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紅露と黒巳と紫陽花のオリジナル小話不定期連載中
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 あけましておめでとうございます。何故か年賀状出した人の半数くらいから返事がきません黒巳です。最近は年賀メールの人が多いらしいですしね。別にいいんですけど…。来なかったからって、年賀状のお年玉の当たる確率が下がるくらいで。新年早々愚痴っぽいです。

 本当はすぐに続き出すつもりだったのですが、年末年始のぐーたら生活と、前々回に言っていた、最近考えついた話のキャラクターとかパワーストーンの本見ながら考えるのが楽しかったのとで、気付けば時間が。しかし件の話、設定と貴石の乙女考えるのが楽しすぎて、一通り決めたらそれで満足して、話自体は書かない気がひしひしとしてきました。

 最近創作に費やすエネルギーが足りていない。何か目新しいことを試みるとか対策を考えないと行けないのでしょうか。しかし一番足りないのは妄想力だと、部内の面々を見ていて思います。私はあの人達の足下にも及ばない…!

 長々と書き散らしましたが、続きから鬼子流離譚です。

鬼子流離譚  ~序・迷い鬼の邂逅

「鬼だ!」
 びくり、と二人の子供は身を竦ませた。その言葉は夢の奥にまで響いて、それを理由に殺された親を想起させた。
 がばり、と起きあがる。自分が見つかったのだと思った。声は随分遠くから聞こえてきていたのだが、そんなことには気付かなかった。植え付けられた恐怖が頭の中を白く染め上げていた。
 助けはない。助けなど来ない。周りの人間は「怖いもの」だ。
 さっきより近づいた雷鳴が聞こえる。嫌でもあの日を思い出す。
 思い出は常に断片だけだ。
 煌めく白刃。揺めく火炎。鬼退治。誇りと闘争心に輝く瞳。恐れと敵愾心に戦慄く顔。
 「鬼の子」達は逃げ惑う。
 隅に隠れようと「鬼」の子は腰を浮かせた。
 様子を窺おうと鬼の仔は起き上がった。
 雷鳴が響き渡り、数瞬遅れて稲光が小屋の中を照らした。
 鬼の仔は目の前に、麦わら色のくせ毛と水色の瞳をした少年を見た。
「鬼」の子は目の前に、蓬髪の間から小さな角を覗かせた少年を見た。
 恐怖の色を宿した少年達の目は驚きに見開かれた。
 二人とも何も言えずに見つめ合った。互いに互いの異相に驚いていたのだ。そして彼らはお互いに、それは人間ではないと判断した。少なくとも、自分の知っている人間とは違うものであると。
 
