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紅露と黒巳と紫陽花のオリジナル小話不定期連載中
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  はい、先日やっやこしい編集した紫陽花です。すいませんでした。今回は、第五幕です。前半少し修正したのと、後半少しプラスしました。 そして、次の第六幕でやっと試験が終わります。スローペースですいません。はい、連日謝ってばかりです。第六幕は明日あたり、ここにupする気です。では、長いですが、第五幕どうぞ。

  
第五幕 鳥は外見で決めつけてはいけない
 
 真っ白な中に浮かぶ大きな黒い目。時折消えてはまた現れるを繰り返しているその目が、凶暴な猛禽類のもので、それが目の前まで迫ってきていたら、一体どんな反応をするだろう。
「ギャー?! 食べられるっ!!
「デビ! 急いで下がれ!」
 慌てて後ずさりするデビ。ザラとディアンはサッと身構えた。鳥の黒い目が動いているデビを追いかけて、キョロキョロと動いている。どうやら、ちょこまか動くデビを、餌か何かと勘違いしているらしいが、デビがそれを知るはずもない。鳥(鶏冠のようなものがあるところからして、おそらくは闘鶏なのだろう)は、首を伸ばすように体を前のめりにしてデビに迫った。
「ギャー! なんで僕なの!?
「これが闘鶏か? それっぽく見えないけど」
「全部真っ白だからな。この際、そんなことに構ってられるか」
 逃げるデビ。それを追う胸元がとてつもなくふわふわと、そして大きくふくらんだ鳥。ディアンとザラは体当たりを仕掛けるため、鳥に向かって猛然とダッシュしていった。二人そろって、鳥が前へ一歩踏み出した所へ体ごと突っ込んでみる。だが、ふわふわとした体毛のせいか、鳥はあまりダメージを受けなかったようだ。また一歩、踏み出した鳥によって思い切り弾き飛ばされた二人は、白い地面の上にたたき付けられてうめき声を上げた。
「ちっ。失敗か」
「ちっきしょう! なんであいつ、あんなふわふわなんだよ! 触ったら気持ちいいのに、なんかムカつく!」 
 叫ぶなってんだよ、とザラに突っ込まれたあとディアンは追いかけられて逃げ惑うデビを助けるため、猛然と駆け出す。鳥の足の下を潜り抜け、デビに追いついたディアンは、デビを先に行かせると、片方の靴の踵を踏んだ。
「見てろよ~。体が駄目なら、目だ! 七年間サッカーばっかりやってた俺の強力なシュートを見せてやる!」
 そう意気込むと、頭を下げてきた鳥の目めがけ、ディアンは脱いだ靴を蹴り飛ばした。スピンをつけて、靴は見事にまっすぐ飛んでいくと、鳥の目玉にクリーンヒットする。うめき声をあげた鳥は、頭を上げて大きく翼をはためかせた。
「へっへ~ん、どんなもんだい! 驚いたか!」
 ハハハハハと高笑いを上げるディアンは、次の瞬間、丸かった鳥の目がギラリと光って鋭くなったのを見た。そして、先ほどとは見違えるほどのスピードで、ディアンに向かって突進してきたのだ。
「ギャー!」
「あの馬鹿、怒らせてどうすんだ」
 後ろからそれを追っていたザラは、急にスピードを上げた鳥をみてそう言う。だが、もう遅い。鳥は地響きを上げながら、ディアンに迫っていた。そして……。
「うわーぁ!」
「デビ!」
 鶏はディアンをまたいで大きく前進すると、その前を走っていたデビを銜え上げた。どうやら随分とデビがお気に入りらしく、ディアンのことは最初から眼中になかった様子だ。上機嫌な鶏に対し、銜え上げられたデビは顔を青くして「食べないで! 食べないで! 僕なんかおいしくないよ!」と叫び声をあげた。
「鶏って肉食べるの?」
「食べないだろ?」
「悠長にそんなこと議論してないで助けてよ!」
 追いついてきたザラとディアンの会話を遮り、デビは大声で助けを求める。体のすべてが真っ白で、最早どこからが頭でどこからが胸でということが全く分からない鳥を見上げ、ザラは「とりあえず、前言撤回だ」と言って構えた。
「これだけこっちに何かしら仕掛けてくるんだ。こいつは何かのヒントを持ってる!」
「っぽいなぁ~。 その前にさ、こいつのことから揚げにしたらどれぐらいの量になるかな?」
 「知るか!」という言葉とともに、ザラは鶏に向かってザッと駆け出していくと、ふわふわとした毛に覆われていない、足に向かって思い切りとび蹴りを食らわせた。とび蹴りっ?と目を丸くするディアンだが、ザラはあまり手ごたえがなかったのか険しい表情で鶏を見上げている。案の定、鶏は何事もなかったかのように清ましている。
 なら反対側に……とザラが攻撃対象を逆の足に向けようとしたとき、その足に思い切りディアンが突っ込んでくるとガン!としたたかに顔面を打ちつけた。
「お前何やってんだよ?」
「痛てー。失敗した……。 何ってとび蹴りやろうとしたんだよ! 失敗したけどな! お前、そんなのどこで習った?!
