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紅露と黒巳と紫陽花のオリジナル小話不定期連載中
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 こっちじゃお久しぶりすぎる紅露さんですよ~(爆

 あんまりにも書かなさすぎるのも一応このブログの正当な持ち主としてどうだと思うので、書きにきましたよん。
 あ、部誌に載せた奴の手直し版だから、読んだことあったらゴメン。




「待ちやがれ」
 まだ幼さの残る噛み付くような声。
 それはどこか泣きそうで、そして深い深い憎悪の念に溢れたものだった。
 呼び止められた男は、緩慢な動作で振り向いた。
 長めの髪は毛先がだけが黒く、後は見事な白髪。色眼鏡をかけた顔は、無精ひげが生えているものの、白髪を生やすにはまだ若い年頃のようだ。季節に合わない真っ白のロングコートの下に着込んでいるのは、同じく真っ白なスーツ。そんな中、唯一真紅のネクタイだけが異様に映えている。
 男は、生来のにやけ顔にさらににやけさせて、自分を呼び止めたまだ少年の域を脱し切れていない青年と対峙した。
「何か用かな?」
「てめぇ、尸(しかばね) 己(つちのと)だな?」
 憎悪という憎悪をありったけかき集めて吐き出しているような声で、そういう青年へ、男はただでさえ細い目を見えなくなるほど細めて楽しそうに愉しそうにそれに答えた。
「いかにも。俺が尸 己だよ」
 そういうと、男はクスクス笑った。無精ひげをなでるその手には、服装と同じく真っ白な手袋が嵌められている。
 一見、清潔感あふれる色合いのそれを、対峙する青年は汚いものでも見るかのような目つきで睨んでいた。
 その常人ならたじろいでしまうであろう目つきを見ても、男は何と言うこともないかのように笑っている。
 彼の名は、尸 己。死神の鎌(デスサイズ)と呼ばれる世界で最も危険なテロ集団に名を連ねる男。死の女神(ゴッデス・オブ・ザ・デス)と称される彼らの指導者、確認されているだけでも千三百十三人を直接手にかけた、稀代の大量殺人者、神代纐纈と共に特ss級の国際指名手配犯として追われている人物だ。
 色眼鏡の奥のその瞳は、優しげですらあるが、薄皮一枚を剥がせば腐敗臭が辺りに広がりそうな、そんな腐った瞳だった。
「で、俺に何か用かい? 少年。あぁ、少年と言っているのは、俺から見ての話だから、気を悪くしないように。こう見えても、もう三十路過ぎなものでね。君は外見的に十代後半ってとこだろう? 俺から見ると、まだまだ卵の殻のついた少年だからね。それに、俺は少年の名前を知らないからして、名前を呼びようもない」
 男はかなり饒舌な様だ。一気にそこまで喋ると、様子を伺うように青年をちらりと見る。
「………俺の名はどうでもいい。明石 亜貴。この名を覚えているか?」
「アカシアキ?」
 搾り出すような声に、男は目を丸くしてしばしの間、わざとらしい考えるポーズをとる。
 それを憎憎しげに青年は見る。
 ややあって、「あぁ、あの」と手を打った男へ向け、青年は懐から黒い物体を取り出した。
 拳銃だ。
 カチリと安全装置の外れる音がすると、青年はそれをまっすぐに男へと向ける。
「おやおや」
 向けられた男の方は、やはり大仰に肩を竦めた。
「それを一体どうするつもりなんだい? 少年? まぁ、俺に向けてそうやって構えている以上、俺を威す、もしくは俺へ発砲する為なのだろうけれど。でもね、前者ならいただけないな。こんな言葉を知っているかい? 銃は、脅しの道具じゃないって言葉なのだけれど」
「脅しなんかじゃ――ねぇよ」
「だろうね」
 男はクスクスと笑う。
「そんな殺気立った目でみられたのは別に初めてじゃないからね。そして、そういう目で俺を見る輩は、大抵その後、俺へと何かしらの害をもたらそうとするんだ。解っているよ。君も、それで俺を撃つつもりなんだろう?」
 男の問いに、青年は答えない。
 ただ、グッと拳銃を構えなおし、男を睨みつける視線を強くするだけだ。
 男は、大仰に溜め息を吐いてみせる。
「なぁ、少年? 少年が俺を殺せるのなら好きなだけ殺せばいいけど、その理由をはっきりと示してくれるかな?」
「…………貴様が姉さんにしたことへの、報復だ」
「少年のお姉さん?」
「明石亜貴」
「あぁ、少年はあのアカシアキの弟くんだったのか。なるほどなるほど。なるほど納得だよ。で、アカシアキに俺がしたことと言うと、どれの事だい?」
「とぼけるな! 姉さんは、貴様を本当に愛してた! なのに貴様は、姉さんを――」
