紅露と黒巳と紫陽花のオリジナル小話不定期連載中
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紫陽花です。とうとう12月入っちゃったね。一年って早いね。もう嫌になるよ、いろいろと。
昨日、バイトの面接に行きました。某ショッピングモールの本屋さんに。結果は水曜日か、木曜日に通知が届くらしいです。合格だと書類がぶっといらしいです。 受験地獄が終わったというのに、さらにあのドキドキなんか味わいたくねぇ!! 少なくとも、あと一年は味わいたくねぇよ!
話はだいぶ変わりまして、本編のね、続きを今日ね、載せるはずだったんだが、やっぱ一週間じゃ無理でした(すいませんした) 次回からは二週間とかにします。自分の力量とかスケジュールとか考えずにやるもんじゃないよね、こういうことは。ほんとに。 で、じゃ今回はどうしたんだと言いますと、今回は小話曝露です。好きなだけ笑うがいいさ、バカな妄想をしている俺を! ってな感じの話。ちなみに登場人物は三珠樹。 はいはい、またかよ~っ感じですね。 それでもいいっていうなら読んでね。
昨日、バイトの面接に行きました。某ショッピングモールの本屋さんに。結果は水曜日か、木曜日に通知が届くらしいです。合格だと書類がぶっといらしいです。 受験地獄が終わったというのに、さらにあのドキドキなんか味わいたくねぇ!! 少なくとも、あと一年は味わいたくねぇよ!
話はだいぶ変わりまして、本編のね、続きを今日ね、載せるはずだったんだが、やっぱ一週間じゃ無理でした(すいませんした) 次回からは二週間とかにします。自分の力量とかスケジュールとか考えずにやるもんじゃないよね、こういうことは。ほんとに。 で、じゃ今回はどうしたんだと言いますと、今回は小話曝露です。好きなだけ笑うがいいさ、バカな妄想をしている俺を! ってな感じの話。ちなみに登場人物は三珠樹。 はいはい、またかよ~っ感じですね。 それでもいいっていうなら読んでね。
それはいつもと少し違う午後だった。
ある冬の日の午後
冬が終わり、少しずつ暖かくなり始めた頃のこと。冬休みも終わり、新学期真っ只中。今日も忙しい戦教でそれは起こっていた。
「兄さん、この書類書き直しときました」
「あぁそう。じゃマサに回して」
リーズの声に、いつもの笑顔も見せずぶっきらぼうに答えたウェンはそう言って隣の部屋を指さした。その指差された隣の部屋には、彼の親友であるはずの人物がいるはずだが……。顔をチラリとも上げない義兄を見ながら、リーズはなんとなく嫌な予感がするのを感じた。
一方、その隣の部屋では溜まった書類が整理されている所だった。しかし、当の部屋の主はただ椅子に座っているだけで、書類には見向きもせずどこか遠くの方向を向いたまま。その様子に修行という名目で整理にかり出されていた弟子二人と養子一人は、ただただ呆れながらも、慣れた様子で書類の山を片づけていく。が、書類は一行に減っていかない。むしろ、壁中の棚を陶器で埋め尽くされたこの部屋のどこに、これだけの枚数の書類が置いてあったのか不思議に思うほどの量である。まだまだ終わりそうにない書類の山を見上げて、六人衆中二番目に長身のレムは、はぁとひとつため息をついた。
「先生、さすがに俺たちだけじゃぁ、どうにもなりませんよ、この量」
「レム、マサ先生はきっと今瞑想中なのだ。声をかけるんじゃない」
「なんでそうお前は……。まぁいいか……」
同僚の台詞に後ろ頭を掻きながら苦笑したレムは、もくもくと整理を続けるパズに渡された書類をパラパラとめくる。その傍らチラリと恩師の方に目を向けてみるが、やはり恩師は明後日の方向を向いたままでこちらには見向きもしない。
仕方がないかと再び苦笑をもらし、レムはパズとは反対方向の部屋の隅で作業をしているレスの方へと歩み始めた。彼の恩師はよくこういうことがあるのだ。特に機嫌が悪い時には大体こんな感じに、その日一日ふてくされて何もしようとしなくなるのである。唯一することといえば、八つ当たりをすることぐらいだろうか。
「ほらよ、レス」
