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紅露と黒巳と紫陽花のオリジナル小話不定期連載中
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人間って怖いねー。
 今日の『魔女の秘密展』の感想。噂だとか、盲信って一番怖いね。まぁ、その影には欲深い人の策略みたいのがあったりするわけですが……。欲深い人が悪いってわけではなく、単に本当に怖いよねってのが今日の感想。勉強になりましたよー

 更新するの何か月ぶりかねー。いや、何年か。漸くちょっとは進んできたので、またぼちぼち上げていきますゆえ……。そしてちょっとの間使わないでいると、本気で使い方分からなくなるよー。毎回色々苦戦してる。読みにくくても勘弁してね。長いので、また分けます。



第四幕  訓練初日

 ガバッ!
 布団をはねのけて起きあがる。眩しいくらいに朝日が、窓から差し込んでいて暑かった。見慣れた部屋のベッドの上。真っ白な世界ではない、自分の部屋そのものだった。
「……?」
 肌に冷たいものが当たった気がして、胸元に手をやる。厚手のセーターの中から、誕生日にプレゼントされた翡翠の首飾りが出てきた。それがひんやりとしていて、気持ち良かった。
 ともかく、この暑いセーターを脱いでしまおうと、ごそごそやっていると、隣で何かがのそっと動いた。黄色いそれを見て、もしかして夢で出会ったやつかと思ったが、顔を上げたのはくしゃくしゃの髪をしたリーズだった。彼はディアンの隣で寝ていたらしく、一度一つあくびをすると、ディアンの方を見た。
「ディアン! お前、セーター脱いで大丈夫なのか?! もう寒くないのか?!」
「もう大丈夫だよ。今度こそ、ほんとに寒くない。さすがにこのセーターは暑過ぎ……」
「良かったー!! 心配させやがってこのー!」
「! 兄ちゃん、暑苦しいよー」
 頭をくしゃくしゃとかき回してくるリーズに、ディアンは少し抵抗するとパッとセーターを脱ぎ捨てた。
「うえ~。汗べたべたで気持ち悪い~」
「シャワー浴びてこいよ、ディアン。今日から連休だし、ゆっくりできるからな」
「そうする~」
 パタパタとディアンは浴室へと向かう。ほんとの所は、今すぐ出かけたかったが、この状態では、さすがに出る気がしない。
 シャワーを浴びてリビングに顔を出すと、デビが朝食の準備をしているところだった。
「あっ、ディアン! おはよう。もう大丈夫なの?」
「うん。もう大丈夫だぜ! 逆に暑いくらいだ」
 ディアンが元気よく答えると、後ろからサトが顔を出した。先ほどまで寝ていたのか、目をこすりつつ「やぁ、おはよう」と二人に挨拶した。
「おはよう、サトさん」
「ふぁ~。ディアンは昨日眠れたかい?」
「うん」
 大きなあくびをしつつ、サトはディアンの答えに頷くといそいそとテーブルにつく。そこに綺麗に焼けた目玉焼きを乗せたフライパンを持ってリーズが現れた。四つの目玉を綺麗に分けて皿に盛りながら、「結局朝飯まで厄介になりやがって」とぶつぶつつぶやいた。
「俺はお前の給仕係じゃねぇぞ」
「いいじゃないか、たまにはさぁ。僕は、オンとオフははっきりさせる方なんだよ、君と違って」
「厄介になってる奴の言うセリフか、それ」
 青筋を立てつつも、リーズは四人分の料理を皿に盛るとまたキッチンへと引っ込んでいった。なんだかんだ言いつつ、面倒見のいいところがあいつの良いところだよなぁとサトはまた欠伸をしながら呟いた。
「あ、そうだ、ディアン。まだ聞けそうならでいいんだけど、一つ君に言っておかないと行けないことがあるんだ。昨日の続きで」
「昨日の? 先生のこと?」
「まぁね。でも、なんかその顔を見るに、あんまり興味はない感じかな?」
「そ、そんなことないよ! 話して!」
 じゃぁちょっと移動しよう、とサトは席を立って奥のリビングへとディアンを呼んだ。
 
リビングにあるソファに座った二人は、揃って一度ダイニングとキッチンの方へ目を向ける。誰も覗いていないのを確認して、リーズには内緒にしといてほしいんだけど、とサトは声を潜めてディアンに話し始めた。
「昨日、レスが罪を自白して捕まったって話をしたよね?」
「うん。でもその後、何故かは分からないけど出てきたんだよね?」
「そう。でも、実は気になる点が一つあるんだ」
「気になる点?」
「……あんまり話したくはないことだけどね」
 リビングのソファに隣り合わせに座った二人は、再度キッチンを振り返る。誰も、二人の方を見てはいなかった。
「レスは捕まる前に、他の竜忌のメンバーのための通夜式に顔を出しているんだ。と言っても、通夜が行われていたのは中央広場だったし、レスの方は沢山の警官に囲まれていたから、参考人として病院から警察署へ移動している最中だったみたいだけどね」
「……そこで何かあったの?」