「あぁ、あぁ。なるほど。つまりは全部か。彼女を実験体に使った挙句、捨てた上で最終的にはこの手で殺したことへの報復か。なるほどなるほど。正当、ではあるのだろうね。下らないけど」
 クスクスクスクス
 笑う男の頬を、一発の銃弾がかする。
 硝煙を吐き出しているのは、青年の持つ拳銃だ。
「危ないね。死んだらどうするんだい?」
「次に俺が引き金を引けば、貴様は死ぬ」
「おや、中々格好いい台詞だね。でも、どうせならさっき、殺しておけばよかったのに。まぁ、助かってホッとしてる俺がそういうのも何だけどね」
「…………」
「そうだ、少年。冥土の土産に一つ、俺の言葉遊びを聞いていってくれないかい?」
 何の脈絡もなく、男は言う。
 そして、まるで聖句を朗読するかのような朗々とした発音で、己が「言葉遊び」と称する台詞を、まるで舞台の道化役のような調子で語り始めた。
「心が毎回することと書いて悔いると読む。人が為す事と書いて偽りと読む。人の夢と書いて儚いと読む。人の憂いと書いて優しさと読む」
「……それがどうしたんだ」
「分からないかい? ふむ。やはり俺の思考は凡人には理解できないか。かの死の女神(ゴッデス・オブ・ザ・デス)は、俺のこの言葉遊びを聞いて、それはそれは感嘆してくれたものだけど」
「そんなもの、感嘆に値するもんか」
「だろうね」
 低く唸るような声を絞り出す少年に対し、男はあっけからんとそう言うと、少年の視線をきれいに無視してさらに続ける。
「彼女はここでは全く関係ない。今俺が言いたいのは、人の優しさと言う物は、結局のところ、その人自身が感じている「憂い」みたいなものから出てくるものなんだって事なのさ。人が自分から離れることを「憂い」、人に優しくしてつなぎとめようとする。人が自分を嫌うのを「憂い」、人に優しくする。そういうものだと、少なくともこの俺は解釈している。俺は誰にも「憂い」なんて感じていないからね。誰に対しても優しくしようとは思わないだけさ」
 無論、君のお姉さんにも、ね。そういうと、男はニィッと口の端を吊り上げた。
「―――っ言いたいことは、それだけか?」
「そうそう。君にもう一つ、言葉遊びをプレゼントしよう」
 顔を赤くする青年の事など、気にも留めていないかのように、男は来クルリと青年に背を向ける。
「「人」の「賞」、つまり、「人」に「与えられた素晴らしいもの」と書いて償いと読む。償いは、人に与えられた神からの最高の褒美なのだよ。だから人はそれに報いるべく、死を持って「世界」に償うべきだ。我らがやっていることは、我ら人間が自ら傷つけてきた「世界」への、償いの行為なのだよ」
 そこでクルリと、まるでダンスのステップのように、男はもう一度だけ、青年に向き直った。
「それを彼女の前で言った時、俺は彼女に見初められた。……すばらしいだろう?」
 にぃぃぃ
 まるでチェシャネコの様に口を吊り上げると、男は手袋の嵌めた手でパンッと一度手を叩いた。
 と、同時に青年の体が崩れ落ちる。
「え……―――っあっ!」
「俺の二つ名、知らないわけじゃないだろう? 『生物兵器(バイオハザード)』、尸 己。運が悪かったね。あともう二時間と二十三分四十秒、俺を見つけるのが早ければ、ひょっとしたら死なずに済んだ上で、俺を殺せたかもしれないのに」

 この町は、この俺が足を踏み入れた時点で、もう死んでいるのだよ。
 この町に居る人間と一緒に、ね。

「お前はもう、死んでいる――なぁんて、どこぞの漫画のパクリみたいだけど……まぁ、もう少年には聞えない、か」

 男は――尸 己は、倒れた青年へ向けてやはり大仰なお辞儀をする。
 それはそれは優雅で優美な礼を。
 それを青年が見ることは、無かった。


 ***

「只今帰りましたよ、我が女神」
「お帰り。ご苦労様、ツチノト」
「いえいえ。我が女神の為ならば、町の一つや二つ、いくらでも潰してみせましょう」
「うふふ。ありがとう、ツチノト。あれ? ほっぺたのソレ、どうしたの?」
「あぁ、これですか。お恥ずかしい。実は、ちょっとした『報復』とやらにあいまして」
「ほーふく? 何に対する?」
「――――さぁ、忘れてしまいました」
                                       




***
 何時だったか、部誌に載せたのの続きみたいなの。一応、手直しはしたけど、大学の方の部誌に出した奴。あれ? 読んでもらったこと、あったっけ??←
 とりあえず、某兎を吊った木さんの事は頭から追い出してね(笑


 

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