忍者ブログ
紅露と黒巳と紫陽花のオリジナル小話不定期連載中
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

さっそく、さっきの続き。文句言うようで悪いけど、ちょっと使わない間に使い勝手悪くなってない? 私が順応できていないだけなの? よくわかりませぬ。とりあえず、この前の記事からの続きで第三幕です。


 兄たちと別れたザラは、校舎に向かっていた。正確には、校舎裏にある三珠樹が使用している平屋を目指していた。そこに、彼がいるはずだと確信していた。彼と、あわよくば三珠樹とも会って話をつけなければならないことがあった。それは、誰にも……実の兄にも、聞かれないようにしなければならない話だ。兄が、自分のしようとしていることを知ったら、さしもの彼も真剣な目つきでこういうだろう。

『復讐なんてよくないよ、ザラちゃん』

 ……『ちゃん』はない、と思いたいが、あの兄だと、真剣な時さえそう言いそうで、そして、そう呼ばれることに徐々に慣れつつある自分に呆れて、彼はため息をついた。考えは少しずれてしまったが、ともかく、自分の目的のために、今やらなくてはならないことは、彼と話をつけること。ザラは暗くなってきた道を急いだ。

 もうすぐで平屋が見えてくるというところで、その彼が一人で校舎の裏で佇んでいるのを見つけた。ぼんやりと、空に浮かんだ月を眺めている。実際眺めているというよりも、立っているだけというほうがいいかもしれないが。特に意味もなく、ただそこにいるだけということが、彼をみればすぐに分かるのだ。

 これは絶好のチャンスだ。ザラは、近づいていって話そうと足を早めた。しかし、自分とは逆の方向から誰かが彼を呼ぶ声がして、咄嗟に近くの茂みに逃げ込んだ。聞いたことのある教師の声だ。こんな時間に一人でいるのが見つかったら、おそらくは帰れと言われるのが関の山だろう。 

 彼の思った通り、向こうから三人の教師が現れた。派手な髪で、一目で誰か分かる巨体の針闘と、彼とは明らかに気の合わなさそうな小柄で厳しい顔をした輪超、そして以前普通科で顔を合わせたことがある神空。ザラは隠れて正解だったな、と胸をなで下ろした。神空プスが、過保護なほどお節介なことはよく知っていたからだった。

 向こうは幸い、自分の存在に気がついていないらしい。ザラは、とりあえず少し近づいてみることにした。今の位置では、彼らが何を話しているのかさっぱりだった。

 

 

*******

「……」

 レスは、自分の前に立ち並ぶ三人の先輩に目をやった。険しい目つきで、自分を見返す三人に、大体の話の検討がついて、目を反らす。幾度となく、同じ質問を、幾人もが、自分に尋ねたけども、自分にできる答えは一つだけ。それ以外に、言う言葉はなかった。

「レス、少しいいかな? 僕の話を聞いてほしいんだけど」

 一歩前に出て、プスがそうレスに話しかける。レスが、黙ってプスを見返すと、それを了解ととって、彼は話し始めた。

「まず、君、ここに来るまでどこにいたの? 聞いたところじゃ、マサ先生も、君が今までどこにいたのか知らないという話じゃないか。そこを、はっきりさせてほしいんだけど。二年も行方不明だった人を教師に、なんて、親御さん達がだまっちゃいないよ」

 軽く、話を振るようにプスはそう尋ねた。顔には、嫌な作り笑いが浮かんでいる。プス自身も、それには気付いていたが、どうすることもできない。笑えと、言われたって無理だ。レスはといえば、全く表情をかえず、じっとプスを見返している。濁った瞳は、すべてを見透かしているようだった。