「ディアンはプス先生を知っているよね? 緑の髪の」
「うん。二年の時、担任だったよ。……プス先生がどうかした?」
「実はね、彼には妹がいるんだけど、その妹はレスと友達だったんだ」
「……えっ?」
「竜忌のメンバーではない、レスのただ唯一の友達だったそうだよ。彼女も、何故か……あの時現場にいて、そして死体が出てこなかった」
「…………」
ディアンにはその意味が何となく分かったし、その妹がどんな人かも同時に理解した。プスと同じ緑の髪の少女が、あの時、レスの感情の記憶を見たときにいたからだ。確か、レス自身も死んだと思っていたっけ。
「僕達も当時現場にいたけど、彼女の死に、その家族は皆、目も当てられない状況だったよ。そして、現場にレスがいると分かるやいなや、ため込まれていた恨みが爆発した」
「! まさか、プス先生が?!」
「いや、そのお父さんだよ」
「……お父さん?」
「うん。プスのお父さんは軍人でね。火影のことは、当然のように嫌いだったんだ。なのに、その娘が火影と仲がいいだけじゃなく、そのせいで死んだって、大層ご立腹だった」
 ディアンは暗い顔で話すサトを見て、それがあまりよくない話だと理解した。レスのあの記憶の中で見た、細面の冷たい目をした男は、プス先生のお父さんだったのかもしれない。
「もうその怒号ったらさ、聞いているこっちまで萎縮するぐらいだった。……きっと、目の前で怒鳴られていた本人は、もっとひどい思いをしただろうね」
「そんなにひどかったんだ……」
「とても、今ここで言うことはできないようなものだった。そうすることで、僕達はちゃんと彼から話を聞く機会を失った。彼が人を信じないのも、それがあるからだと思うね」
「……サトさんは、先生のこと、悪者だとは思ってないの?」
 言葉に違和感を感じたディアンがそう尋ねると、サトはそんなわけないよと、軽く笑った。
「自白して、罪を認めてしまっている彼の味方をしたってしょうがないじゃないか。そもそも、きっと彼は、味方なんて、もう望んでないよ」
「そんなことないよ! 先生はきっと、誰かが先生のことを信じてくれるのを待ってるんだ!」
 大声で反対したディアンに、サトは少し驚いた顔をしたが、次には少し探るような目でディアンを見た。
「……ディアンはどうして、レスのことをそんなに信じられるんだい?」
「……」
「言いたくない話? 僕やリーズが、どうしてそんなにしつこく聞くのかが分からないかな?」
「……兄ちゃん達は、先生が俺に何か吹き込んだと思ってるんだろ?」
「……」
「絶対違うからなっ!! だって俺、入学試験と初任務の時と昨日以外、先生と会ってもないし」
「じゃぁ何故?」
「それは……」
「ディアン。リーズがどれだけ心配してるかは分かるよね? 昨日のこともあったし、あいつ、今相当神経過敏になってるんだ。……もし、リーズには言えないようなことなら、僕には話してくれないかな? もちろん、内緒にするし、それとなく対処するよ」
 ねっ?
 人好きのするあの笑顔を浮かべ、サトはディアンを促すようにその肩に手をおいた。ディアンはサトをみる。サトが口の固いことは、ディアンもよく知っている。しかし、ジャコールがそうだったように、言うと笑われてしまう気がして、言うのを躊躇ってしまうのだ。
 リーズが自分を心配してくれていることも痛いほど分かっている。ならばどうすべきか……。ディアンは決心したようにサトを見て、その耳元でそっと呟いた。
「……ふっ!!」
 話を聞いたサトが、口元を押さえて笑い声を漏らした。よほど面白かったのか、そのまま笑いをかみ殺そうと躍起になっているサトをディアンは睨みつけた。
「笑うなよーっ!!」
「――ごめん! 違うんだ。ディアンの話に笑ったわけじゃなくてさ、これを聞いたらリーズの奴が凹みそうだなぁと思ったら急に面白くなっちゃって!」
「……サトさんて、兄ちゃんとほんとに仲いいの?」
「当たり前じゃないか」
 明らかに親友のする笑顔じゃないが、とても楽しそうな笑顔のサトに、ディアンはもう何も言わなかった。さて、と一頻り笑ったサトはまた話をもとに戻した。
「そうか。そんなことがあったんだね。僕達が知らないわけだ」
「うん。まぁ、俺も最初会った時は忘れてたけど。だってぜんぜん人が違うから」
「……そこだよね。ディアンが九才くらいの時ってことは、少なくとも三年は前。とすると、豹変の理由はやっぱり二年前の草原の戦にあり、か。」
「サトさんは、やっぱり先生がほかの火影とつながっていると思う?」
「……。正直、グレーかな。レスだけが助かったからっていうのがその理由だけど、完全に黒にするには証拠がない。逆に、白とする証拠も残っていない。彼の場合、状況証拠というのかな。それだけで黒と言われているようなもんでね。でも、だとしたらおかしな点も二三出てくる。もし、レスがスパイならわざわざ竜の国に戻る必要なんかなかったはず。信用されるための小芝居なら、犠牲者は竜の人間じゃない方がいいはずだ。なら、何故竜の国に戻ることを選んだか、とかね。だから、僕はグレーと思うわけだ」
