紅露と黒巳と紫陽花のオリジナル小話不定期連載中
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お久しぶりです。 あれから二か月も空いてしまった。……まぁ、もう一か月もすれば自由になれるので、ちょっとぐらいは仕方ないかな。
題名がなんか、変なくさいセリフみたいになってしまった……。たぶん、気づかれているとは思うけど、今書いている所のイメージにそった曲の歌詞から抜粋して書いてます。書いていて思ったけど、これ、一回書いた時よりか・な・り量が増えそう。まぁ、以前が描写少なすぎたということで勘弁。
続きから第三.五幕
第三・五幕 リンク
あぁ、寒い。寒い、寒い。寒い寒い寒いさむいさむい、寂しい寂しいさびしいさびしい。何もない空間で、ディアンはそう思っていた。それだけしか感じなくなっていた。ともかく寒いのだ。ともかく寂しいのだ。自分には、なにもないのだ。何も……。うっすらと開けた目の先には、真っ白な景色が広がっている。壁もなければ、窓も、ドアもない。空さえなく、そこには白以外の色は何もなかった。ディアン自身、全身白くなって、すっかり景色にとけ込んでいた。あぁ、こうして自分もこの景色の中に溶けていくんだな、と柄にもないのにそう思った。このまま、目を閉じていようか。どうせ、閉じていたって開けていたって一緒だろうが、白いだけの世界を眺めていてもつまらない。自分の世界を想像できる、視界のない世界の方がよっぽど色がありそうだ。目を閉じようとしたその時、向こうから黄色だか、オレンジだか、よくわからない色の物体が、ゆっくりとこちらに近づいてくるのが見えた。白い中で、余計に目立っている。そしてそれは、ディアンがいるはずの場所の前で、ぴたりと止まった。
「……飲み込まれるな。ここは、お前の世界ではない」
そう言って、その何かは犬のような鼻面をディアンに押しつけた。
だんだんと体が温かくなってきた。肌にも色が戻ってくる。寂しい気持ちはすっかり消えて、ここはどこだろうと言う疑問が沸いてきた。ゆっくりと体を起こし、「……ここは?」と、誰もいない世界に問いかけた。
「誰かの見ている世界じゃよ。お前とは、別の」
先ほどの何かが、ディアンの問いに答える。少ししわがれてはいるが、落ち着きのある安心する声だ。だが近くにいるはずなのに、全体にもやがかかっていて、それがなんなのかは検討がつかなかった。それでもディアンは、そんなもやのいうことになんとなく納得してしまって、「俺、どうしちゃったのかな?」と、またその何かに尋ねた。
「この世界を見ている誰かの、強力なアニマにあてられたのじゃろう。まだまだ、お前さんの力は未熟なようじゃ。儂の姿も、分からんじゃろ?」
ディアンが頷くと、そうじゃろうなぁとそれは笑った。
「まぁ、いずれ会える日がこよう。その時までの楽しみじゃな」
「それで、ここからどうすれば出られるんだ?」
「ふむ。そう時間はかからんじゃろ。もうお前は自身のアニマを取り戻した。あとは自然と体の意識が戻るのを待つのじゃ」
「……アニマって何?」
「! なんと! そんなことも知らんのか?!」
ひどく驚いたような声でその靄は言うと、落胆したようにため息をついた。これだからゆとり教育めとか、なんとかぶつぶつ言っているが、やがてぶっきらぼうに言った。
「仕方ない。少し、長話をするとしようかの。もやのように見えるのも癪じゃ。余り好みではないが、使わせて貰うとしよう」
もやのような何かが、そう言ってからぶつぶつと呟くと、先ほどまでもやのあったところに、人間の足がにゅっと現れた。やがて、膝、腰、胸と徐々に現れていき、最後にはディアンも知る人物がその場に現れた。
「せ、先生じゃんか?!」
「一時的に、姿を借りとるだけじゃ。本来ならこんな汚れた奴に化けるなんぞ、好んでやらんわい。お前さん以外のアニマを、今はこれしかもっとらんだけで、本物の儂はもっと高尚な姿じゃ」
苦々しい顔をして、元もやの、今は失盗レスの姿をしたものは毒づく。よっぽど嫌らしく、ほぼ真っ黒な衣服に包まれた体を眺め回しては、「傷物の中古め」とかぶつぶつ言った。
「……実際先生に会ってもいないくせに、そう文句を言うのはどうなんだよ?」
