬘」
 スポンと、音を立ててハリトーが髪を、正確には鬘を持ち上げる。丸くなった頭が覗き、見ていた全員がフッと吹き出した。
ハ「お前ら、ほんと、皆してひっどいんだぜぃっ!!! 
慰める言葉はねぇのかっ?!!!」俺っち、一番の被害者だろ!!
レ「わ、わりぃ……、ハリトー(ふるふる)……、フッ!」
サ「早く戻して、その鬘!(笑  笑いすぎて、おかしくなりそうだよ!!」(大爆笑)
リ「お前、すげー壺にはまったんだな。珍しい」(笑いつつ)
パ「……(フッ)」(我慢してる)
プ「まぁまぁ、ハリトー。またちゃんと生えてはくるんだから。ちょっとの辛抱だよ」
 プリプリと怒りながら、ハリトーは鬘を装着する。確かに彼の髪は、剃られる必要もなかった。厳密に言えば、彼が老けメイクをされる必要は一っ欠片もなかったのは、全員が周知の通りだった。予防だよ、予防とユウイは言っていたが、ハリトーからすればたまったものではないだろう。正に、一番の被害者であるわけだ。
リ「はぁーっ、笑った笑った。ちょっと疲れ吹き飛んだわ。まぁ、まだ全然疲れてっけど……」
 座席に深く腰かけてそう言うリーズに、その場の全員が同感だった。何はともあれ、後は帰るだけだ。疲れは家でゆっくりとればいい。リフレッシュして、昨晩のことは全部忘れて、明日からはまた忙しい日が始まる。
プ「はぁ、もうこうなったら明日が待ち遠しいよ。子供達に会う方がよっぽど癒しだもの」
レ「あー、それは言えてるなぁ。……旅行は今回で懲りたよ」(苦笑
パ「……、もう貴様らとは旅行に行きたくないな」(ボソッ)
サ「あー、同感。行くなら家族とに限るよね、やっぱり」
 お前が言うか?と言いたげな視線を向けられるサトだったが、いつもの通り気にしてはいない様子だった。
ハ「そういや、レッスーは? 」
プ「あー、えーっと……。ほら、あそこ。気にしなくていいよとは言ったんだけど、今回の件、かなり気にしてるみたい。……「もう旅行には絶対行きません」って凹んじゃってて」(汗
五「(またトラウマ増えたのか……)」(汗
 同じ車輌の遥か後ろの席で、一人座るレスを指しながらプスは答えた。必死に感情を圧し殺しているようだが、明らかに彼の周りはどんよりとしているし、空気も冷たい。プスも慰めるのに四苦八苦したことだろう。
レ「なぁ、レス?  今回のことは偶々なんだし、あんまり気にしすぎるなよ? 結果として、皆、五体満足で終わったことだしな」(苦笑
 他に誰も乗客はいないので、席に座ったままレムがそう話しかける。相手はあまり口を開く気になれないらしく、ただただ申し訳なさそうな顔で小さくなるだけだった。
サ「……重症だね」(あーなると、彼、扱いにくいから苦手だよ)
ハ「レッスー……、俺っちと同じくらい哀れ過ぎて泣けてくるぜぃ」(涙
プ「旅行の話は、少しの間、封印した方がいいかも」
レ「まぁ、俺らにとってもな(苦笑 」(この旅行は黒歴史ってことで)
パ「……」(本当は文句も言いたいけど、黙ってる)
リ「今度、そういう(ホラー)の絶対ないとこに遊びにでも誘ってやるか」(気晴らしに)
サ「お前にしては悪い案ではないけど、彼の場合はお節介じゃないかな? 」(たぶん、普通にそっとしといてあげた方が回復するよ)
 その時だった。電車が徐々にスピードを落とし始めた。この電車は直通だ。途中の駅で止まることなど、あり得ない。だが、明らかに窓を通りすぎていく景色や、体感しているスピードは遅くなっている。ふと、七人の頭にあることが浮かんだ。嫌な予感がする。
レ「……、そういやぁ、この車輌……、最後尾じゃなかったっけか?」(苦笑
プ「……最後尾……ではあったけど……。まさか、ねぇ?」
パ「……ない。絶対にないぞ? いくら先生でも、そこまで鬼ではない」
サ「だよねぇ。あの後、不気味なくらい普段通りだったからって、まさかねぇ」
リ「そ、そうそう! 兄さんも、ユウイ先生も一緒だし!
