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母の日に白いカーネーションを買ったら、「プレゼント用ですか?」と訊かれた。
プレゼント…なのかなぁ?贈るものに違いはないが。しかしこの時期に白いカーネーションって、プレゼントされたら、ちょっと…。自宅用にしてもらいました。
母の日の発祥はアメリカで、クリスチャンの女性が、母の命日に白いカーネーションを配ったことから、っていうのは、割と知られてる話だと思います。白のカーネーションの花言葉は、「私の愛情は生きている」。
そっちの方が起源だというのに、母の日に白いカーネーションを置いているところが少ないとはどういうことだ!三軒も花屋回るはめになったじゃないか。
しかし白いカーネーション、フランスでは花言葉は「貞節」「若い娘」とかになるそうですね。同じ花でも国によって、色によって、組み合わせによって、全然意味が変わってくるからややこしい。日本に入ってるのは、やっぱりイギリスの花言葉が中心だが、それが他の国の人にも通じると思って実行すると、えらい食い違いが起こりかねないな。
さて、名前の由来も最後になりました。ラストは言わずもがなのノルンです。
ノルンNorn
複数形はノルニル。運命を司る三女神。神々に未来の災厄を警告し、過去からの教訓を伝える。また、聖なるトネリコ世界樹ユグドラシルの根本に住み、水をやり、枯れないように気を遣う役目もある。賢いノルンとして有名な三女神は長女がウルズ(ウルド)「運命」「過去」、それからヴェルダンディ(ヴェルザンディ)「存在」「現在」、スクルド「必然」「未来」である。ウルズはユグドラシルの根本の泉で二羽の白鳥を飼っていて、これが人間界の白鳥の祖先であるという。ノルンにはこの三姉妹以外にも、小人出身のものなど多数いる。ウルドは絶えず過去を振り返っているため、死と冥界の女神ヘルと関係がある。アルウラン、ディース、イディスなどとも呼ばれる。この三姉妹は子供が誕生するたびに現れ、その子の運命を決定する。たいてい長い灰色の服に、灰色の薄いガーゼのヴェールを被った姿で描かれる。
一度目は失敗した。だけど、今回は上手くいきそうだ。
あいつの頭の中には、用心という言葉が抜けているに違いない。あんな単純な鍵、本気で出る気のある人間なら、簡単に壊せてしまう。壊してまで逃げないと思っていたなら相当馬鹿だし、部屋に物を残して行ったのは失敗だとしか言いようがない。本当にバカなやつだ。
まぁなんにしろ、オレはそのおかげでこうやって逃げ出せたわけだけど。
影になる場所を選びながら移動して、そっと辺りを見回す。運のいいことに、人影はない。
緊張のせいか、息が上がっている。心臓の音がやたらと耳に付く。おかしいな、目もかすんできた。
……苦しい?
がくりと、膝がぬけた。
呪だ。そうか。ちくしょう。これは逃げだそうとしても発動するのか。首元の圧迫感がひどい。…やばい。足に、力が入らない。くそっ、……オレは、ここから、逃げ出して、やる、んだ…。こんな、ところで……。まだ、なにも……。
意識に、かすみが、かかってきた…。……息が、く、る、しい……。
…ぁ…誰か…が、近づ、いてく、る……。だ……ぁれ…?
ぼんやりと、声が、聞こえる。大分近くから。
「―――、―――、―――私は――が許す、――に―…」
苦しかったのが、治まっていく。空気が、やわらかくて、優しくて、肌に気持ちいい。
目の前の存在をたしかめようと、そっと、薄く目を開けた。その前から、声で、誰かは分かっていた。あの時とは、ちがう響きを載せているけど、あの胸くそ悪い場所で、優しくオレに話しかけてくれたのと、同じ声だったから。
見えたのは、きれいな空気の中に立つあいつ。その身体を、今取り巻いている空気と、そっくりなあいつ。オレのことを、許すと言ったやつ。
………きれいだと、思った。見たことのないくらい真っ黒で、まっすぐな髪が、風に散って。ヘイゼルだと思っていた伏せ気味の目は、普段とちがって、濃い月の光を煮つめたように光っていた。
その場であいつは、支配者として立っていた。まちがいなくそれだけの力を持っていて、それなのに、なぜだか壊れ物のように見えた。その姿が、忘れてしまうことなんてできそうにないぐらい、目に、頭に、胸に、染みついた。
とてもきれいだ、と……。
気が付くと、オレはベッドの中にいた。目を閉じたまま気配をうかがうと、ベッドのすぐ横に、誰かがいるのが分かった。多分あいつだ。
オレはまた失敗したんだ。こんなことで、いつになったら目的が果たせるのか……。