あんまりにもぶつぶつと悪態をつくので、うんざりしたディアンがそう尋ねると、「会ったことはあるわい」と、それは返した。
「お前さんを通して、いろんな奴と会っておる。お前さんが感じたことと一緒にな」
「えっ?!」ディアンはびっくりして、今やふてくされたような顔のレス(偽物だが)に目をやった。
「一緒にって?」
「お前さんが目の前の人物をどう感じたのかも、同窓のあの黒髪の小童をどう思ったのかも、手に取るように分かる」
「なんだよ、それ! プライベートの侵害だ!」
「……意味は通じなくもないが、それを言うなら『ぷらいばしー』じゃ」
わしらは一心同体なのじゃと、しわがれた声でレスは言った。ディアンは偽物のレスをじっと見上げた。偽物は声だけは偽物の、基先ほどのもやと同じものだという以外はそっくりだった。ただ、本物よりも目の色が濃くて、健康そうだ。本物が、本来元気であったなら、そうなっていただろうと言う姿なのだろう。動作も、本物ができないような、高貴なしゃなりとした動きで、自信に満ちあふれているようだった。
「儂は、お前さんを守る守護霊であり、分身のようなものなのじゃよ。お前さん以外の人間には見えもせんし、声も聞こえん。そして、先ほど言ったように、お前さんの心の声をすべて聞くことができる」
「じゃぁ、お前は俺の心の中に住んでるの?」
「厳密には、お前さんの心に相違ないが……。
今はその話はよそう。まず、アニマについてじゃ。戦士になりたいくせに、アニマのことさえ知らんとは。やる気はあるのか?」
大きくため息をついて見下ろされると、ディアンは言い訳することさえできずに肩をすくめた。それからやっと、「今はそういうこと、おしえなくなったんだよ」と言った。
「兄ちゃんが言ってたけど、そういうのはほんとになりたい子だけが知っていればいいからって、科目から外されたって」
「全く。人間というのは、なぜそうすぐ警戒を怠るのかのう。アニマを扱えなければ虫も同然に弱いくせに。まぁ、良い。ディアンよ、アニマとはエネルギーのことじゃ。生きとし生けるもの、獣から鳥から虫、さらには草まで、すべての生き物が生きている間に持つものじゃ。もちろん、お主にも流れておる」
自分にも?と不思議そうな顔をしたディアンに、レスの姿をしたそれは力強く言った。
「アニマはもちろん、目には見えん。だが、確かに存在する。お前さんは、自分が怒った時や悲しい時、または誰かが怒った時や悲しい時にその雰囲気を感じたことがあるはずじゃ。アニマは感情に触れることで、少なからず外に出て行くからの」
「ちょっ、ちょっと待って。まず、名前を教えてよ。なんて呼べばいいか分からないと、口も挟めないよ」
「……やはり、まだまだ力が弱いようじゃのう。力があれば、儂の名前なぞ、貴様には一発で分かるだろうに。……儂はジャコールと言う。元はジャッカルの神霊じゃ。属性は風」
「神霊?」
「ふむ。神霊は、アニマが正の感情、つまり嬉しい気持ちや幸福に触れて集まってできる。多くは害からものを守る、守り神として扱われておる。守るものも、人から物から土地まで様々じゃ。これと逆に負の感情、つまりは悲しみや憎しみに触れてできるのが妖魔じゃ。ものに害なし、災いを呼ぶ。その種類は、妖魔自身が持つアニマの属性によるがのう」
まぁ、この辺りの詳しいことはさすがに人間共も教えようと、ジャコールは上からの目線で言うと続けた。
「さきほど言ったように、アニマは感情に強く反応する。それによって、体の外に放出されるんじゃ。だが、普段は体の中に留まり、血液と同じように体を循環して、精神の平常を守っておる。なくなれば死ぬ。いや、無くなる時が死の時、と言った方が良いかの」
「ふうん。でもさ、俺は先生のアニマに当てられたってジャコールは言ってたけど、先生には感情がないんだよ? 自分でもそう言ってたし」
「馬鹿なことを言うでない。感情のない人間など、この世におらぬ。強大な力に抑えつけられ、押し殺されておるだけじゃ。それに、こやつの場合は少し特殊なせいもある」
ジャコールは憎々しげな顔で自身の体を指さした。触ることさえ嫌だというかのように、さっとその手を下ろすと「火影というのは知っておるな?」と尋ねた。
