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ええと、前回予告してた鬼子流離譚(きしりゅうりたん)の序盤を載っけに参りました。タイトルはもじってます。だから別にどうと言うこともなく。
先に言い訳だけ。この話は全部ハッピーエンドにするつもりで書いてるんだ!第一部の終幕以外は。
鬼子流離譚 ~序・迷い鬼の邂逅
その日鬼の仔は父親と人間の世界に来ていた。人間の世界と彼らの住む世界はちょっとした所で繋がっている。けれどまだ幼い鬼の仔は自分ではその‘境’が分からないから、父から離れないように言われていた。なのにその日鬼の仔がふざけて隠れてみたのは、何度も来た場所で慣れていたからだ。自分を探す父を見ながら、いつ出ていこうかと考えていた鬼の仔の目に、人間の男達が映った。立派な格好をした彼らは鬼退治だと息巻いていた。鬼の仔の目の前で彼らと父は相討ちになった。鬼の仔は父の遺体にすがって哭いた。鬼の仔が哭くと黒雲が湧き、雷が鳴り雨が降り出した。鬼の仔は雨に紛らせ涙を流した。泣き疲れて眠って、目を覚ますと父親の躯は苔に覆われ、小さな芽がぽつぽつと生えていた。父はこのまま土に還るのだと、腐臭を放つ人間達の横で座り込んだ鬼の仔は思った。一人では帰ることの出来ない鬼の仔は、そこを立ち去ることにした。
その日鬼の仔は独りになった。
その日少年は山に食料を探しに行っていた。少年とその母親は異相だった。母とその両親は外国から流れて来たのだと言っていた。外国からの客人を村人は歓迎し、客人の娘は村の男と結ばれ自分そっくりの子をもうけた。やがて両親も死に、夫にも先立たれ、母と子は二人きりで村はずれに暮らしていた。ある時疫病が流行った。村人の看病に走り回った母親もいつしか病に冒され、だんだんと床から起きている時間が減っていった。その頃から、誰が言い出したか彼らは「鬼」と呼ばれ、疫病の流行る原因だと囁かれるようになった。少年がある日外に出ると石が飛んできた。慌てて家に帰って見ると、石の当たったところには血が滲んでいた。それからは夜にこっそりと出かけるようになった。そしてその日少年が山の木々の間から見た家は火と煙に覆われていた。村の人たちがそれを取り囲んでいた。少年は浄化の炎に背を向けて逃げた。母の安否は確かめるまでもなかった。降り出した雨が体を濡らし、遠く雷の音が聞こえた。
その日「鬼」の子は独りになった。
彼方に遠雷が聞こえる。
人里に思いがけず出てしまった鬼の仔は、人の居なさそうな寂れた小屋に雨宿りに入った。囲炉裏以外何もない小屋だった。
遠方の空に稲妻が走る。
何日もかけて山を越えて人里近くまで出てきた「鬼」の子は、手近の打ち遣られた小屋に、半分壊れた戸から入った。
鬼の仔は小屋に入ってから真っ直ぐ奥に進み、左脇の角に丸くなって横になった。そこは特に暗くて濃い影が出来ていた。
「鬼」の子は壊れ書けた戸の脇に膝を抱えて座り込んだ。小屋の中は暗くて少し怖かったからだ。
「鬼の子」達は静かに闇に紛れて眠った。