「習ったっていうか、兄貴が……」
「いいな~、いいな~! 俺の兄ちゃんなんかサッカーしか教えてくれたことねぇぞ!」
 そんなことやってる場合じゃないだろ? と顔をしかめたザラは、次の瞬間、体が浮く感覚を覚えて思わず鶏の足にしがみついた。どうしたんだ?という顔をしたディアンも思わず足にしがみつく。鶏が一歩前に進むたび、それが繰り返されるので、二人はほぼ同時に鶏が動き出したことと、その足の上に自分たちが乗っていることに気づいた。上がったり下がったりを繰り返しながら、二人はどうしようと顔を見合わせた。
 一方、鶏に銜えられてしまったデビは、どうしようと顔を青くしたまま、下の様子を伺っていた。しかし、下の二人の姿は見えない。まさか自分ひとり置いていかれてしまったのだろうか?
「そ、そんなことないよね? だって三人そろってなきゃ意味ないはずだし……」
 デビはそう呟いてみるが、言ってから校長のマサがそんなことを言っていたような気がしないことに気がついて、涙目になる。本当に置いていかれたなんてことになったらどうしよう……。兄に合わせる顔がない……。
 デビは腕に抱えたままの広辞苑をさらに強く抱え込んだ。ん~と悩む兄の姿が思い浮かぶ。自分を見下ろして、「どうにかならないかな」と考え込むその様子が。しかし、受かったところで自分に戦士になるだけの力がないことは、誰から見ても明らかな気がした。
 もしかしたら、今受からないほうがいいのかもしれない……。受かりたくない……。
 そう思う自分がいた。
 
 足に死ぬ気でしがみついていた二人は、どうすることもできず足にしがみついたまま鶏が歩くままに、迷路の中を進んでいくさまをみていた。自分達が歩いていた道は、西の方面の本当に始め、中央に近い部分だったのに、だんだんと奥に向かっている。地図がなくても、二人にはなんとなくそれが分かった。
「この鶏どこまで行くんだろうな」
 左足と一緒に上がりながらディアンが言う。
「さぁな。でも行くとしたら一番奥だろう」
 代わるようにして右足と共に上がりながらザラが言う。
「奥って……。 時間大丈夫なのか?」
 再び上がりながらディアン。
「大丈夫じゃないだろうな。だいぶタイムロスだ」
 代わるようにしてザラ。
「駄目じゃん!」
「言ったってどうもできねぇだろ?」
 もう数十回、同じように会話していた二人は、また互いにため息をついた。別に、この速さじゃ降りられないというわけではないのだ。鶏は比較的ゆっくりと歩いている。だがら、降りようと思えばいつだって飛び降りられたのだ。だが、それではデビがどこにいくか分からない。鶏に銜えられたままの彼が、これからどうなるかも分からない。それではダメだとディアンが主張したのだ。別にザラ本人はそれよりも試験に合格することの方が大事だと思ったのだが、チームを組ませたことからして、チームメンバーそろってゴールするのが試験のルールだと気づいたので反論せず今に至る。降りて鶏の後を歩いてつけていっても良かったが、それよりも乗っている方が楽だった。
「この鶏を止める方法さえ分かればなぁ! そしたらデビのことも助けられるのに!」
「そんなに大事な奴なのか?」
「当たり前だ! 友達だぞ!」
「……。にしても、あいつ本当に戦士になる気あんのか?」
「? なんで?」
「なんでって、あんな運動神経ないのに、これから先どうすんだよ?」
 一番必要なことだろとザラはディアンに問いかけると、「俺にはあいつになる気があるようには見えねぇ」と続けた。
「無理にお前についてきてるってわけじゃねぇだろうけど、あるのは知識だけって感じだし、どうも否定的な意見が多い気もするが?」
「それはデビが決めることだろ? 別に俺らがどうこう言ったところでかわんねぇって」
「まぁ、そうだが」
「あいつが決めることなんだから、あいつがここにいる間はなるってことでいいんだよ」
「……」 
 ザラはどうにも腑に落ちないらしく、顔をしかめるがディアンは気にしてない様子で鶏を止める手がないか、懸命に上を見上げてぶつぶつ言っていた。やがて、何かを思いついたらしく、鶏のふわふわとした羽毛に手を伸ばした。
