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さて、毎度おなじみ私用、ごめん実はかなり適当、な名前由来。うっかり鵜呑みにしないでください。
今回はノルンです。名前の方はなんか言うまでのないのだけど、あえて姓の方から。フェリスはFerisuってスペルのつもり。
フェンリル Fenrir
語尾に「狼」とつくと、フェンリス狼Fenrisulfrとなる。別名に、フローズヴィトニルや、ヴァナルガンド(破壊の杖)。
ロキと巨人族の女アングルボダとの間に生まれた三兄弟の長子。灰色狼フェンリル。彼が巨大になったとき、神々はこれを縛ろうとして、様々な鎖を試すが、なかなか上手くいかない。最後に小人に頼んで女の髭、猫の足音、鳥の舌、岩の根、熊の足の腱と魚の息を寄り合わせた魔の紐を作ってもらい、これでフェンリルを縛ろうとする。フェンリルは自分を騙すのではないという証拠に、誰かが自分の口の中に片手を入れることを要求し、テュール神がそれに応じる。縛られてから紐が切れないことに気づいたフェンリルは、テュール神の片手を噛み切った。
神々の黄昏で、フェンリルは全世界を呑み込もうと口を開き、太陽を呑み込み、オーディンを殺す。しかしオーディンの息子ヴィーザルに口を引き裂かれて死ぬこととなる。
前回で話の方は折り返し地点を迎え、後は終わりに向けて突っ走るのみ、なのだが、未だにこの後、何回書いてもしっくりこない。
それから五日が過ぎたが、ラキは相変わらずで、話しかければ返事をするが、それ以外は何もしようとしない。話しかけられて返事をするのは、私が彼の主だからで、彼は奴隷だから、応えないわけにはいかないだけなのだ。それ以外の何ものでもない。
ラキが夜中に時々うなされているのに気づいたのは、その頃だった。
ラキは、私の寝室の隣で寝ているのだが、夜、時折低い、小さな声で、何かつぶやいているようなのだ。本人に直接訊いてみようかとも思ったが、無理矢理言わせたくはなかった。
それから更に暫くして、ラキが脱走しようとした。
その時は、タイミング良く私が部屋に戻っていて、すぐに止めた。ラキは、何も言わなかった。私も何も訊かなかった。正直何を訊いたら良いのか分からなかった。
二度目はそのすぐ後だった。
魔術師組合の敷地は広い。その中には、日用品等を売っている店もある。その日、私はいつも通りそこで夕食の買い物をしていた。
ラキは出されれば何でも食べそうだが、私はきちんとしたものを食べさせたかったので、結構手の込んだものにするつもりで、食材も良いものを買った。実は料理をするのは好きなので、自分の趣味も入っている。良いものを選ぼうとして時間を掛けたせいだ。少し帰りが遅くなってしまった。
暗くなる前に帰るつもりだったのに、もう日が沈みかけている。急いで帰ろうと、私は早足で帰路についた。
宿舎の近くまで来て、そこで私は足を止めた。
少し離れた植え込みの影に、見覚えのあるオレンジ色の頭髪が見えたのだ。
奴隷に掛けられた呪は、逃げだそうとしても発動する。一度目の時は、私がすぐに押さえたから何事もなく終わったが、また同じことを繰り返すかもしれないと思ったので、不本意ではあったが出かける前に鍵のかかった部屋に入れておいたはずなのに、どうにかして出てきたらしい。
許可なしにこんな所まで出てきていては、確実に呪は発動している。私は慌てて駆け寄った。
植え込みの裏では、予想通りラキが倒れていた。首に描かれた呪が、淡い藤色の光を放っている。ラキは苦しそうに目を閉じて、荒く呼吸を繰り返していた。
通常、奴隷の呪を、それを掛けた魔術師以外の人間、主となった者がコントロールするためには、“カギ”と呼ばれるものを使う。カギはそれぞれの奴隷に一つずつ存在している。別にそれが無くとも、奴隷は基本的に命令には逆らえないが、言葉によらず、その場におらずに奴隷を操るためにはカギが必要だ。しかし、そのカギは同時に、奴隷に掛けられた呪を解くことも可能にする。故に、奴隷の主の中には、カギを壊してしまう者もいる。
ラキは、いわば不良品だった。カギが既に壊れてしまっていたのだ。ラキに掛けられた呪は、解除どころか、細かなコントロールさえ出来ない。
だが、それは普通の者なら、の話しだ。私は魔術師。それも―自分で言うのも何だが―優秀と言われる部類に入る。
私なら、ラキに掛けられている呪を、解くことは出来なくても、ある程度操ることが出来る。
走ってきた所為で、乱れた息を整える。
焦ってはいけない。失敗すれば、ラキだけではなく、私自身も危険だ。
意識して、深く息を吸う。次に吐き出す息に、声と魔力を乗せる為に。
「刻まれた力
刻まれた証
其は鎖
其は断罪者
しかして罪人は囚われ人なれば
罪もまた己で定めるものならず
よってここに宣言する」
呼びかける。空気が、魔の息を含んで変質する。私を取り巻き、渦巻き、私を中心にそこに“場”が出来る。
「この者の罪を私は咎めず
この者の罪は私が許す」
変化した空気が独特の色合いを持ち、風を生み出す。羽織っていた上着の、長い紺の裾が風に広がる。
ラキの瞼が震えた。目を開けようとしたのかもしれないが、あのサファイアブルーの瞳は、私の位置からは覗けなかった。
「故に其はこの者を罰するに能わず
私は支配する黒の魔術師
初めの人を姓に 主人の名を持つ者
私が命じる
この者に罪はあらず
其にこの者を罰する権利はあらず」
広がった空気が収束していく。そしてあっという間に、ラキの首の呪文が光を失った。
ラキは気を失ってしまっていたようだ。ぐったりとその場に横たわって、風の名残に髪をそよがせていた……。
エムブラ家は黒髪の魔術師一族。黒は、絶対的な支配や防御を表す色で、その為黒髪のエムブラ一族が扱う魔術には支配的傾向が強い。っていうかそもそも奴隷呪文を生み出したのがエムブラ家の人間。更にサフは名前に「主人」の意を持つことからその傾向が顕著。よってサフの魔術は「命令」によって生み出されます。サフの作った場の中では、彼が法。性格と持って生まれた素質があまり合っていないかもしれない。