紅露と黒巳と紫陽花のオリジナル小話不定期連載中
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なんか一人連続で書いてるなあ。学校が始まって眠いです。二週間に一回くらいのペースで載っけていこうかなと考え中。これ一応十話程度で終わったらいいなと思ってるんですが、だめかもしんない。
前回言っていた名前の由来。まずは主人公(のつもり)サフレイの名字から。
エムブラ Embla
エンブラ、とも。オーディンとその兄弟ヴィリ、ヴェーが海辺で見つけた流木から作られた人類最初の女。彼女と共に人類最初の男がアスク(トネリコ)から作られている。エムブラは柔らかい材質で、にれ、あるいは何かの蔓植物と考えられている。堅い男、アスクに、柔らかい女、エムブラはからみつく。ということらしい。
ゲルマン神話と呼ぶべきか、北欧神話と呼んだ方が正確か。自分の中ではゲルマン神話って呼んでるんですけど、こだわりのある人もいるようなので、難しいです。
第三話は、ラキくん視点です。これからも視点入れ替わることあるので、ご注意ください。
オレに声をかけてくれたあいつは、オレを商品として見なかった。ちゃんとした人間として、声を掛けてくれたと思った。
だから、どうせ逃げ出すまでの少しの間だけど、この人なら主でもいいと思った。
なのに、そいつは魔術師だったんだ。オレに、オレ達に、呪をかけた奴らと同類の。
オレを買ったのは、単なる気まぐれだろう。飽きたらオレは、研究材料にでもされるのかもしれない。いや、初めからそのつもりだったんだろうか。声をかけられたときに、優しそうな人、などといいう印象を持った、ちょっと過去の自分が今は心底憎い。
あいつの隣に住んでいるらしい、やたらとふざけたやつ―こいつも魔術知らしい―が、服を持ってきた。オレの格好を見て、寒いだろうなどとぬかしやがったのだ。
ふざけるな。それでオレを憐れんで、自分がいいやつだとでもうぬぼれてるのか。オレがいったい誰のせいでこんな目にあっていると思ってる。
オレを買ったあいつは、今はこの部屋にいない。だから、この場にいるのは、オレとあのふざけた魔術師だけだ。そいつの髪は毛先にいくほど青味の増す不思議な白髪で、それがそろえられた様子もなくだらだらと腰の辺りまで伸びているので、服装は適当な部屋着のくせに、外見がやたらと派手だ。そう言えば今まで見た魔術師は、みんな髪を伸ばしていたけど、何か理由があるんだろうか。
「さて、ラキ君。サフが戻ってくるまでにきれいになって、彼をびっくりさせてやろうじゃないか」
そう言って、緩い笑みを浮かべながら、持ってきた服を手渡された。人を人形か何かだと思っているんだ、こいつらは。
見た目のきれいな奴隷を手元に置きたがるやつらもいるから、きれいな外見のものは、それ専用に売られている。もちろん、きちんとした格好でだ。
オレはそうではなかったから、服もいい加減で、髪だってもつれてぼさぼさのままだ。おまけに土とほこりで汚れてるときた。このままでは魔術師様の奴隷にふさわしくないってとこだろう。
ばかばかしい気分で、オレが黙って着替えていたら、白髪が湿らせたタオルを持ってきて、オレの腕や顔をふき始めた。
はっきり言ってくすぐったいが、言ったところでやめるわけもないだろう。こっちだって口なんか一言もききたくない。
だと言うのに、白髪はオレの身体をふきながら話しかけてきた。
「ラキ君。君は僕たちが魔術師だというのは知っているかい?」
知ってるさ、と心の中でだけ答えてやる。
「では、サフがまだ見習いだというのは知っているかい?」
それは知らなかった。だけどそれがどうしたっていうんだ。呪を人にかけたことはまだないから、許せとでも?どうせその内かけることに違いはないし、そのためにここにいるんだろ。
「むぅ。返事がないのはさみしいなぁ。………彼の家が魔術師の名門だということは?」
何が言いたいんだこいつは。寂しいなどとほざきながら、答えもないのに話を続ける。いいかげんにあきらめろ。返事をする気なんか、オレにはこれっぽちもないんだから。
「彼が幼い頃からここに来たことは?ほとんど外に出たことがないのは知ってるかい?彼が魔術師になることは決められたことで、彼はそれに疑問を感じることすら許されなかった。僕のように進んでここに来たわけでもないのに、成績は常にトップを義務づけられ、外での買い物も君が初めてなのだよ」
白髪はそこで、いったん言葉を切った。
