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そして本命の後に書くのがそれなの?っていう話だったり。
私の書く話は、概ね続き物よりこのくらいの短い物の方が、まわりの評判は良い。ということに最近気がつきました。
いつかファンタジー長編書くんだって言ってから何年経っただろう…。三、四年くらいでしょうか。
送る>受け取る
黒ヤギさんは、白ヤギさんに手紙を書くことにしました。
ごく最近までは近くにいて、よく会っていたのですが、白ヤギさんは遠くに行ってしまったのです。
会えなくなってから、黒ヤギさんは白ヤギさんに会いたくてたまりませんでしたが、何しろ簡単に会いに行ける距離でもありません。
そこでお手紙を出すことにしました。
色とりどりの便箋と封筒の、意匠も様々とりそろえて、さて何を書こうかと考えました。
まずはあいさつの言葉を書きます。それから、白ヤギさんがいなくなってから、この辺りで起こった変化。最近あった楽しかったこと。おかしかったこと。おいしかったもの。すてきだったもの。他愛のない、一緒にいたときによくしていたような、話をつらつら書き連ねて、でも白ヤギさんがいないと、どれも心の底から味わえないこと、会えなくて淋しくて会いたいと思っていることまで書いてしまうと、大変な量になってしまいました。
これはとても送れません。
黒ヤギさんは気をとり直して、もう一度書きはじめました。今度は白ヤギさんの近況を尋ねる内容です。元気ですか。そちらはどうですか。寒いですか。暑いですか。もう慣れましたか。何がありますか。何をしていますか。楽しいですか。悲しいですか。そうでもありませんか。
そうして筆のむくままさらさらと書いていたら、やっぱりこれも、大変な量になってしまいました。
そしてふと気がつくと、あれだけあった便箋も、もうほとんど残ってはいません。云いたいことも、訊きたいことも、たくさんたくさんあるのに、上手く手紙にできません。
黒ヤギさんは、のこった中からもう一度丁寧に見分して、便箋と封筒をそれぞれひとつずつ選び出しました。
便箋は紫苑色。この季節に咲く、白ヤギさんの大好きな花の色です。それを清潔な白い封筒に入れて、きれいな黒いインクで宛名をしたためました。
名前を書くとき、胸がどきどきして、手がふるえそうでした。
ポストに手紙を投函すると、黒ヤギさんはほうっと息を吐きました。胸に手をあてると、まだどきどきしています。
しばらくして、白ヤギさんからお返事の手紙が届きました。
はやく中を確認したい気持ちと、見てしまうのが勿体ない気持ちの間で、ゆらゆらと心がときめきます。
楽しみなような。怖いような。
開けたいような、開けたくないような。
そんな気持ちで、黒ヤギさんは手紙を開きました。
白ヤギさんの字です。
手紙が届いた。嬉しい、ありがとう、というようなことが、まず書いてあります。
読みすすめていき、黒ヤギさんは目を瞠りました。
心がすうっと冷えていき、ぎゅうとしめつけられました。
「用事は何だったの?」
その、一言が、黒ヤギさんの目から胸までを突き刺していきます。
黒ヤギさんの手紙は、白ヤギさんには届かなかったのです。
冷たくなっていく手の中で、白ヤギさんからの手紙がかさりと音を立てました。
黒ヤギさんは、その手紙を、口にはこびました。
かさ、かさ、かさり。
ぱり…ぱり…。
黒ヤギさんは、白ヤギさんからの手紙を食べた。
▽了
送る▽受け取る
ただし送ったものがそのまま受け取ってもらえるとはかぎりません。
オチのよめる話です。