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紅露と黒巳と紫陽花のオリジナル小話不定期連載中
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 約一年ぶりの更新となりました。 紫陽花です。 やっとこさ、ここにUPできるまで書き溜められたので載せていきます。これからまたバイトだぜ~。 いろいろ試してみたいことあるけど、また今度にするよ~。ってことで、画面見るのキツイ人には申し訳ない仕様になってます。

 
 

 村がメラメラと音を立てて燃えていた。人が住んでいたと思われる家屋も、家畜が飼われていたと思われる納屋も、使われていた椅子から食器からなにから何まで。赤い炎は、全てを消し去りたいと言わんばかりの勢いで、村を焼き尽くしていった。暗い夜の森で、煌々と炎が燃える様はまるで夕焼けのようだ。その炎を見つめる人影の群は、楽しそうに顔を歪めている。赤い灯りに照らされて明らかになったのは、暗闇に居座る虎のような、黒と橙の色だった。

  

第二章     五月闇の火影

 第一幕  ぼや騒ぎ

 

 五月に入った今日。二限目終了の鐘が響き、学簿を手に先生が教室を後にする。ディアンは一度伸びをすると、先ほどまで眠気と戦っていた目をこすった。学校の授業はいつになっても眠たくなる。体を動かす体育は別だが、それ以外の授業はてんでダメだ。前の日にいくら寝ても、寝たりないのかどうしても眠くなるのである。

「また寝てたね、授業中。ノートは取れたの?」

「デビぃ、むちゃ言うなよ。寝ててノートが取れる訳ないだろ?」

 皮肉ぎみにそう尋ねてきたデビに、「後で写させて~」と泣きつくと渋々ノートを貸してくれた。

「サンキュー、デビ! お前と親友でほんと良かった!」

「ったく……。もう十二歳なんだから自分でノートぐらい取らなきゃダメだよ。次は貸さないからね」

「そんな堅いこと言うなよ~」

 貸されたノートを嬉しそうに受け取ったディアンは、釘を刺すように言ったデビの言葉に情けない声を上げる。それにデビは苦笑いを浮かべた顔で、「ちゃんとするって約束するならいいよ」と付け足した。

「抜けた部分ならいくらでも教えてあげるからさ。ところで、ディアン。授業中に社会の教科書を開いてたみたいだけど、何見てたの?」

「? ……今の時間、社会じゃなかった?」

「いやいや、今の国語だからね。そんなこと言ったらヘル先生、泣いちゃうよ。やってた部分は、ちょっと社会科の内容も含んではいたけど。で、何を見てたの?」

「この火影についての欄だよ」

 机の上に出されっぱなしになっていた社会科の教科書を開き、ディアンは目当てのページをデビに見せる。竜の国の歴史が書かれている教科書の右上、補注の部分をディアンは指さした。

「さっきぼんやり外を見てたら、中庭をマサキ先生が横切ってくのを見て思ったんだよ。そういやあの人って火影だったなぁと思って」

「! じゃぁ、ディアンも?」

「?」

「ちょっと場所、変えよ。休憩も二十分あるし」

 デビはディアンの手を取ると、さっさと教室を後にする。ざわざわと話し声の響く教室にいる生徒達は、二人が出ていったことには気づかない。ただ何人かの生徒は、今朝配られていた新聞の一面を食い入るように見つめていた。

 

 

 戦教校舎は二階建てだ。一階に職員室や大部屋があり、二階にディアン達の教室がある。その教室の真向かいにあるのは、先輩達の教室で今日も盛んに何やら議論が行われているらしい。その二つの教室から離れ、デビは解放スペースの方へディアンを引っ張っていく。解放スペースとは言うなれば、くつろぎ空間のようなものだ。校舎の外側に設置されており、一種のベランダのような所にテーブルといくつかの椅子が置いてある場所で、専ら休み時間に生徒達が雑談をしたり、昼食をとったりする場所として使われている。

 そこに置かれていたベンチの上に腰掛けたデビは、ディアンにこう切り出した。

「ディアンは、マサキ先生のことどう思ってるの?」

「へ? んー、最低」

「やっぱり。ディアンなら、そう言い切ると思った」

「だって、あんなひょろちくって、無愛想で訳分かんないし、最低としか言えないだろ?」

 結局あれから一ヶ月、ほんとに任務を一つも受けてくれてないし!と憤慨するディアンの勢いに、抑えて抑えてという動作を交えてデビは答えると、「僕もそう思うよ」と付け足した。

「正直、なんであの人を先生にしたのか分からないくらい。マサ先生やユウイ先生は、お兄ちゃん達のお師匠達だから、絶対はずれとかはないと思ってたのになぁ」

「でも俺、先生のことは最低だと思うけど、はずれだとは思わないぞ。ちょっとだけかっこいいと思う」

「えぇっ?」

「ほら、一ヶ月前に火影に襲われた時、助けてくれたろ? あん時の先生は戦士っぽくてかっこよかった! あれでもう少し表情があって、やる気さえあればどうにかなると思うんだよなぁ、俺は。ほら、「飛び蹴りの佐和群」って有名な人、いるじゃん? あんな感じで」

