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紅露と黒巳と紫陽花のオリジナル小話不定期連載中
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 長々と、と言うかだらだらと続きましたが、これにて終わりです。
 短いので連続で置きに来ました。
 本当に短いです。

 ずっとタイトルに使ってたのは萩原朔太郎です。念のため。
 この人素敵。太宰に通じるダメさと、それ故の愛らしさを感じます。
 あとなんか、孤独に浸っているところとかが、いわゆる中二病の人なんかに受けがよいんだとか。中原中也と並んで、中二病ちっく、らしい。…わたし両名とも好きなんですけど。
 この人の愉快でダメでかわいいところは、「自転車日記」を読めばよく出てます。これは詩ではありませんが。

§人魚の子孫§ 

 その朝のことは、両親には言えなかった。ただでさえ心配をかけているのに、これ以上じぶんのことで、不安のたねをふやしたくなかったのだ。すこしうしろめたいきもちを抱えて日々をすごしてたリビアンは、ある日唐突に吐き気におそわれた。父も母もえらく心配してくれたが、リビアンはわらって平気だと答えた。
 しかし、めまいや吐き気はその後もたびたびリビアンをおそった。
 母は「まさか…」といいさして首をふった。
 だがそのうちに、否定しきれないぐらい目に見えて、リビアンのはらは膨らんできた。
 両親はだれの子かとリビアンを問いつめたが、彼女はこたえなかった。答えようがなかったのだ。とにかくも、ひさしくなかったリビアンの変化を、家族は見守ることとなった。
 誰のものなのかわからぬ胤なのに、リビアンは恐ろしさや不安は感じなかった。いまはじぶんの一部であるこどもが、やがてじぶんではなくなる、産まれでるそのときがまちどおしかった。
 春に、リビアンはかわいらしい男の子を産んだ。
「まさか孫がみられるなんて…」 
 母は父にかたを抱かれ、泣いていた。
「名前はなんとつけようか」
 母の問いかけに、リビアンは決めていた名をつげた。
「ユジーンにするわ」
 それはあの朝からあたまについて離れない名前だ。
 こどもの腕にはうろこ状のあざがある。
 元気な子だ。こどもの成長ははやい。きっとすぐにおおきくなるだろう。
 我が子を抱こうとのばしたリビアンのうでに、袖丈はすこしみじかくなっていた。

 

          了 


 他にもリビアンの夫とか出てくるバージョンも考えていたのですが、長くなるので、結局こういう形になりました。でもこれだと、ちょっと最後分かりづらいでしょうか。

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