ファイルを持ち上げ、歩みだそうとするレスにもう一冊追加とばかり、レムは持っていたファイルを突き出した。それを見て、うんざりそうな顔をした後輩は「上に乗っけてください」と、いつもどおりそっけなく返してくる。
「お前、さすがにそれは止めとけよ。 俺と同じくらいの高さにまでファイル積み上げて運べるのか?」
横着にも自分の身長より高く積み上げられたファイルを持っていたレスにそう言ってやる。レムより頭ひとつ以上は低いレスからしてみれば、前も見えない状態だ。
「やばくないです。これでも毎日毎日、先輩方に雑用としてこき使われてる身ですからね。こんなの慣れてます。ですからどいてください」
「先生が機嫌悪いと、お前も機嫌悪くなるんだな……」
いつもなら自分にそんな風に愚痴をこぼしたりしない後輩の冷たい態度に、再びレムは苦笑する。怒りだとか、そういう気分が伝染することを十分に熟知している彼にとって、苦笑することはその輪に巻き込まれないための一番効果的な表情だった。
「レス、これ頼む」
レスがしかめっ面をしてファイルを持ち上げたちょうどその時だった。ドアが開いて隣の部屋からリーズが現れると、ふらふらとしながら運ぼうとしているレスの荷物の上に、手にしていた大きめのファイルをさらに積み上げた。
「はー……、い!」
急に重くなったせいか、中途半端に返事をするレス。どうやら今ので耐え切れる重さの限界が来たらしく、さらにふらふらと抱えていた書類とともに部屋中をおぼつかない足取りで歩いていく。
「お前何やってんだよ! それで書類全部こぼしたらパーだぞ?!」
「んなこと言われても……。その前に助けてください!」
「だから言ったのに……。! おい、レス! 足元、足元!」
「え?」
振り向いたその瞬間、レスは足元に一枚落ちていた書類で足を滑らせ、両手に抱えていた書類とファイルを盛大に空中の放り出して、大転倒する。そのままレスは床に後頭部を殴打しうめき声を上げた。そして空中に放り出された書類はというと……。 「ギャー!!拾え、拾え! 急げ、ひまわり!!」「ひまわりじゃねぇっつってんだろ!」と騒ぐ先輩二人を差し置き、書類は空中できれいにそろえられると、転倒して頭を抱えていたレスの横に、きっちりと下ろされた。 それを見て、レムとリーズは安堵の表情を浮かべる。
「危なかった……。サンキューな、パズ」
「俺はなにもしていないぞ?」
不意に話をふられた、今までの間ずっと無視を決め込んでいたパズはそう言って、整理したファイルを棚に納めた。 そして「これだから雑用は」と言いたげな顔で、ギロリとレスをにらみつける。
「じゃぁ、マサ先生? ……!」
パズの様子に、背後にいる師へと視線を移した二人は、明らかに怒りの表情を浮かべている師を見つけて固まった。後から、後ろにいたパズとレスも、それを見つけて黙り込む。だが、彼らにその表情が向けられていたからではない。師、マサの顔は、リーズによって開け放たれたドアの向こうで作業をする白髪の人物に向けられていた。向こうは向こうで同じく、普段は滅多に見せることのない怒りの表情で、マサの方を睨み付けていた。なんともいえない緊張感が少しの間、部屋を支配し、四人は普段ないこの異常な空間に、動くこともできずにその場で息を潜めるしかなかった。そんな四人のことなど、さもいないような沈黙が続いた後、ドアは向こう側からバン!と大きな音を立てて閉められた。
「……お前達、もういいから自分の持ち場に戻れ」
「? まだ終わってないよ?」
「誰のせいだと思ってる」
「……ごめんなさい……」
ドアが閉められた後、やっと自分たちの方へと椅子を向けたマサは、淡々と四人に言い放った。
怒りの表情のまま、言葉をかけられたレスは一度ビクッと肩を震わせた後、小さくなりながら謝罪する。それを見ていた先輩三人は、これは今すぐ部屋を出て行くべきだな、と悟った。問いかけたのがレスであったからこそ、たったの一言で済んだが、もし自分たちがあんなことを言っていたらと思うと、三人は背筋が凍るような思いだった。
とりあえず、彼らは何も言わずにその部屋を出ることにした。暖かくされたこの部屋を出て、寒い風の吹く外に出るのは嫌には違いないが、自分の身の方が大切である。 四人はマサからみてちょうど正面に設置されたドアへ向かって歩き出した。