 安堵にも似た、吐息を漏らしたのはどちらであったか。今の彼らに人間以上に怖いものなどなかったのだから、異相の見知らぬ少年は、むしろ自らに近い存在であった。
 雨宿りの場で行き会った見知らぬ者同士は、特に交わす言葉を持たなかったので、それぞれ端に寄って座り込んだ。それだけでも空気は独りの時より、幾分柔らかいものになっていた。
 先程までに比べれば、それはあまりにも当たり前の空気。二人共火打ち石の一つも持たなかったから、寒さは変わらなかったが、火をおこす手段が有れば、囲炉裏を囲っていても違和感のない暖かな雰囲気だった。
 一際大きな雷が鳴り、少年達は体を震わせた。音と光の間隔は大分狭まっていた。
 その、足音は、雨音に紛れていた上に、少年達は二人共雷に怯えていた為に気付かなかった。
 再度の稲妻が、戸口から伸びる影を浮かび上がらせた。
 ひっ、と少年達は怯えた声を漏らした。それはほとんど声になってはいなかったが。
「……今晩和」
 人影が言った。美しい女の声だった。
 照らし出された姿は、千早と呼ばれる貫頭衣に赤い切り袴の巫女装束。
 闇に慣れた目は、光がなくともぼんやりと人影を捕らえることが出来た。
 少年達は恐怖に動けなくなっていた。
 人間だ。人間に見つかった。逃げ出すべきだと思うのに、恐怖に支配された体は小刻みに震えるだけだ。黒と水色の二対の瞳は、突然やってきた女性に集中した。
 その明らかな恐怖と、拒絶と混乱に染め上がった視線を女は受け止めて、ゆっくりと見つめ返した。
 女の目には粗末な小屋とその中の幼い二人の「鬼の子」が映っている。年の頃はどちらも七歳位に見えた。
 戸口に立ったまま、小屋の奥、右端に目を向ければ、見たことのない色の髪を一つに束ね、恐ろしげに目を向けてくる少年。着物はあちこちに鉤裂きが出来ており、そこから覗く腕や足も、枝葉で引っかけたとおぼしき無数の細かな傷。痣のようなものも見受けられる。痩せ細って、頭が大きく不均衡に見える。雷光に一瞬照らし出された大きな目は、不思議な色をしていた。
 視線を左に向けると、赤黒い髪の少年。髪の間、両耳上方に覗いた物は、丸みを帯びた、小さな角のようだ。ぎらぎらと闇に光る目には恐怖以外に恨みが込められているようだった。こちらも痩せてはいるが、しかし右の少年ほど病的でも不健康そうでもない。
 二人の少年は身じろぎもせずにこちらを見つめてくる。
 と、村人の呼びかけが背中に響いた。
「巫女様!そちらに鬼がおりましたか?」
 少年達は目に見えて体を硬くした。恐怖の色が濃くなる。雨と雷も相まって、あの日の光景がありありと思い浮かべられた。そして自分のこれからの姿がそこに被せられる。
 声も出せずに、少年達は死を覚悟した。

「いいえ、居ませんでした」
 
 その声は、やけにはっきりと、ゆっくりと、少年達の耳に届いた。頭にまで届くには、更にそれ以上の時間を要した。
 巫女はゆるりと振り向き、言葉を継ぐ。
「今夜はもう暗いし、天候も悪いです。鬼退治は明日に改めましょう」
 巫女装束に包まれた背中とそこに落ちかかる黒髪をぼんやりと少年達は見つめた。その向こうにちらちらと揺れる提灯の灯りが見える。
「はあ、そうですね。申し訳ありません。わざわざお引き留めしたのに…」
 男の声が、すまなさそうに応じた。
「構いません。それより、今夜は私はここで休みたいと思いますが、どなたかが使っておりますかね?」
「いえ、そんなことはございません。もう丸一年ほど捨て置かれていますから。しかしこんな所にお泊めするわけには参りません。長の所に戻ってください」
「いえ、夕飯は先程ご馳走になりましたし、今夜は一人で居りたいのです」
 首を左右に振って女は答えた。男は弱りきったように眉を寄せた。
「お願いします」
 ついでにだめ押しされて、男は折れた。
「分かりました。では、また明日」
「ありがとうございます」
 巫女の突然の言葉に戸惑いながらも、何か自分には推し量れない事情があるのだろう、と頭の中で結論づけた男は村長の家に報告に向かった。そこそこに豊かな村であるから、村長の家であれば、それこそ客人の二人や三人余裕で泊められるのだが。
 -そこそこ豊かであるから、鬼退治を人に依頼し、その為の謝礼も用意できるのだ。
 元々明日行く筈だった鬼退治は、さっき、急遽早まった。大概被害に遭うのは家畜だったが、村娘の一人が家畜と同じように食い荒らされた状態の死体で発見されたのだ。これは鬼の仕業だ退治すべきだという話に何時の間にか為った。そこに、呪術や祈祷を生業としているという旅の巫女が通りかかったので皆が勢いづいた。話を聞いた巫女は、とにかく引き受けてみましょうと言ったのだ。
 意気込んだ村人達はまだ近くに居るだろうと捜索を開始したが結局見つからず、巫女は一人で村はずれの放置された小屋に泊まる、と一緒に行っていた男が知らせに来たので、鬼退治は当初の予定通り翌日に持ち越されることとなった。


どこで切るべきか、悩みましたがここで。因みに千早はちはやと読みます。念のため。
 

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