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紅露と黒巳と紫陽花のオリジナル小話不定期連載中
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 絶賛教育実習中の黒巳です。
 え?実習はちゃんとやってますよ。本読む暇もないくらいで、日々へたばってます。
 違いますよ?これは前に書いてたやつを出してきただけで、実習の合間に書いたりとかそんなじゃないですよ。
 本当に暇なんかないです。授業計画やら採点やら卒業生として後輩の前で何か言ってやってくれとかで十分間スピーチ押しつけられた分の原稿とか毎日の実習簿とかその他諸々で。

 ちょっとした息抜きですよこれは。これぐらいいいだろう。

 と、言うわけで鬼子流離譚。季節っぽいものです。(実は金魚案もあった)



 前日に町に着いて、その日の内に札がすっかり売れてしまったので、宿に腰を落ち着けた青蓮に許しをもらって、彪と架楠の二人は今日は町中の散策に出た。
 青蓮のつくるお札は主な収入の一つだ。この厄除けの札と占いが、青蓮の収入の大半を占めている。頼まれればお祓いや祈祷のまねごともするが、そんなことはごく稀だ。
 札が売れて路銀が出来たのはありがたいことだが、「最近この向こうで流行病があったからねえ」と、青蓮は少し悲しそうに笑った。
 いつであっても、どこであっても、人の不安な心はその隙間を埋めるのに、超常的な力を選ぶものらしい。
 朝方に降った雨で、しっとりとした、黒く古びた木造の家々は、地面と共に雨上がりの匂いを立ち上らせている。そうした気配の濃密な路地を、二人は歩いていた。
 頭上をすいと横切る影に頭を上げると、二人に白い腹を見せて飛んでいくのは、二又の尾が特徴的な、初夏の風物詩―燕だ。
 笑い声が漏れる。
 互いの確認など必要としない。
 青空の下を低く飛んでいく燕の姿を追って、二人は走り出した。
 すいっ、すいっ、と泳ぐように空を渡っていく燕は、やがて一軒の家の庭に入っていった。
 彪と架楠が垣根の前で足を止め、燕の行く先を目で追うと、軒先に、盛んに嘴を突き出すひなの詰まった巣があるのが見えた。
「かわいい!」
「うまそう!」
 重なった二人の声の内容は見事にずれていた。
「彪…ひなとか、食べるの?」
「食うだろ?」
「僕はちょっと同意できないな」
「ふーん。ああ、でも」
 騒がしく鳴くひな鳥と、忙しそうな親鳥を見て、彪の顔がほころぶ。
「ああいうのは、なんかいいな」
「うん」
 それには賛同の声を上げた架楠も、すっぽりと頭を覆う頭巾の下で、笑った。
 宿に戻ると、青蓮が身支度を調えて待っていた。なんでもこの町のとある商家から、頼み事があるからと招かれたと言うことだ。
 三人は連れだって宿を出た。
 薬を扱っているという店先で案内を請うと、すぐに奥へ招じ入れられた。
 長い廊下の先の母屋で三人を迎えた主人は、髪に大分白いものが混じっていて、顔には愛想の良い笑みを浮かべた、初老の男性だった。
「招待に応じて頂いて感謝します。巫女殿」
「こちらこそ。お招きに預かり光栄です」
「―と、そちらのお子は?」
 青連に続いて室内に入った、背格好も同じくらいの二人の子供を見て、主人はどう扱えばよいのか迷ったようだ。
 どことなく不思議な赤銅色の肌で、大きめの頭巾を耳まで被っている彪。―だけならまだそこまで不審を買うほどではないが、胸まで垂らした布で、頭全体を隠してしまっている架楠は相当怪しい。
「これらは私の使役している童子です。お気になさらず」
 青連は、追求されにくい、普段から使っている方便をさらりと述べた。
 二人も心得たもので、何も言わずに軽く会釈だけしてみせた。
 案の定、主人は感心したように一つ頷くと、それからは青連の後ろに控える二人のことは気に留めなくなった。
「昨日うちの者が、札を打っておられる巫女殿をお見かけしまして、聞いたところによると、化け物の相手などもなされると」
「私で手に負える範囲内であれば」
「なに、無茶なことを頼もうというのではありません」
 主人は笑みを深くして言った。
「見ていただいた方が早いでしょう。―こちらへ」
 すっと立ち上がると、背後の襖を開け、更に奥へと三人を誘った。