三珠樹の部屋には多数のドアが設置されている。お互いの移動がスムーズになるよう、三つの壁越しに繋がっている部屋をすべてつなげてあるのだ。マサの部屋は、中心ということもあってか、合計で四つものドアが設置されている。一つが、今三人が外へ出ようとしている、所謂玄関。そして非常口になる裏口と、左右の部屋へ通じる扉。例えるなら、部屋を仕切る襖のような役割である。
「レス、忘れ物だ」
ドアを開け、出て行こうとする四人の背後から、いかにも不機嫌な声がかけられた。そして超能力でもって投げつけられた文庫は、ちょうど振り向いたところだったレスの顔にクリーンヒットし、慌てて本を拾い上げたレスの前でバタンとドアは閉められた。
「なんか朝から当たられてるなぁ、レス。養子ってのは大変だな」
「……まったくです」
「ま、そのおかげで俺らは助かるわけだけどな」
「……怒りますよ、リーズ先輩」
投げつけられた文庫から埃を払いながら、レスはリーズを睨み付ける。誰だって怒られるのは嫌である。そう言いたげに、レスはムスッとしていた顔をさらにしかめて文庫をポーチへと収納する。「本当のことだろ?」とのんきな顔を浮かべたリーズは、隣で腕組みしたまま何も言わないパズに賛同を求めるかのように視線を向けた。
「……俺にふるな、ひまわり頭」
「カッチーン! んだよ、てめぇがしゃべれてねぇからわざわざふってやったのに!!」
「まぁ、騒ぐなよひまわり」
「そうですよ、ひまわり先輩」
「うっせー!! 裁縫バカ!! 後、どさくさに紛れて先輩になんてこと言ってんだぁ、レス!!」
「いいじゃないですか。一日に一回くらい」
「よかねぇだろ!?」
「朝から派手に突っ込みよって。いじられて嬉しいのは分かるが、少し黙れ、リーズ」
「リーズじゃねぇ! ひまわりだ! ってえ? あれ? しまった、逆だ!」
「やーい、やーい。ヒマワリー」
「とうとう認めましたね、ヒマワリ先輩」
「違うわ!! あんまりにも突っ込みすぎて間違えたんだよ! あと、誰が弄られて嬉しいか! 嬉しいわけあるか!! ……どう収拾つけんだ、これ!」
一人で混乱に陥っているリーズはさて置き、マサの弟子三人は、どうしたものかと珍しく三人そろってため息をついた。(「置き去りか!?」byリーズ)
超音マサと風野ウェン、そして今は帰省中でいない鳥海ユウイの三人は、おそらくこの竜の国一強い者達であり、一番の仲良しだということは誰もが知るところである。それは、日常生活からして明らかで、傍目から見れば非常に仲の良い兄弟に見える。そんな彼らだが、今現在戦教に残っている二人は、とてもそんなことを人前で言える状態ではなさそうだ。普段から多少の口喧嘩はある二人だったが、ここまでひどいことは類をみない。 何が原因かはさておいたとしても、これは戦教の存続にも関わる重大な事態だ。なんとか収めなければならない。
「どうすりゃ収まると思うよ、リーズ? お前、昔から馴染みなんだろ?」
「馴染みって言っても俺だってあんま知らないんだからな! あの人達のことは!」
「相変わらず使えない奴だ」
「何ぃ?!」
「……やっぱりユウイ先生がいないとダメなんですかね……」
思案に暮れていた三人の先輩にレスがぼそりと呟く。そう言われれば、今はユウイがいない。そういう時というのは、いつにも増してあの二人の口喧嘩が多かったような気がしないでもない。三人はそれぞれ顔を見合わせると、やっぱ三人じゃないと駄目なのかもなと、黙り込む。自分達が口を出しても、容易く跳ね除けられてしまうに決まっている。 そういう間柄なのだ、あの三人は。
四人はただ、ユウイは予定よりも早く帰ってくるようにと願うばかりだった。
書類の山の中に埋もれるように横になっていたマサは、不意に立ち上がると椅子の所にまで歩いていって、そこに腰を降ろした。と今度は意味もなく立ち上がり、床の上にゴロリと寝転がる。しかしどこか落ち着かない。その後も落ち着きなく、立ったり座ったり寝てみたりをしばらくの間続けていた。いつも部屋に一人でいる時、彼はそんなことはしない。寝ているか、音楽を聴いているか、土をいじくっているか……。そして稀に仕事をしている。どれにせよ、部屋の中を落ち着きなくうろうろすることは滅多にない。しかも、一定の距離を長時間ぐるぐると歩き回り続けることは初めてのことだった。