そのとき、そいつと目があった。切なそうで、何かを訴えているようで、それでいて底の見えない目。
「君はまだ、自分しか見ていないのだね。……さぁ、出来たよ」
オレはすっかり身体をふかれていた。その間、こいつはずっとしゃべっていた。
こんなやつの言うことなんか知ったことか。あいつが今までどんな環境にいたかなんて、オレには何の関係もない。
こいつはオレにあいつは憎むなと言いたいようだが、オレだって魔術師を、奴隷制度に荷担するやつを、許すわけにはいかないんだ。
ただ、白髪の、最後に言った言葉のその意味が、オレは何故か気になっていた。
だから、どうせ逃げ出すまでの少しの間だけど、この人なら主でもいいと思った。
なのに、そいつは魔術師だったんだ。オレに、オレ達に、呪をかけた奴らと同類の。
オレを買ったのは、単なる気まぐれだろう。飽きたらオレは、研究材料にでもされるのかもしれない。いや、初めからそのつもりだったんだろうか。声をかけられたときに、優しそうな人、などといいう印象を持った、ちょっと過去の自分が今は心底憎い。
あいつの隣に住んでいるらしい、やたらとふざけたやつ―こいつも魔術知らしい―が、服を持ってきた。オレの格好を見て、寒いだろうなどとぬかしやがったのだ。
ふざけるな。それでオレを憐れんで、自分がいいやつだとでもうぬぼれてるのか。オレがいったい誰のせいでこんな目にあっていると思ってる。
オレを買ったあいつは、今はこの部屋にいない。だから、この場にいるのは、オレとあのふざけた魔術師だけだ。そいつの髪は毛先にいくほど青味の増す不思議な白髪で、それがそろえられた様子もなくだらだらと腰の辺りまで伸びているので、服装は適当な部屋着のくせに、外見がやたらと派手だ。そう言えば今まで見た魔術師は、みんな髪を伸ばしていたけど、何か理由があるんだろうか。
「さて、ラキ君。サフが戻ってくるまでにきれいになって、彼をびっくりさせてやろうじゃないか」
そう言って、緩い笑みを浮かべながら、持ってきた服を手渡された。人を人形か何かだと思っているんだ、こいつらは。
見た目のきれいな奴隷を手元に置きたがるやつらもいるから、きれいな外見のものは、それ専用に売られている。もちろん、きちんとした格好でだ。
オレはそうではなかったから、服もいい加減で、髪だってもつれてぼさぼさのままだ。おまけに土とほこりで汚れてるときた。このままでは魔術師様の奴隷にふさわしくないってとこだろう。
ばかばかしい気分で、オレが黙って着替えていたら、白髪が湿らせたタオルを持ってきて、オレの腕や顔をふき始めた。
はっきり言ってくすぐったいが、言ったところでやめるわけもないだろう。こっちだって口なんか一言もききたくない。
だと言うのに、白髪はオレの身体をふきながら話しかけてきた。
「ラキ君。君は僕たちが魔術師だというのは知っているかい?」
知ってるさ、と心の中でだけ答えてやる。
「では、サフがまだ見習いだというのは知っているかい?」
それは知らなかった。だけどそれがどうしたっていうんだ。呪を人にかけたことはまだないから、許せとでも?どうせその内かけることに違いはないし、そのためにここにいるんだろ。
「むぅ。返事がないのはさみしいなぁ。………彼の家が魔術師の名門だということは?」
何が言いたいんだこいつは。寂しいなどとほざきながら、答えもないのに話を続ける。いいかげんにあきらめろ。返事をする気なんか、オレにはこれっぽちもないんだから。
「彼が幼い頃からここに来たことは?ほとんど外に出たことがないのは知ってるかい?彼が魔術師になることは決められたことで、彼はそれに疑問を感じることすら許されなかった。僕のように進んでここに来たわけでもないのに、成績は常にトップを義務づけられ、外での買い物も君が初めてなのだよ」
白髪はそこで、いったん言葉を切った。
そのとき、そいつと目があった。切なそうで、何かを訴えているようで、それでいて底の見えない目。
「君はまだ、自分しか見ていないのだね。……さぁ、出来たよ」
オレはすっかり身体をふかれていた。その間、こいつはずっとしゃべっていた。
こんなやつの言うことなんか知ったことか。あいつが今までどんな環境にいたかなんて、オレには何の関係もない。
こいつはオレにあいつは憎むなと言いたいようだが、オレだって魔術師を、奴隷制度に荷担するやつを、許すわけにはいかないんだ。
ただ、白髪の、最後に言った言葉のその意味が、オレは何故か気になっていた。
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