「おい! 何する気だ?」
「上に行く」
「?」
「上にのって、とりあえずデビを先に助ける」
「はぁ? まさか、上って頭のことじゃ……」
「行くぞ~!」
 ザラの静止も気かず、ディアンは鶏の羽毛をグッとつかんだ。そしてそこに力を入れて、自分の体を持ち上げると上に上り始めた。
「たく。おい、待てよ」
 追うようにザラも羽毛をつかんで上り始めると、あっという間にディアンに追いついて横に並んだ。
「!」
 それに気づいたディアンは負けるかと言わんばかりに上るスピードを速めた。ザラもそれに気づいて速める。二人はほぼ同時に、鶏の背中に手を伸ばすと、ほぼ同時にその背に立った。そして睨み合う。負けたくないという小さな対抗心が、二人の中で大きく燃え上がっていたのだ。
「……」
「……。 !」
 睨み合っていた二人は、急に揺れが止まったので同時にガクリとその場に膝をついた。顔を上げると、デビが何やってるの?という呆れた顔をして鶏の嘴からぶら下がっていた。その奥には、真っ白な中に浮かぶ真っ黒な目玉……。
「げっ! 見つかった!」
 ギョロンという擬音が似合うだろう、鶏の目が動いてディアンとザラを交互に見る。上から見下ろされているので、そこで何してると言われたような感覚が、二人を襲っていた。と、ゲシッと言う音と共に、ザラが鶏の背を蹴りつけ始めた。「何やってんだよ!」とディアンが小声で声をかけるが、ザラは意に介さない。無心に鶏の背を蹴り続けるのである。
 少しの間、何をしているのか分からずボケッと立ち尽くしていたディアンだったが、やがて合点がいったらしく、自身は鶏の羽毛を力いっぱい引っ張り始めた。
「ちょ、ちょっと二人とも何やってるのさ?」
 銜えられたままその様子を上から見ていたデビは、その後ろで鶏の目玉が丸くなるのを見ることができなかった。ましてや次の瞬間、大きな叫び声を上げて鶏が暴れ始めるなど、彼には想像もつかなかったことだろう。
 ザラの蹴りがわき腹へ決まり、ディアンが一本の羽毛を思い切り引き抜いた時、鶏はやっと体全体に痛みが走ったことに気がついた。そして大きな奇声と共にデビを離すと、痛みから逃れようと思い切り暴れ始めたのである。予想以上の暴れっぷりに、鶏の背で、デビの落下を助けた直後の三人は、床の上へ振り落とされる有様だった。
「痛てぇ」
「うーん……、! でも助かった! うわー、二人共ありがとう!」
「当たり前だろ、デビ! 困った時はお互い様だぜ!」
 元気よく親指を立てたディアンに、デビも同じように返す。これが二人の間ではお決まりなのだ。今も、ほんの目の前で巨鳥が一匹暴れていなければ、微笑ましい場面であるはずだったのだが、生憎、その暴れている巨鳥の足が、三人の頭上へと迫っていた。それにいち早くザラが気づくが、もう遅い。三人が逃げる前に、大きな足が下りてきた。
「じっけ~ん!」
 高らかな笑い声とともに、無数のメスがどこからともなく飛んでくると、鶏の体に深く突き刺さったのはその時だった。鶏がさらに悲鳴を上げて三人がいる場所とは違う場所に足をつくと、運よく助かった三人は何が起こったのか分からず、目を丸くしていた。
「キャハハ~。また鳥さん、みっけ。今度はすごく大きいね」
 誰かが今鶏が歩いてきた方向から顔を出す。
「この声は……。岩山じゃねぇか?」
「あ、そう言われて見れば……」
「岩山?」
 ディアンの言葉にデビがそうかも……という顔をし、ザラが誰だそれ?と眉をひそめた時、再度向こうから現れた人物が声を上げた。
「キャハハハ! 実験させて~! 大きな鳥さ~ん! あなたの中はどうなってるの~?」
 そこには科学者が羽織る白衣を着、両手にメスを持ったピンク髪の少女・岩山サクラが立っていた。試験開始前の大人しい感じとは打って変わり、その目は目の前の獲物をしっかり捉えていた。にっこりと天使のように微笑む。鶏はそこから何かを感じたのか、一歩後ずさった。
「やっぱり、サクラちゃんだ」