椅子に座って、マサは少し考え込む。弟子達(一人余計だが)を追い出したはいいが、書類を片付ける気にはとてもならない。だからといって、何か別のことをする気にもならないのは、今朝あいつに言われたことを自分が引きずっているからだろうか。
ふと傍の窓から外を眺めてみた。窓の外には椿が植えてあった。ある人の名前と同じ花をつける木には、まだ花は咲いてない。良くて早咲きの蕾が、小さく開きかけてあるくらいだ。
「椿か……」
いつの日か……、言われた気がする。 『マサが落ち着いてない時は、いつも何かを後悔してる時よね』と。冷たい風にさらされて、紅潮した顔に小さく笑みを浮かべて。
『後悔しているんなら、逆に落ち着かなきゃ。自分のしたことを、ゆっくり考え直すの。花の蕾みたいにね』
『そりゃそうかも知れんが……。なんでまた花の蕾なんだよ? ゆっくりしろってんなら、亀とかに例えるのが普通だろ?』
『だって亀じゃぁ、結果が分かりにくいじゃない。亀が歩いていった先に何があるかなんて、不特定でしょ? 蕾の方は結果なんて言うまでもない。開きかけた蕾は、花になる。時間をかけて、ゆっくりと。ね?』
それに亀じゃぁ、のろまなイメージの方が強いしね。彼女はそう言って、再び小さく笑った。
「ハァ~」
そう言われたって落ち着いていられるか。今のこのむしゃくしゃした状態で、どうやって物事を考えろというんだ。しかも、自分がしたことを? バカバカしい。あれはあいつが悪いのだ。人の物を壊して、謝りもしないあいつが。 自分は何もしていない。後悔なんてしているものか。
マサはもう一度椿へと目をやる。開きかけた蕾に変化はない。まだまだ時間が経たなければ、咲きそうになかった。
「……ハァ。考え直せばいいんだろ? 考え直せば」
ぶっきらぼうに独り言を呟くと、窓から視線をはずし、マサは椅子にもたれかかる。そのままただ天井を見つめて、低く唸った。書類の積まれた部屋で、一人落ち着かない自分。原因も分からないままに、ただ時間だけが過ぎていく……。
「ただいま~」
昼を少し過ぎた頃、不意にドアが開いて、聞き慣れた高い声が室内に響いた。ユウイがたくさんの大きな荷物と共に帰ってきたのである。しかし、ユウイはドアを開け放したまま、何も言うことなくマサの方を見た。いや、正確には目の前の光景に、何も言えなかったというのが正しい。
「……何やってんの?」
「い、いや……」
回転椅子に座り、クルクル回っていた三十路近いいとこに、ユウイは目を丸くして尋ねる。口を濁したマサは、「早かったな」と話を反らした。
「帰りは今週末じゃなかったのか?」
「うん。けど、なんかいやな予感して帰って来ちゃった♪」
嫌な予感がしたと言うのになぜか楽しそうなユウイに、マサは「そうか」と呆れ半分、安心半分で呟いた。落ち着きなく貧乏ゆすりをする足を机で隠し、「おみやげv」と言って渡された物を受け取る。携帯だった。
「俺はもう持ってるぞ。 あんなややこしいものは二つもいらん」
「だ・か・ら買ってきてあげたんだよ。おじいちゃんおばあちゃんが使う超簡易携帯! うれしい?」
机で隠れていた貧乏ゆすりする足が、怒りでピタリと止まった。
まだ落ち着かない……。
1時間ほどが経ち、今度こそちゃんと椅子に座り、書類に目を通していたマサは、まだ貧乏揺すりしている自分の足を押さえた。少しの間止まったと思っても、また揺れが始まる。先ほどよりいくらかむしゃくしゃする気分は治ったが、まだ何時も通りの落ち着きは戻ってきていない。あれから少しの間、落ち着かないのは何故か、さらに思案してみた。糖分でも足りないのかと思って、買いだめしてあったチョコレートを(板チョコで)二枚ほど食べたが、効果は見られない。ならば運動不足かとも思ったが、こんな寒い中、外に出る気は自分にはない。もちろん考え直してもみたのだ。しかし、どう考えても自分も悪いという結果になるのだ。そんなはずはない。そう思いたかった。
