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紅露と黒巳と紫陽花のオリジナル小話不定期連載中
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 おっひさですね~

 手ブロの方のオリキャラ(っつってもプロフは無いよ、サブだから)の中でちょっと気に入ってる子の小話を置きに来ました。

 わかんねぇところはフィーリングで読んでください←




 





口の中で何かがビリッと破れる音がした。
一瞬後に、ジワジワとした痛みと大量の血が咥内に広がる。
これだけの血を飲み込むのは流石に気持ちが悪いので、床にベッと吐き出すと、唾液で薄まった血と共に舌に付けていたピアスがキンッと金属音を立てて転がった。
どうやら先ほど殴られた拍子に噛みちぎってしまったらしい。
こりゃぁ、舌が裂けたな、と悠長な事を考えている暇は今の所ない。
大きく振りかぶり、正確に顔面へと突進してくる寸鉄を握った拳を避けると、再び意識は喧騒の中へと集約されていった。



喧嘩の時に負った傷は、喧嘩が終わった後に本当の痛みがくる。
舌の傷も例外ではなく、暫くモノを食うのに苦労しそうだ。
洗面台の鏡の前で舌を出すと、舌先に小さな切れ目が入り、二股に分かれかけていた。
少し見覚えのある舌だ、何処で見たんだったか、とあまり良いとは言えない記憶力に頼ってみると、蛇の舌が出てきた。
チロチロと口の隙間からはみ出す、アレ。
あぁ、見覚えがあるはずだ、確か知り合いがでかいのを飼ってたな、と一人で納得していると、洗面台を使いにきたすぐ下の弟が鏡ごしに姿を表した。
腫れた自分の顔をみてため息を吐くと、また喧嘩か、と弟は呟いた。
今更なので呟きは黙殺して、ベッと舌を見せる。
最初は訝しがっていた弟だが、ややあって舌の傷を確認したらしく、それは、早めに縫ってもらわないと舌先が蛇みたいになるよ、との旨の忠告をくれた。
有り難くそれを受け取り、早速病院を手配してもらう。
病院に行くその道すがら、同じ方向に買い物に行くと言う帰郷していた二番目の弟と暫く並んで歩いていると、そういえば、とどちらかと言えば無口な弟が口を開いた。
いわく、今の自分の舌が、昔自分が付き合っていた女の舌みたいだ、と言う。
こんな蛇のように奇っ怪な舌をしてた女なんか居ただろうか、と記憶を辿ると、自分にしては珍しく随分と鮮明に思い出せた女が一人。
確か、去年だったか一昨年だったかに事故で死んだ、あの女だ。
なるほど、道理で、と妙に納得した。
この腕に墨を入れたあの女。
自分にしては少し長く付き合ったあの女。
自分を振って、中学生のガキを選んだ、あの女だ。
名前を出して確認をすると、確かそんな名前だ、と弟は曖昧な答えを返してくる。
ならば間違いないだろう。
そろそろ命日なのではないか、と聞いてくる弟にそんな細かい事は覚えていないと返すと、弟は小さく肩をすくめ、それっきり目当ての店の前で別れるまで一言も喋らなかった。
あの女と似ていると言うのであれば、ますます早急に縫い合わせてもらわなければならない。
折角空けた舌のピアスホールも一緒に閉じなければならないだろうが、致し方ないだろう。
別れた女と、しかも籍をあの世に移し替えている女と揃いだなんて、笑えない冗談だ。妙な誤解をうけたらどうしてくれる。
第一、あの女ならこう言うに決まってる。

そんなに自分が恋しかったのか、今更だな寂しがり屋めと。

同じになった舌を見て、そうからかってくるに決まってるのだ。

「このあっつい時期に寒ぃこと言うんじゃぁねぇよ」

お前と揃いなんぞ、まっぴらだ。
そう、小さく吐き捨てると、煙草の煙を空に吹かす。
青い空に消えていく紫煙を見ながらぼんやりと、そろそろ命日ではないのかと言う弟の言葉を思い出して。

……仕方がない。
そろそろ弟も寮に帰る時期であるし、送るついでに墓に線香代わりに煙草でも供えてやるか、その時まで覚えていたら、だが。
そう、一人呟くと、短くなった煙草を揉み消した。


 

 

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