いきなり、大きな音を立てて、ドアが開いた。
ベッドの横で、うつむいていたらしいあいつが、顔を上げる気配を感じた。なんでだか元気がなさそうだ。
「…フェリスさ「サフ!」
「…ああ、すまない。ノルン」
「違うよ。そのことじゃなくて…」
「……?」
来たのはあの、白髪だったようだ。白髪は、ため息をついて、ベッドの脇、あいつの隣まで来た。
「何て顔をしてるんだい、サフ。彼が心配なら僕が見ているから、君は少し休め」
「ノルン…だけど…」
「休め」
「……分かったよ」
白髪に強引に説き伏せられて、あいつは自分の寝室に向かった。
「……さて、…」
あいつが出て行ったのを確認してから、白髪はこちらに向き直って言った。
「もう起きてもいいんじゃないのかな、ラキくん」
たぬき寝入りは、通用しないらしい。面倒くさいが、ベッドから身を起こして、オレは聞いた。
「…何で、起きてるって分かったんだよ」
「いや、なんとなく。本当に起きてたんだね」
「~~~っ」
なんか、はめられた気がする。
ああもういいや。開き直ってやれ。
「そんで?オレはどうなるんだよ。二回も逃げようとしたんだ。あいつがいくらトロそうだって、なんか罰ぐらい考えてんだろ」
「何も。サフは何もしないよ。君に罰を与えたりしない」
「…はぁ?」
これには驚いた。何を考えてるんだあいつは。オレを、奴隷を、買っておいて、何をさせるでもなく、寝床と飯を与えて。あげく、二回も逃げようとした奴隷に何のおとがめもなし?頭のどっかずれてるんじゃねぇのか。本当におかしいぞ。
そんなことを考えていたら、白髪が続けて言ってきた。
「ただ、僕から言っておきたいのだけどね。……サフが何もしないからといって、調子に乗らないでくれ。サフが何でも許してくれるからといって、甘えるんじゃない。もう二度と、逃げようとして、サフを傷つけたりするな」
後半は、さっきまでのひょうひょうとした様子はどこへ行ったのか、怒っていることを隠す気もないらしい低い声で、そう言った。
その偉そうな物言いが、かんに障った。
「何言ってんだよ。オレが調子にのってる?逃げようとするな?ふざけんな!こんなとこ、すぐにでも出てってやる!!」
何でオレがそんなこと言われないといけないんだ。人を金で買って、それで思い通りにできると思いやがって。
「それが調子に乗っているというんだ。君は、自分が特別だとでも思っているのか?辛いのは自分だけだとでも?君には彼にない経験があるだろう。だがそれは彼にだって言えることだ。ただ立場が違うというだけで、人を苦しめていい理由にはならないのだよ」
「そんなもんオレの知ったことか!あいつがどうしてようが関係ねえ!ほっとけよ!!」
「関係ない?君にはそう思えるかもしれないな。だが違うぞ。誰かが君のしたことを受けて、君のことを考えるなら、君はそれに無関係だとは言えない。それが君の行動の引き起こした結果なのだからな。君は自分の行動にもっと責任を持つべきだ。君には君の事情があるだろう。だが君は、自分の事情ばかり主張したがる前に、もっと周囲の事情を考えることだ。よく考えた上での、結論がこれならば、もう言うことはないがな」
「なに…何わけ分かんねえこと言ってんだよ。出てけ!出てけよ!!」
オレがこれだけどなっているのに、白髪は逆に、憎たらしいぐらい平然と返してきた。
「ああ、出て行くさ。簡易結界しか張っていないから、そろそろ効果が切れるしね。これ以上君が騒げば、サフが気づく。…最後に、これだけは言っておこう。もしこれ以上、君のことでサフが傷つくようなら、サフが許しても、僕が君を許さない。覚えておいてくれ」
言いたいほうだい言った後、その言葉を残して、白髪の野郎は部屋を出て行った。
ちくしょう。むかつくやつだ。何言ってんだ。何でオレがあいつの事情なんか考えないといけない。許さないとどうするっていうんだ。あいつが傷ついてる?そんなもん、あいつの勝手だ。オレには何の関係もない。関係なんかない。
それでも、何故かそれでも。頭に浮かんできたのは、少し前の、かすむ意識の中で見た、あいつの姿だった。多彩な色合いを載せた風の中に、一人で立って、その風に折れそうに見えたあいつだった。あの時のあいつは、本当に、ちょっとしたことでも、傷つけられそうに見えたから。
ラッキー、サフを意識する(二度目。一度目の奴隷市場での出会いはは自分の中で消去したことになってた)。そして魔術師二人の名前を覚える気はさらさらない。
ノルンはもっとちゃらけた兄ちゃんするつもりだったのになぁ。