俺らだけ、途中の駅で降ろされるとか、そんなこと」
ハ「! 今、前の方でガチャンって音しなかったか? だぜぃ」
ス「……、そのまさかっぽいです……」
 さすがにおかしいと思ったのか、窓を開けて外を確認したらしいレスが、そう言いながら六人に合流する。その言葉に少しの沈黙を待って、全員が車輌の前方出口へと向かう。その窓の向こうに、小さくなっていく電車が見える。連結部にいるのは、三珠樹だ。やがて、動力を失った車輌が線路上に止まると、七人は線路へと飛び出した。遥か彼方に、遠ざかっていく電車を恨めしそうに見るが、もちろん、引き返してくることなどない。すると、七人の頭の中に最凶先生の声が響いてきた。
マ「ひとまず、御苦労だったと言っておこう。た・だ。貴様らは上戦として、基礎を忘れているらしい。よって、罰だ。そこから、徒歩で帰れ」
七「はぁーっ?!」
マ「文句は一切受け付けん。怠け気味な貴様らへの、師匠からの愛の鞭だ。あー、あと、車輌もどうにかしろよ? そのままでは、後続の電車に支障をきたす。ちなみに、そこからリュウトシティ及び紅葉村までの距離はほぼ同じだ。途中の駅など、存在しないので期待はするな。いいな、明日までに必ず帰ってこい。以上だ、幸運を祈る」
七「鬼ぃぃぃぃっ!!!!」
 七人が叫ぶ前に、一方的にテレパシーは切られた。あとには呆然と、続く線路に佇む七人が残された。
リ「嘘だぁー(泣  兄さん、ひどい! なんで、あの人の暴挙を止めてくれないんだ!!」(疲れMAXだってんだよ)
サ「いやまぁ、あの人の暴挙止めるなんて、そもそも無理でしょ?」(諦め)
パ「暴挙ではないっ!! ……、俺達が怠け気味で弛んでいたのは確かだ! 修行だ、修行!」
レ「張り切るのはいいけど、パズよぅ。この車輌、たぶん終点まで持ってこいって意味だと思うけど、これ引きながらリュウトシティまで、お前……体力もつ自信ある?」(苦笑
パ「……」(絶句)
プ「ハハハ、僕、辿り着ける自信ないやぁ」(笑うしかない)
ハ「ほんと、なんであの人はいつもこうなんだぜーぃ! 
鬼すぎるっ!!」
ス「……よほどムカついたんでしょうね……」
レ「何に?」
ス「葱さんとお辰さんにです」
リ「……八つ当たりじゃん……」
 全員が、深い溜息をついた。文句を言っても、救いの手が差しのべられるわけもない。七人は、渋々車輌を押すものと引くものに分かれて、線路の上を歩き始めた。リュウトシティはまだまだ遠い。
 ******
ウ「……君ねぇ、これはさすがに遣りすぎじゃないかい?」
マ「何を言うか。俺様達がわざわざ出向いてやったから、解決したんだぞ? それもこれも、あいつらが怠け気味なせいだ。これぐらい、軽くやれなければ困る」
ユ「とか言って、あの二人が無事に逝ったのがほんとはムカつくだけでしょ? ラブラブvvだったもんね☆」
マ「はんっ!! 」
 苛立たしげにマサは車内へのドアに開けると、黙って入っていった。その様子に「あー、図星なんだな」と残された二人は思った。残してきた車輌はもう見えない。あの子達には可愛そうだが、多少マサの八つ当たりに付き合ってもらうしかなかった。彼の機嫌も、帰れば多少治まるだろう。
ユ「向こうに着いたら、僕、七人を迎えに行くよ。さすがに可愛そうだし☆(ロックに乗っていけば、すぐだよ)」
ウ「それがいいだろうねぇ。私は彼の機嫌が治るよう、甘味でも作るとしようか。あの子達の分も、何か用意しておこう」
 二人は窓から、車内を覗きこむ。不機嫌そうに貧乏ゆすりをしながら座っている親友は、未だにイライラを募らせているようだった。
ユ「……、ほんと、マサってさぁ。いつまでも子供だよね☆」
ウ「そうだねぇ。でもここまでの八つ当たりは、ディアンでもやらないなぁ」
ユ「アハハ、十二才より子供かぁ(笑  やばいね☆」
ウ「やばいねぇ」(ハハハ)
 二人のから笑いは、列車の音にかき消されていった。
 列車は何事もなかったかのように、リュウトシティへひた走る。
                   (地獄の)社員旅行編            完
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