「う、うん」
「火影は妖魔の礎となるものじゃ。アニマは人体以外に、空気中にも幾分か存在するものもある。この空気中を漂う、持ち主のいないアニマが、ある人物の感情で放出されたアニマと出会うとする。そうして集まってできるのが、本来の神霊や妖魔の成り立ちなのじゃ。だがこれを、影、今は黒龍と呼ばれとるはずじゃが、奴はさらに効率良く、且つ大量に量産しようと考えた」
その結果が火影じゃ。
またしても、自身の体を指さしながら、そして忌々しげに顔をしかめながらジャコールは言うとふとディアンの顔を見て、難しそうな顔をした。
「……話についてこれておるか?」
「……わっかんねぇ!」
無邪気な笑顔でそう言われると、ジャコールはそこから先を説明するのをあきらめたようだった。ともかく、アニマとはエネルギーで感情であると思っておけと、ジャコールはディアンに言い放った。
「全く、お前さんはレオより手がかかりそうじゃのう」
「誰って?」
「もういいわい。さて、アニマのことも分かったじゃろうし、そろそろお前さんの体も起きる頃じゃろう。最後に言うておくが、こやつには以後絶対に近付くで」
「なぁ、ジャコール。俺がさっきまでいた世界が本当に先生のだったなら、今先生は寂しいってこと?」
話を遮られたうえに、自分が意図していることと逆にレスに興味を持ち始めたディアンを、ジャコールは呆れた顔で見る。そして考えはお見通しだとばかり、知る必要がないと冷たく彼はディアンに言い放った。
「えぇー! なんでだよ!」
「ふん。それはこちらのセリフじゃ。こやつを助けて、お前さんになんの得がある。災いしか起こせぬこいつの傍におることは、単なる自殺行為じゃ。じゃのに、こやつを助けたいじゃと? アニマのことさえ知らんかった小童が、偉そうなことを言うでないわ」
ハハンと見下すようにそう言われると、なんとも言い返せなくなって、ディアンは顔を真っ赤にした。自分の考えもお見通しだったし、思いを共有しているというのも本当のことのだろう。なら、自分がなぜレスを助けたいのかということくらい、分かりそうなものだった。
「……お前さんも、心底世話焼きよのう。そんな小さなこと、こやつは覚えておらんぞ」
「!」
またもやお見通しか。ディアンは苦い顔でジャコールを見る。そう、確かに小さなことだ。それでも、一度思ってしまうとその思いを止められそうになかった。それをジャコールに分かってもらおうと口を開きかけた時だった。
「どうしてもと言うなら、奴を知る事くらいはできる。じゃが、非常に辛い体験になるとしか言えん。それでも知りたいか?」
言わんでも分かるという三回目の反応だった。あまりに早く自分の思いが読まれてしまうので、答えにつまりそうになるが、ここで申し出に答えなければ丸め込まれてしまう気がした。
「うん。俺、ちゃんと先生のことを知りたい。今のままじゃ、分からないことだらけだもの」
「……本当に覚悟はあるのだろうな?」
ジャコール(今はレスの姿だが)は、訝しげにディアンを見た。
「はぁ。まぁよい。儂はそんなこと望まぬがの。見た後、考えが変わるということもあり得る」
「じゃぁ、教えてくれるんだな!」
「……よかろう」
こちらへ来いと、手招きしたジャコールにディアンが近づく。すると、足元に青緑の光を放ちながら円が現れた。ところどころに複雑な文字が描かれたそれは、ゆっくりと回転し、さらに複雑に大きく広がっていく。
「これより、お前の中から追い出したこやつのアニマを、再度お前の中へと入れる。分かってはいるだろうが、呑み込まれてはいかんぞ。これよりお前が見るものは、お前自身に起きたことではなく、こやつに起きたことだ。量はさほどないので、断片的でお前が欲しい情報が手に入るかは分からんが、どんな感情を感じても、それはお前のものではない。心しておけ」
ジャコールがそう言い終わるか言い終わらない内に、辺りは青緑一色の世界へと変わっていき、眩しい光にディアンは目を閉じた。
やべー、使い方わからなくて焦った……。 機械音痴、web音痴にもほどがある。どうにかします。
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