「あいつ、動物見ると性格変わるからな」
「……なんか似たような奴が俺のクラスにもいた気がする」
 鶏が恐れをなして、すっかり大人しくなったので三人は立ち上がると、巻き込まれるのはごめんだとばかりに壁側による。ザラには少々よく分からなかったが、彼女がメスを抜いた時には、極力近づかないほうがいいと、他の二人が言うのである。
 一歩も動かず、睨み合うサクラと鶏。先に動いたのは鶏の方だった。クルリと後ろを向くと、一目散に逃げ出したのだ。
「あぁ。待ってぇ、鶏さん! あたしのお父さんの実験材料になってよぉ~!」
「おおよそ、十二歳の少女が吐くせりふじゃないな……」
 ザラが困ったようにそう言うと、だろ?と言う顔でディアンがその肩に手を置いた。
「ところでサクラちゃん、一人?」
「……鳥さん……」
「サァークーラァー!」
「サクラちゃ~ん!」 
 鶏に逃げられてがっかりしているのか、デビの質問に応じようとしないサクラに、デビがどうすればいいか迷っていると、彼女が現れた方向から、二人の人影が走ってきた。声からして、一人は男、もう一人は女であるようだ。
「もう、サクラ! あんまり早く走っていかないでくれよ」
「そうよ、サクラちゃん。どれだけ探したことか……って、キャーvv ザラ様vv」
 走ってきた黒髪おかっぱの少年と、金髪の少女は二人して息を荒くし、座り込んでいるサクラにそう言う。どうやら、サクラだけがあの鶏の気配をかぎつけて、先走っていたらしい。黒髪おかっぱの少年は、とりあえず誰かと一緒で良かったとため息じみた息を吐き出して安心したようだったが、金髪の少女を見たザラの表情は苦々しい……。
「お前ら誰だ?」
「む? 何よ、あんた? もしかしてザラ様のチームメイト?」
「ザラ様って……。こっちが聞いてんだよ!」
「まぁ、失礼。でもいいわ、教えてあげる。私は火鼠あやめ。 ザラ様の未来の花嫁よ!」
 そう言って胸をはる、金髪の少女、火鼠あやめの横でザラがさらに苦々しい顔をする。顔には思いっきり「お断りだ」と出ていた。
「……どうでもいいが、まさかお前等も同じ迷路にいたとはな」
「そうだね。僕もてっきり皆別々なのかと思ってたんだけど……」
「アハハハハ……。会う確立の方が少ないんじゃないかなぁ。これだけ広い迷路だし」
 後ろ頭を掻きながら困ったように黒髪のおかっぱ少年は言うと、「あっ、僕は種川ピード。よろしく」と、キョトンとした顔をしているディアンに言った。
「僕は砂地デビ。 よろしくね」
「俺は守元ディアン! にしてもお前、高いなぁ」
「え? 何が?」
「身長だよ。 いいなぁ、俺にくれよ」
「し、身長はあげられないよ、さすがに」
 困った顔をしてそう答えるピードをディアンは見上げる。その背には二十センチ近い差があるようで、ディアンの頭は彼のちょうど胸あたりである。
 種川ピードは身長は高いが、決して体つきが大きいということはなく、どちらかというとひょろ長いという言葉がぴったりな少年だった。綺麗に切り揃えられた黒髪と、きっちりした服装をしているが本人はいたっておっとりした性格であるらしい。さらに言うと、身長くれ!と叫ぶディアンを見て後ずさりしているところから、喧嘩っぱやい性格でもなさそうだ。そのことを読み取り、「仲良くなれそうだな」と、一人心の中でデビは思っていた。
「サクラちゃん、ほら立って。次行かないと、時間ないでしょ?」
「……鳥さん……」
「鳥なんか放っといていいの! ここから出るのが先!」
 座り込んでいたサクラを一喝し、立ち上がらせるとあやめははぁあ、やだやだというように首を振った。ポニーテールにされた長い髪がそれに呼応して大きく揺れている。大きな青い瞳をしたその顔は、とてもとは言わないまでもかわいらしい。典型的なTシャツに七部丈ズボンという格好で、比較的大人しい(動物が絡まなければ)サクラに比べ、フリルのついたチュニックに丈の短い半ズボンに色柄タイツと、あやめは実に女の子らしい服装をしている。だが、性格は気の強い方らしく、やっとディアンから開放されたピードの方を、大きな目を吊り上げて睨み付けると、文句を言い始めた。