マサの部屋を出て行ったユウイは今隣の部屋だ。どうやら帰省中の様子を風野に報告しているらしい。壁越しに小さく聞こえる声の感じからして、さぞ盛り上がっているのだろう。
つまらなくなって持っていたペンをポイッと机の上に投げ出してしまう。あの輪の中に入りたい。一人で仕事なんぞ、まっぴらごめんだ。だが、ウェンとは喧嘩中だし、無論、自分から謝るなんてプライドの高い自分がするわけがない。いや、むしろ謝れないと言った方が正しいかもしれない。何かあれば、すぐ怒鳴るようになったせいか、子供の時のように素直に謝れないのである。謝り方をすっかり忘れたと言った方がいい。喧嘩なんてしなければよかった……、あんな些細なことで。
マサは悔し紛れに普段からくしゃくしゃの髪を、さらにくしゃくしゃとかき回した。もちろん、髪がくしゃくしゃになるだけで何の効果もない。
「マサぁ、午後ティーしよっ」
突然隣に続くドアが大きな音を立てて開き、ユウイが喜びいさんで飛び込んできた。急に飛び込んできたユウイに、ポカンとするマサの腕をグイグイと引っ張り、「お茶会、お茶会♪」と楽しげに呟く。
「ちょっ、ユウイ待て。俺はだな」
「大丈夫! コーヒー飲んだらマサの落ち着きも戻ってくるから!」
「なんで知ってんだ!?」
「ついでにウェンとも仲直りできるから!」
「な、お前分かっててっ? !」
三珠樹一小さいが、三珠樹一力の強いユウイに腕を引かれては、マサでは到底かなわない。あれよあれよと言う間に腕を引かれ、マサは隣の部屋へと足を踏み入れた。自分のとは違い、綺麗に整頓された部屋を見渡す。書斎机の上も、そして小さなお茶会用のテーブルも掃除が施されていてピカピカだ。もちろん、書類の山なんてあるわけがない。
見慣れたその部屋を見渡したマサは、あるものに気づく。書斎机に見慣れないものが乗っていた。ひびの入った、お椀もどきのようなものが大量の破片と一緒に置かれている。今朝、割られたマサ作のお椀だ。
「お、……」
「マサはいつもみたくドアに一番近いとこ。僕はその隣!」
ユウイの声に、マサの驚きの声はかき消された。 茶会用のテーブルの前にすでに座っていたユウイは、ドアに一番近い椅子を引きながらそう言った。そして「ウェンはマサの正面ね~!」と、向こうの給湯室にいるウェンに向かってやはり楽しげに言うのだった。
久しぶりに三人そろうのがうれしいのか、ユウイの声はとてもワクワクしていた。とりあえず椅子には座ったマサだが、浮かない顔をしてユウイを見つめる。やはりユウイにはばれていたようだ。自分とウェンが喧嘩したことも、自分に落ち着きがないことも。全部お見通しということだろう。だからと言って、こんな無茶なことをするか。 いや、無茶なことをするからこそユウイなのだ。
マサは呆れたようなため息をつくと、向こうで作業しているウェンを見た。ウェンは何時も通りお湯を沸かして、カップを用意してと変わらない様子だ。が、ちらりと見えた表情はやはり苦々しい。大方、つい口を滑らせて喧嘩したことを話してしまい、ユウイの剣幕に負けたって所だろう。
やがて用意ができたのか、ウェンがお盆を片手にこちらにやってきた。お盆の上に乗っているのは、三つのカップ。ユウイには紅茶、マサにはコーヒー、ウェンには……。
「お前もコーヒーか……」
「悪いかい?」
ふと口からでた言葉に反応して、ウェンから低い声が返ってきた。 日頃笑っていることが多い奴だからか、眉を顰めて言われると本気で怒っているということがひしひしと伝わってくる。
「……いいや。ただ珍しいと思ってな」
怒っている相手を刺激しないよう、できるだけ当たり障りのない返答をしたマサは、手前に置かれたカップを見つめた。
「……しまった」
カップや砂糖入れなどを盆から降ろしていたウェンの手がふと止まる。
「どうしたの?」
「いや、お菓子用意するの忘れてた。何にも作ってない」
