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紅露と黒巳と紫陽花のオリジナル小話不定期連載中
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 を、聴いているところ。

 ご無沙汰しておりました。
 明日からゴールデンウィーク突入!ということで、短い物を一つ、置きに来ました。
 部誌に載せるように書いたものですが、出すかどうか微妙なのでとりあえずここで。
 
 因みに、今回の部誌のテーマは蒼穹と蒼海。
 どうしよっかなー、と言っていたら友人が、
「え?人魚書けばいいじゃない」
 うん。好きですよ。でもあれ?私のイメージはそんなにそればっかりか。

 
 
 



海にかえりたいの、と彼女は言う。
 海にかえりたいのよ、と繰り返し懇願する。
 好きにすればいい、と僕は応える。
 海にたどりつく前に、わたしは干からびてしまうわ、と彼女。
 それはそうだろう。彼女は陸棲ではない。
 水がいるのよ、たっぷりと。
 それならそこから出なきゃいい。たっぷりあるだろう。君に必要なお水が。そもそも君は、海の生まれじゃないだろう。帰ると言ったところでさ。
 たしかにちがうわ。でもちがわない。彼女は愛らしいいたずらな手で、くるりと水を掻き回した。
 海はすべてのいのちが生まれ、そしてかえるところ。わたしたちは、それを知ってるのよ。
 彼女は、僕と違って彼女こそは、海から生まれたもののようだ。鮮やかに晴れた日、光の降り注ぐ海が、空の色を映して輝くあの蒼を。彼女は有している。
 僕はあそこには帰らないよ、と冷たい声が漏れた。
 あなたがどうでも、わたしはかえりたいの、と何度目かも分からない程繰り返された言葉。
 かえりたい、かえりたいって。何故だろう。そんなに言うから、可哀想になってくる。
 けれど僕には、君は運べないよ。
 残念そうな顔をする彼女。
 分かった。じゃあ君が干からびたらさ。そうしたら、僕にも運べるだろう。そしたら、君を海まで連れてゆく。
 本当に?と、ほんの気まぐれで言ったそれに、彼女はとても嬉しそうな顔をした。
 本当さ。
 君の髪が、少しずつその蒼を失って、白く白くなって、指先まで乾いて、君のその眼が、蒼穹をもはや映さなくなった時。冷たくなった君の身体を、温かな海の上に、投げ込みに行こう。
 それなら、わたし待ってるわ。すっかり、干からびてしまっても、すぐには海にかえらずに。躯にとどまり、待ってるわ。わたしのこと、あなたが海に還すのを。
 そうしなよ。
 干からびきった、彼女を波に浸したら、蒼はもう一度宿るだろうか。
 白くなった彼女に、僕は耐えられるだろうか。
 彼女の蒼失に、僕は耐えられるだろうか。
 
 君が僕を見て笑うから、僕は君を返してやろう。
 
 あの蒼海に。


 
あとがき
比喩表現でも擬人法でも、お好きな方で。
海にあこがれた空。相容れないふたり。
僕は彼女を愛するのです。

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