「……聞きたいことは分かります。ですが、何度、誰に聞かれようとも答えは、「分からない」これだけです」

「……それならそれで構わないよ。分からないなら、仕方ない。代わりに、僕の話を聞いてくれないかな? 最後まで」

「遠慮します」

 やはり作り笑いのまま、プスがそう言ったのをピシッと払いのけ、レスはその場から去ろうと歩き出した。

待て!」

「くどいですよ」

 伸ばされたプスの手を、捕まれる直前でレスは払いのけた。そのままプスを睨みつけて静止する。珍しく物言いたげに、怒りを滲ませて、睨んでいた。

「……今更、真実を知りたいとでも言うのですか?」

 自分を追ってきたプスにレスは尋ねる。その背後にいる二人の先輩に向けられているものではなかった。

「知らなきゃいけないと、今は思ってる。君が、ここにいる以上」

「なら、知る必要はありません。俺は、すぐここを出て行きます。それでいいでしょう?」

「よくないよ。受け持った生徒達をおいて、一体どこに行く気なのさ?」

「担当なら、もう外して貰いました。生徒達が、俺がいなくて困るという状況ではないはずです」

「いいや。代わりに来る先生なんて、僕は聞いてない。まだ、君はここにいる必用があるよ」

 力強く言うプスに、レスは呆れたようにため息をついた。諦めたのか、とプスが思った時、レスは一言言った。

「本当に信じるでしょうか?」

「えっ?」

「あなた方は、俺の言うことを信じるかと聞いたんです」

「信じるかどうかは、話にもよるし、証拠もあるなら提示してもらいたいね。君は一応あの日、自分の罪を自白することで認めてしまってるんだから」

「……なら、やっぱり無理ですね」

 レスは再びプスを睨みつけ、続けた。

「俺には自分の言ったことを証明できる証拠がない。……それを証明してくれる人も、もういない。話した所で、一蹴されるだけでしょうね。火影の法螺話だと」

「そんなの分からないよ。そうでしか辻褄が合わないなら……、僕達だって信じるしか」

「……信じるしか、ですか。……そう思うくらいなら、信じなくていいじゃないですか」

「えっ?」

 レスの言葉に、プスは驚いて声をあげる。パズとハリトーには、今のこの会話は聞こえているだろうか?

そう疑いたくなるほど、信じられない言葉だった。

 ありがたいことに、他の二人も話を聞いていたらしく、パズがプスの思いと同じことをレスに投げかけた。

「……貴様、もしかして自身の無罪を主張する気がないのか?」

「当たり前でしょう? 今更主張したところで、何になるんです?」

「いやいや、普通そこは主張しなきゃだろ?! じゃなきゃ、一生悪者のままなんだぜぃ?!」

「それがあなた方の望んだことじゃないんですか?」

 相変わらず光りのない、濁った瞳でレスは三人に冷たく言い放つ。苦い顔をするパズと、どう反論すればよいのかと困惑しているハリトーをおいて、プスはまた一歩、レスに近づいた。

「それは違う。僕達遺族も、他の人達も、本当は何があったのか、その真実を知りたいだけだよ。君を悪者にしたいなんて、そんなつもりはない!」

 なのに、話してもらえないことはこの上ない苦しみだ。プスは、その最後の言葉を言わずに留めた。それが分かっている相手なら、こんな風にすべてを隠そうとなど、しないはずだと思ったからだ。ここで逆上されて、これ以上話すのを止められても嫌だった。だから、これぐらいなら、彼が逆上する事もないだろうと思っていた。何より、少なくとも彼は、癇に障ったとしても冷静に考えることのできる人間であることは、先ほど証明されていたからだった。次のその瞬間までは。

 周囲の空気が突然凍り付いたように冷たくなった。

 三人が見ると、レスがすごい形相で三人を睨みつけていた。濁った目から一転、黄緑がかった瞳は瞳孔が細くなり、まるで獣が獲物を定めた時のように鋭く光っている。蒼白だった顔には初めて生気が宿り、そして彼の周囲はペキペキと音を立てて少しずつ凍り付いていった。可憐な花を咲かせていた地面も、雨樋から落ちる滴も、青々とした木の葉を茂らせる大木も、皆一様に冷たい氷の中に閉じこめられた。

「そんなつもりはない……?」

 レスの声には今までにはなかった気迫があった。そして、その細い体のどこから出るのかと言う大声で、三人に向かい狂ったように叫んだ。

「ならお伺いしますが、僕を裏切り者と呼び始めたのは誰ですか? 僕の命に価値なんてないと、決めつけたのはどこの誰でした? 主張だって? その主張さえ、火影だからといって、取り合ってもくれなかったのは、この国の人々(あなた方)じゃなければ、一体誰だと言うんだっ?! 僕の妄想か?! 自意識過剰な薄汚い火影の小僧の考えた法螺話か?! あなた方はいつだって、僕をそうやって見下して、貶して、利用してきたんだっ! 今更、聞いてやるから全部話せだって? 虫が良すぎるんだよっ!!!」

「僕は……」

 そんなつもりじゃと続けようとして、プスは黙った。今のレスの怒りは、自分だけに向けられているものではないと気付いたからだ。

 いまやレスの怒りは、周りを凍らせながら徐々に三人に迫っていた。

あと、ほんのこれだけだったのに。一緒にできなくて残念。レッスー、何気にキレるの初?
私の中では、あんまり言葉に出してキレないキャラっていうイメージだけに、書いてて自分もびっくりした(おい) 私でびっくりなんだから、声さえほとんど聞いたことなかった(っていう設定の)パズやハリトーさんは、そらもうびっくりしただろうね(笑
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
メールアドレス
URL
コメント
パスワード   Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
カレンダー
10 2024/11 12
S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
フリーエリア
最新コメント
[05/27 紅露]
[04/18 黒巳]
[10/21 紅露]
[09/18 紫陽花]
[08/06 黒巳]
最新記事
最新トラックバック
プロフィール
HN:
紅露 黒巳 紫陽花
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索
忍者ブログ [PR]