 その先にあったのは、所謂座敷牢であった。中には薄茶の地味な鳥が三羽、放たれているが、それらが、ちゅるりきゅるりと、実に美しい声でさえずっている。
 そして壁際に座り込む、影が一つ。
 部屋に入ってきた気配に反応して、影がこちらを向く。
 禿髪に黒目がちの目をした、十かそこらと見える少女が紅梅の着物に青の単を着て、ちょこんと座していた。
 但し、少女には腕がなかった。
 袖を切り落とされた着物の肩口からは、大きな翼がにょっきりと生え、少女の両脇に折り畳まれて、異様さを醸し出している。少女は翼を震わせて、きゅり、と短く鳴いた。
「この子は…?」
「昨年買ったものです。実は私は鳥が好きなのです。これは鳥と言えるものか分かりませんが、面白かろうということで」
 主人は、自分のものを自慢する収集家そのものの顔でそう言った。
「他の鳥と一緒にしていましたところ、どうも学習するらしい。実によい声で鳴くようになりました」
「それで…?」
「いや、失礼しました。頼みというのはですね。これが害をなす類のものなのかどうが、見極めて頂きたいのです。可能なら、多少危険でもこのまま飼っていたいと思っています」
 もし危険であっても、手元に置いておきたいという収集家の執着こそが危なっかしい。だがこういう人間への忠告の無意味さを知っていた青連は、何も言わなかった。
「きちんと調べないと断言できませんが、見たところ無害なようですね」
 代わりに、簡単に告げるとそのまま帰ってしまいそうな様子を見せたので、主人はやや慌てたように、青蓮に近づいてきて、では是非とも泊まっていって、調べてくれと言った。
 結局重ねて頼み込まれ、部屋を用意させるために主人が立ち去った後で、元の座敷に戻った青連は、立ち尽くしている彪の頭に手を置いた。その彪の袖を、さっきからずっと掴んでいた架楠は、布越しにちらりと青連をうかがった。
「暴れるんじゃないよ」
 宥めるように、静かに告げられた言葉に、彪は顔を跳ね上げた。
「でも…っ」
「話は後だ」
 青蓮がそう言った直後、主人が戻ってきたので、彪も口を閉じた。
 その話は用意された部屋に落ち着いてから、再開された。
「なんだよあれは。モノ扱いしやがって!」
 同じく人外、総じて人間からは鬼と呼ばれる存在である彪は、許せないと息巻く。
「じゃあどうするって言うんだい」
「あいつをあそこから出す。あんな檻俺が壊す。そんであの巫山戯た男を殺してやる」
 脇で二人の会話を聞いていた架楠は、ぎょっとした。
 青連は厳しい目を彪に向ける。
「馬鹿なことを言うんじゃないよ。あんたみたいな子供が、殺すなんて軽々しく口にしちゃいけない」
「俺の父ちゃんは人間に殺されたんだ。俺が仕返してやるのの何がいけない!」
「だから不条理には不条理で返そうって言うのかい。いけないよ。そういうことを知ってるあんたこそ、不条理に手を染めちゃいけない。それにもう一度言うけどね。子供が、殺すなんて、そんな切ないことを言わないでおくれ」
 そう言う青蓮が、本当に切なそうな目をするので、彪も少し怯んでしまう。
「じゃあ、あいつを助けるだけでいい」
 しかしその言葉に、またもや青連は頭を振った。
「それも無理だよ。私だってなんとかしてやりたいけど、あの子は飼われてるんだ。そしてそれに慣れてしまってる。見ただろう。あそこから出してやったところで、あの子は他に生きる術を持たないだろう」
「そんなっ!」
「なんとかできないの。青蓮さん」
 たまらず、架楠も横から口を出す。
「助けるっていうのは、そんな簡単な事じゃないんだよ」
 困らせているのは分かっていても、架楠はでも、と言う。
「でも青蓮さんは僕たちを助けてくれたよ」
「それは、あんた達が、私の手の届くところにいたからさ。でもあの子には、私らがしてやれることはほとんど無い」
 子供達は、しょんぼりと黙り込んでしまった。そんな二人を青連は腕を伸ばして抱きしめた。

 

あとがき
 青蓮さんは今回大人の意見担当、みたいな。ちょっと厳しく見えるかもしれませんが、子供達の母親役なので。
 ところで燕の鳴き声ってどんなんでしたっけ。

 

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