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紅露と黒巳と紫陽花のオリジナル小話不定期連載中
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 以前言っていた番外編を一つ。そう言えば書いたけどここには出していなかったので。
 本当は明後日締切のレポートが一つあって、まだ一頁も書けていないというひどい有様なのですが…息抜きって必要ですよね。本当に短い物です。
 あと今、第一部書き終わってあらためて、人物設定とか書き出してみています。私の中でもぼやっとしたところが多いので、書き終わってからでないと書けないという、意味の分からない設定集。どうも明文化するのが得意じゃないようで、どこまで書くのがいいのか、どこまで決めておくのがいいのか、考え考え書いてます。書き終わったらここに晒してみようかどうしようか。 

 番外というか、予告編。


 旅装を整えた女が、框に腰掛けて、草履を履いていた。脇には市女笠が置いてある。
 女に後ろから声を掛ける者がいた。
「もう行くの」
 緩くまとめて背に流した髪が、戸の隙間から入る光で金に輝く。その髪を揺らせて、女は振り向いた。
「うん。冬になる前に、出来るだけ回っておきたいの」
 秀でた額に、すっきりと鼻筋の通った、特に化粧はしていないが、充分に美しい娘だった。
 それがこの地では異形と呼ばれるものであっても。
「ねぇ、もし君の探し人が見つかったら、その時は考えてくれるかな」
 男の問いかけに、娘は誠実に応えようと努める。
「今は無理だけど、ちゃんと考える。いつまで掛かるか分からないし、それまでにあなたの気が変わるかもしれないけど」
「そんなの。いつまでだって待つよ。急かすつもりもないし」
「…応えられるかどうか分からないよ。それに、難しいと思う。私はこんなだし、あなたはここの跡継ぎなんだから。…さんざんお世話になっておいて、こんな返事しかできなくてごめん」
 申し訳なさそうに下げられた眉を見て、男は人の良さ気な笑みを浮かべた。
「そんな風に考えなくて良いよ。それなら友情からの好意だと思っておいて。実際それだって嘘じゃないし。心配しなくても君一人の世話くらいでうちは傾いたりしないから」
「ありがとう」
 微笑んで、娘は立ち上がった。笠を被ると、むしの垂布にその異形は隠れてしまう。
「いってらっしゃい」
「いってきます」
 裏口から出て行く娘の女の後ろ姿を見送りながら、男はぽつりと呟いた。
「それでも、もし君が頷いてくれるなら、周りの反対なんかどうとでもするのに」
 もしかしたら、探し人が見つかれば、彼女は帰ってこないかもしれない。
 そう思いながらも、男はいつもいってらっしゃい、と送り出し、おかえりなさい、と迎えるのだ。
 戸口からは光が斜めに差し込んでいて、男は思わず目を細めた。

つづく

 
 架楠のその後。一案。他にもパターン考えていたりしますが、最初に思いついたのがこれ。舶来品なんかも扱う大手の店に拾われる。でもって、若旦那に見初められる。しかしどう考えても若旦那がいい人過ぎて、不憫すぎるパターンです。 
 そう言えば、架楠が女の子ですよって言い忘れていた気がします。一人称が「僕」だったのにも理由があるのですが、大した理由じゃないし書く機会がありませんでした。これからもあるかどうかは怪しいところです。
 まあ、小さい内はあんまり男とか女とか関係ないですしね。
 
 実は蚖とかの番外も書いてみたいと思う今日この頃です。本気で私しか楽しくない世界。
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