 ディアンの説明に、デビはどうもイメージが沸かないのか難しい顔をする。それほど戦士だなんだのに興味のない彼は、まず「飛び蹴りの佐和群」さんが思い浮かばないのである。そんなデビの難しい顔は気にせず、「すごかったんだぜ? あの蹴り!」と蹴りの真似をしながらディアンは興奮気味に語る。

「俺もあんな風な蹴りできるようにならないかなぁ! 先生、教えてくれないかな~」

「……言っちゃ悪いけど、あんまり期待しない方がいいと思うよ? ディアンもさっき言ったけど、あの人ほんとにやる気ないから」

 そこまで言って一度、言葉を切ったデビは次に言い難そうに少し躊躇ってからこう問いかけた。

「じゃぁ……、ディアンはマサキ先生のこと、信用できると思う?」

「?」

「僕は……、信用できない気がする。確かに、助けてもらったし、戦教の先生だから悪い人じゃないかもしれないけど、だけどやっぱり怪しいもの」

「怪しいって、火影だってことがあるからか?」

「それもだけど、昨日、お兄ちゃんがリーズさんと電話で話してるのを聞いちゃって。今日の朝刊にも載ってたけど、伊吹村近くの森で火災が起こって、どうもそれが火影の仕業みたいなんだ。ここ最近、火影は活動してなかったのに、一ヶ月前に僕らが火影に襲われてから急に活動が活発になってきたし、もしかしたらマサキ先生があの時火影に接触したからじゃないかって、お兄ちゃんが……」

 リーズさんはどうもその意見には難色を示してたみたいだけどね。

「それで僕、もしそれが本当だったらどうしようって。先生と、前の火影は実は仲間でって考え始めると、怖くなってきちゃって」

「……心配しすぎなんじゃねぇ、それ?」

 顔を真っ青にしながらそう語るデビに、ディアンは呆れたような顔をしてそう言う。デビがディアンの物忘れの酷さをどうにかしてほしいと考えているように、ディアンもデビのこの心配性がどうにかならないものかと思っているのだ。

 それはさておき、電話の話にディアンは夕べのことを思い出す。そういえば、リーズがしきりに電話で口論していたが、あれの相手はサトだったようである。マサキが前回の火影と関係のある可能性に難色を示すリーズの意見に、ディアンも賛成だった。昔から、見た目や噂だけでその人を判断してはいけないと、散々教えられてきたからである。とはいっても、やはり見た目というのは人にとって大切なものなので、一ヶ月前のあの日はディアン自身もそのことを忘れていたのであるが……。ここ一ヶ月、まともに会ったことさえない担当のことを、ディアンは思い出してみるのだが、正直、あの時のこと以外は印象が薄かった。

「そういえば、火事は結局どうなったんだ?」

 ディアンの答えに不服そうな顔をするデビにディアンがそう問いかける。

「火事は、近隣に住む人たちが協力して消したみたいだよ。でも焼け方がひどくて、火に巻き込まれた村の家屋も何もかもが灰になったんだって」

「え? じゃぁ、もしかして誰か死んだりしてるんじゃ」

「ううん。奇跡的に、人は死んでないんだって。残っていた集落の跡地が燃えたから、人はそもそもいなかったみたいだよ。だから、これは竜の国にいるスパイへの何かしらの合図じゃないかってお兄ちゃんが」

 そうかぁとディアンがともかく誰も死んでないなら良かったなと呟くと、デビは隣で「良くないよ~」と情けない声を上げる。

「だって、合図だよ? もしかしたら、火影が攻めてくるかも知れないんだよ? その上、それにマサキ先生が関わってるかもしれないのに、そんな悠長なこと言ってる場合じゃぁ」

「だ~って騒いだって、急に強くなんてなれないんだしさぁ。兄ちゃん達がいたら、大丈夫だって。ちょー強いもん。 マサ先生やユウイ先生なんて、もはや生きる伝説みたいな扱いじゃん」

 あくまで楽観的な見方をするディアンに対し、デビはそうかなぁ、大丈夫かなぁとおろおろと歩き回る。そんな親友の様子を見ていられなくなったのか、ディアンは何かを思いついたかのようにベランダから下を覗き込んだ。おろおろとしていたデビがそれに気づいて、何してるの?と尋ねるとディアンはにかっと笑ってこう言った。

「そんなに心配なら、本人に確かめに行こうぜ」

 ちょうどあの人のこと、もう少し知りたいとこだったしと、唐突過ぎて何も返せないデビの服の袖を引っ張り、ディアンは階段へと突進する。そして少し遅れて発せられたデビの驚きの声とともに、階段を勢いよく駆け下りていった。



 一幕の区切り、つけるの難しいから短くなった。この続きはまた夜に載せます。見直ししてられなかったので、間違いたくさんあるかも。

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