「筆記試験だって言うから昨日は頑張って徹夜したのに、お姉ちゃんの予想はいっつも外れるんだから。大体、鳥使う試験ってほんとにありえない! そんなのがあるのは、ヒヨコの性別識別職くらいだと思ってたのに!」
「まぁまぁ、落ち着いてよ、あやめ。 鳥って言っても、殆ど襲ってこないし(サクラのおかげで)」
「だって、あんたも見たでしょ? 真っ赤な鳥の群れ! あんなの寄ってこられたら、私気絶しちゃうわよ!」
「ちっさくてかわいかったじゃないか(サクラのせいで逃げたけど)」
「もう、ほんとありえない!」
 うじうじと文句を言うあやめを、ピードが宥めたり反論したりする横で、つまらなさそうにあくびをするサクラ。どうやら、この班はディアン達三人以上にチームワークがなさそうである。それにプラスして、どうやらまだ試験合格への手がかりも何もつかめていなさそうにも見えるし、正直付き合っていると面倒なことになりそうだ。
「……こいつらに付き合ってる暇はないな……」
 ザラがぼそりと呟いたのを聞きつけて、珍しくディアンもコクンと頷いた。
「さっきの鳥がヒントをもってたかもしれないんだし、さっさと追っかけようぜ。時間がもったいない」
「えぇー! ザラ様、もう行っちゃうんですか!」
「……」
「ここで会えたのも何かの縁だしぃ、一緒に行きませんかぁ?」
「……断る」
「あぁ、なんて冷たい……! でも、そんな所がす・て・きv」
 ディアン達が立ち去ろうと相談を始めた時、どうやらそれに気付いたらしく、ピードと口論をしていたあやめがパッとザラの前に躍り出ると、目をウルウルさせながらザラを見る。明らかにぶりっ子になったあやめに、周りから、そして彼女が見ている当人からも冷たい視線が送られるが、彼女はそんなことを気にせず、一人でキャーと黄色い声を上げていた。
「お前、頭大丈夫か?」
 それを見ていたディアンから、厳しい一言が放たれるが、それは「あんたに言われたくないわよ、タンポポ頭!」と言うあやめの一言で見事に打ち返された。
「誰が、タンポポ頭だ! 俺の頭のどこがタンポポなんだよ!」
「タンポポみたいに大きな花の咲いた頭をしてるのねって言いたいのよ!」
「何をぉ! それってどういう意味だ!」
「おバカさんって意味よ! お・ば・か・さ・ん!」
 また喧嘩してる……と、デビが心の中で呆れる中、ザラはそんな二人を無視して「俺達はこっちに行く」と地図を手にピードと話していた。
「班同士、会っちゃいけねぇというルールはないはずだから、これぐらいの接触なら大丈夫なはずだ。互いに精々、次は会わないよう祈ろうじゃねぇか」
「そうだね。それで反則だったら、僕達二班とも不合格だしね」
 苦笑いしてピードはそう言うと、デビの仲介でどうにか収まり始めていた喧嘩の片方を呼び寄せた。
「ほら、あやめ。そろそろ行かなきゃ、ほんとに時間がないよ」
「分かったわよぉ! ザラ様! 私、必ず試験に合格して、そのタンポポ頭の代わりに、ザラ様の班員になりますから!」
「タンポポ言うんじゃねぇ!」
 大声を上げるディアンを、あやめは鼻で笑うと、行きましょとサクラの手をひいて歩き出した。サクラは今の今までボーとしていたらしく、あやめに手をとられた時、一度ビクリと肩を震わせた。
「じゃぁ、そっちも気をつけてね。 特に鸚鵡に」
「お前も、あんな口うるさい女に負けんなよな! 鸚鵡みたいにうるさい女にな!」
 それはお前だろ、というザラの突っ込みが入り、またもやディアンの頭に血が昇るが、それは次のピードの言葉で一瞬にして引っ込む。
「うるさいのもそうだけど……。彼ら、得体の知れない力があるみたいだからさ」
「「「?」」」
 キョトンとした顔の三人を残して、ピードは「おーい! 待ってよー! あやめー! さくらー!」と声を上げながら、女子二人が歩いていった方向へと姿を消した。

 
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