確か、下の棚にビスケットの缶があったはずだし、取って来るとウェンが言うと、お菓子大好きなユウイはパッと目を光らせて取りに走っていった。あっと言う間もなく飛んで行ったユウイに、ウェンは苦い顔を浮かべる。マサもどうするか……と言いたげな顔で後ろ頭を掻いた。静まり返るテーブルの周り……。二人の間には重苦しい空気が流れていた。一触即発というよりは、お互いにどうしたものかという息苦しい空気だ。こんな空気さえ流れていなければ、ここで二言三言くらいは話すだろう。だが喧嘩の最中では、それがいくら日常と同じ茶会だからと言っても、どうしても言葉が見つからない。
お互いに、椅子に座ったままただ目の前のカップを見つめる二人。このまま沈黙が続くかと思われたが、次の瞬間、何かを決心したかのように二人は同時に口を開いた。
「「今朝はごめん」」
ユウイには聞こえないような小声で、まるで息を合わせたかのように二人同時に発せられたその言葉に、マサとウェンは目をまん丸にして黙り込む。ややあってからフッとまた二人同時に吹き出し、終には二人して大声を出して笑った。
「どしたの、二人揃って笑って? もしかして仲直りしたの?」
ビスケットの缶を片手に戻ってきたユウイは、自分がいなかった間に何があったのか分からなくてそう尋ねる。二人して大声をだして笑うなんて、仲直りするときよっぽど面白いことがあったに違いない。
「まぁね」
「まぁな」
ユウイの意図とは裏腹に、二人はありきたりな返事を返してきた。顔に笑みを浮かべたまま、なんでもないよと言いたげな二人の様子に、一瞬ユウイはつまらなさそうな顔をしたが、やがて「良かったね」というようににっこりと笑った。
「マサ、砂糖はいくつ入れるかい?」
「……10個」
「入れすぎだよ~、マサ。さっきもチョコ食べてたくせに~」
「だからなんでお前は知ってるんだ? 俺のこと見てたのか?」
「ううん。でもマサのことなら分かるよ」
そしていつも通りのお茶会が始まる。角砂糖とミルクの淹れられたコーヒーを一口、口に含んだマサは、いつの間にか貧乏ゆすりが止まっていることに気づいた。
「……。謝るってのもたまにはいいもんだ」
急にそんなことを言うマサに、ウェンとユウイは少し驚いた風だったが、
「それはお前さんが普段謝る立場にいないからこそ言えるんだよ」
「そうだよ~。マサは謝ることが少ないだけだよ~」
と、不平を言って苦笑いした。
「なんとでも好きに言え。どうせ今回だけだからな」
マサは何時も通り愛想なくそう言い返す。そしてもう一口、コーヒーを口に含んだ。
窓の外の椿の蕾は真っ赤な花になっていた。カラッとした冬の空に笑い声の響く中、その花は風に小さく揺れた。 完
はぁ、恥ずかしい。書き終えてから何回見直しても、恥ずかしい。なんだ、これ。三人のいっつもこんな感じかなってのを書いてみたんだが。三人の思考織り交ぜようと思ってたのに、見事にマサ一色だね。なんでだろうね? 私とマサが似てるから? あぁ、そうですか。 やっぱ似ていると書きやすいのかなぁ、心理描写。 この話、書き終えてからテーマみたいなもの、というか、マサの落ち着かない原因を考えていろいろと加筆したんだけど、理由分かった? そこんとこ何かあったら教えてね。今後の参考にするんで。そしてまたもや長くなりました。あとがきもだいぶ長いんで、今回はこれで。次回は12月14日(日)ぐらいには載せます。読んでくれてありがとね~。
はぁ、恥ずかしい。書き終えてから何回見直しても、恥ずかしい。なんだ、これ。三人のいっつもこんな感じかなってのを書いてみたんだが。三人の思考織り交ぜようと思ってたのに、見事にマサ一色だね。なんでだろうね? 私とマサが似てるから? あぁ、そうですか。 やっぱ似ていると書きやすいのかなぁ、心理描写。 この話、書き終えてからテーマみたいなもの、というか、マサの落ち着かない原因を考えていろいろと加筆したんだけど、理由分かった? そこんとこ何かあったら教えてね。今後の参考にするんで。そしてまたもや長くなりました。あとがきもだいぶ長いんで、今回はこれで。次回は12月14日(日)ぐらいには載せます。読んでくれてありがとね~。
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