「……先生自身は、なんて説明したの?」
「さぁ。一部の軍関係者しか、レスの供述は聞いてないからね。でも、世間の見解は至極単純。火影の仲間と、仲間割れしたか、もしくは切り捨てられたか」
 で、命からがら逃げた先が竜の国だったっておち。
「どっちにしろ、哀れだね。結局、彼も火影と言う名の道具でしかなかったんだから」
「……道具」
 ジャコールも確かそんなことを言っていたっけ。ぼんやりと、夢の中での出来事を思い出しながらディアンは俯いた。あの時は、確かこう言われていたはずだ。兵器と――。
「火影は影の国の支配者が、ただ人を殺すために作った道具に等しい。青竜の国の人間の命をいくつ奪ったか、それが彼らにとっては大事で、目の前で仲間が傷つこうが、死のうが気にもしない。例え肉親の命でも、そして自分のものでも……。僕達青竜の国の人間を殺すためなら、死ぬことさえ恐怖しないで突っ込んでくる。それが火影の本性だ。僕も、リーズもそんな火影を嫌というほど見てきた」
「……サトさん、何が言いたいの?」
レスだって例外じゃない。だからこそ、誰もが彼を恐れるんだ。もし今の彼が影の国から支配されていないにしろ、いるにしろ、いつどこで、火影としての本性を現すかなんて、誰にも分からないんだよ。だから」
「先生はそんな人じゃない!」
 思わず叫んでいた。リーズやデビに聞こえていても構わなかった。皆して、何考えているんだろう。最初からそう決めつけて話をするなんて、何一つ見てないのと一緒だ。
「命を奪うことしか価値がないって、先生が本気で思ってるんなら、どうしてあの時……!」
「落ち着いて、ディアン。僕はそんなことが言いたいんじゃない」
 どうどうと抑えるようなしぐさをしたサトは、「僕は君にレスを信じるなと言ってるわけじゃないよ」と静かに言った。
「さっきも言ったように、僕自身、二年前の事件にはいろいろ不可解な点があると思っている。マサ先生や、ユウイ先生も同じように考えているはずだし、何か確信があるからレスを匿うんだとも思う。君だってそう。確信があるから、レスを信じたい。そうだろう?」
 ディアンは渋々頷いた。
「けど、さっきも言ったように、火影の本性はどうしたって変わらない。そう考えている人が多いのは確かなんだ。現に、さっきも言ったけど、僕らの身近にだって、彼によって肉親を亡くした人物がいるんだ。そんな人たちの前で、君がレスを信じると断言することはこの上なく危険なんだ。僕はね、この危険性を君に分かってほしいんだ。レスを信じる、そのためには相当の覚悟がいる」
 念を押すようにサトはディアンを見下ろした。
「つまりね、不用意に彼のことを信じるなんて、公言しないこと。随分遠回りもしたけど、僕が言いたいのはこれだけだよ」
「でも、言わなきゃ誰も分かってくれないじゃん。信じたいと思ってる先生にだって、伝わらないし」
「よく考えてごらんよ。この国の皇太子であるマサ先生さえ、公言していないだろ? まぁむしろ、公言できないと言った方が正しいんだとは思うけど、国のトップと言ってもいいような人ができないのに、ましてや子供の君の言うことなんて、誰が聞いてくれるんだい? 白い目で見られるだけだよ」
 サトの言うことに、まだディアンは不服そうだった。じゃぁどうしたらいいの?と言いたげな顔に、サトはこう言った。
「君が本当に信頼できる人に、まずは協力してもらうべきじゃないかな? 僕は公言するなとは言ったけど、個人的な考えを述べるなとは言ってないからね。そうやって、少しずつ信じてくれる人が増えれば、レスもそれに気付いてくれるんじゃない?」 
 いたずらっぽく笑いながら、サトはそう言う。ディアンには、それが忠告だということがなかなか呑み込めなかったが、仲間を募るというのは大事なことだということだけは理解できた。しかし、誰をまずは誘えばいいだろう。
「サトさんは俺に協力してくれるよね?! これだけ話したんだし!」
 期待を込めた声でそういうと、サトはハハハと軽く笑った。
「もちろんって言いたいところだけど、さっきも言ったようにすでに自白までしている彼の肩を持つ気は僕にはないよ。相当な証拠がない限りは、覆すのが難しいし、仮に覆ったとしても、嘘の供述をしたってことで罪に問われる可能性だって、彼にはあるんだ。それに僕は、まだ彼を信じるわけにはいかないからね
 今度は意地悪っぽく笑いながらサトは言う。ディアンは、信じられないような目でサトを見上げる。もう、なんと言っていいのか、よく分からなくなったし、裏切られた気分になった。頬を膨らませて怒るディアンに、サトはすまなさそうに苦笑しながら、先にリビングへと歩き出した。
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