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紅露と黒巳と紫陽花のオリジナル小話不定期連載中
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 無事、昨日で実習終わりました!
 疲れた!
 でも楽しかった!
 しんどくても良い経験になるよ、と先輩に言われていましたが、本当にそうでした。
 母校が昔と色々変わってた。

 衝撃だったこと。
 生徒に先生ってチャーミングですねって言われた。……そんなこと初めて言われました。と言うか、意味、分かって使ってるのかな。
 なんか他にも色々ありましたが、総合すると楽しかった。

 前回の続きを置いておきます。

 滞在中、青蓮に着いて、二人は何度か例の座敷牢に足を運んだ。少女はいつも大人しく、彪が声をかけても返事をしなかった。そもそも言葉が分からないらしい。表情に乏しいその顔からは、これといった感情も読み取れない。
 少女が、時々高いところにある窓から、矩形に切り取られた空を見上げているのを、彪も架楠も何度か目撃した。
 そうして数日が過ぎ、青連は、この少女は危険ではないと判断を下した。屋敷の主人は喜んで、親しくしている取引相手を呼んで、少女の歌声を披露する席を設けた。
 自慢したくて仕方がないらしい主人に、折角ですからと誘われて、座に加わっていた青蓮の後ろに、少年達もちんまりと座っている。
 軽い食事と会話で場が盛り上がってきた辺りで、隣の座敷へと続く襖が開け放たれ、綺麗な着物を着せられて、座敷牢を出てちょこんと座っている翼の少女が現れた。
 客はまずその姿に驚き、次いで少女の美しい声に聴き惚れた。
 澄んだ、よく伸びる声で、足を柱に繋がれた少女は、一同を魅了する。
 ひとしきり鳴き終わるまで、誰も声を出さずに聞き入っていた。
「本当に、美しい声ですね」
 青連は、心からそう思って言った。
「いやはや。見事なものですなあ」
 客の言葉の仲に、羨望の色を見た主人は、機嫌良く何度も頭を揺らせている。
「竹下さんにそう言って頂けると、胸を張れますな」
 主人のその言葉が終わるか終わらぬかといったところに、またしても少女の声が響く。但し、それは今度は明確な言葉の形を取っていた。
「―竹下の小僧……調子に、……竹下の小僧が……竹下の、竹下の小僧―」
 美しい音色で彼女が真似たのは、何も鳥の声ばかりではなかった。人に似た形をしているだけある、と言うべきなのか。人の声も、見事に真似てみせたのだ。
 だん、と血相を変えた主人が立ち上がり、皆が呆気にとられている間に、敷居をまたいでいた。
「お前っ、何を…!」
 叫びながら、振るわれた拳で、少女の体は床の上を横倒しに滑ったが、足の縄が張って止まる。足首には赤く、擦過傷が残った。
 次の瞬間には、青蓮が止める間もなく、彪が男を殴り倒していた。
「ぎゃっ!」
 無様な悲鳴を上げて転がった男に向けて、再度振り上げられた腕を、青蓮が引き留める。
「あんたの力じゃ死んじまうよ。一発でやめておやり」
 彪は怒りに震えながら、それでも動きを止めた。怒りで赤くなった顔は、まだ満足したわけではないと示してはいたが。
「一体、どういうことですか…」
 ぽかんとした声に、転がったまま呆然としていた主人は首を巡らせる。
「竹下さん…」
「―帰ります!」
 主人は何か言いかけたが、その前に客の方が、はっとしたように立ち上がり、顔を真っ赤にして、足音荒く出て行った。馬鹿にされたと思ったのだろう。
 その背を見送ってから、ようやく思い出して、彪は少女の方に目を向けた。架楠が、少女の足の縄をどうにか解いてやったところで、しきりに大丈夫?と聞いてくる架楠を、少女は不思議そうに見ている。
「お前、なんてことを…」
 その少女を憎々しげに男が睨む。
「見苦しいぜ、おっさん。本当に殺されたいのかよ」
「やめなさい。彪」
 すごむ彪をたしなめて、青連は男に向き直った。
「巫女殿。どういう了見で…」
「泊めて頂いた手前、こちらも失礼なことはしたくありません。ですから先ほどのこの子の非礼は詫びましょう。けれどここまでです。貴方は、その子を手放した方が良いようです」
 男が黙ったのは、手放したくない気持ちと、憎い思いとの間で迷ったのだろう。
 その時、客人が開け放していった障子から、燕が一羽、舞い込んできた。
 突然の珍客に皆の目が注がれる。
 燕は一声、ぴいい、と鳴いた。少女が上半身を起こし、ぴい、とそれに応じる。
 すると、珍客は燕返しに空を切った、と見る間に少女と同じく、人の体に翼の生えた姿となって、座敷に降り立った。
 すらりとしたその女性がすたすたと近づくと、少女は既に決まっていたことのように、ついと立ち上がった。
 女が翼を一振りすると、奥の壁はさらさらと崩れるように消えて、路地と敷地とを隔てる垣根が現れる。
 女は、少女の横で、驚いた顔で自分を見上げる架楠と、少し離れて立ち尽くしている彪に、軽く微笑んで、その隣の青連に、頭を下げた。
 そして、みっともなくうずくまる男には一瞥もくれず、少女を伴って、壁のあった所から飛び立っていった。
 少女は初め、翼をばたつかせて、ぎこちなく飛び出したが、やがて屋根の上まで届き、そこで一声、鳴いた。
 高く、長く、遠く遠く響き渡るその声は、今まで聞いた少女のどの声よりも、美しかった。
「さて、じゃあ私らもお暇しようか」
「おう」
「うん」
 そして三人も、屋敷の外に出た。


                        


思ったよりも短くなりました。本当は今回は彪が活躍する回になる予定だったのですが、大体予定通りにいかないものです。
もっと燕子ちゃん(仮)とからめたかった。―名前付けるなら、アヤメちゃんとかが良かったかなあ。まあ使う機会ないですけど。

 

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