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紅露と黒巳と紫陽花のオリジナル小話不定期連載中
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ここに書くほどのことないなー。困るわー。

さて、目的地に着いた一行は、風情あるレトロな旅館にたどり着いた。美人女将に案内され、桜の間にプスとレス、紅葉の間にリーズとサト、柊の間にパズとレム、そしてハリトーと言う感じで泊まることになった。部屋わけはお馴染みあみだくじである。まぁ色々と言いたいことがありつつも、長旅だったこともあり、結局七人は荷物をおき、とりあえず夕飯に舌鼓をうった。それから一服もかねて、各自部屋に戻り、三十分後、柊の間に集合することにした。温泉に行く前に、ちょっとした雑談会をやることにしたのだ。
 というわけで、リーズ、サト、プス、そしてすでに半分寝かけ(立ったまま寝る気まんまん)のレスの四人は、柊の間の前にいた。中に入らないのは、中から聞き覚えのある怒号と、暴れまわっているのであろう大きな音が聞こえてくるせいだった。まず間違いなく、乱闘が起こっている。そう思うと、部屋のドアを開ける気にならないのだった。
 リ「もうよー、雑談会なんかしないで温泉入って寝る方がいいと思うんだよなー、俺」
 サ「お前にしちゃ、至極真っ当な意見だね」
 プ「でも、約束をすっぽかしたら、それはそれで怒ると思うけどな……。何より、レムが可愛そうだよ、それは」(完全な巻き添え)
 ス「ふぁ〜。……、俺、温泉もパスでいいので、もう寝てきていいですか?」
 他三「駄目に決まってるだろが」
 リ「寝倒す気か、お前はっ?! 旅行に来てる意味分かってるか?!」
 ス「えぇ? だって、旅行ってつまりゆっくりするってことなんでしょう? なら問題ないと思いますが」
 プ「間違えてはないけど、その認識改めて! 温泉も入らないなんて、勿体なさすぎるよっ!!」
 サ「大体、君は僕らの後輩なんだよ? こういうときは、君が予定組んだり、催し考えたり、盛り上げたりして先輩を優遇するべきだと思うけどね」
 ス「はぁ……。すみません。そもそも旅行ってしたことないので、勝手が分からないです」
 リ「それは今回はしゃーないからいいとして、どこそこ構わずすぐ寝るのは止めろ」(あと俺への態度だけなんか軽々しいのもやめろ)
 ス「はーい」(気にしてない)
 プ「ともかく、埒がいかないし開けるよ?」
 覚悟を決めたプスは、取っ手に手をかけ、扉を力強く開け放った。
 途端にバスンッと鈍い音を立てて、枕がプスの顔面にクリーンヒットする。他の三人は、唖然として立ちすくむプスの横から、部屋の中の様子を伺った。案の定、そこは乱戦の最中だった。
 ハ「俺っちが食おうとしてた煎餅食いやがって! このマックロクロスケっ!!」
 パ「喧しいっ!! 貴様のだなどといつ決まったんだっ!!」
 ハ「俺っちが一回唾つけといたんだぜぃっ!!!(取られないようになっ!)」
 パ「っ!! ……」
 ハ「ギャーっ!! 今更投げて返してくんなっ!! お前がかじった奴なんか食いたくないんだぜぃっ!!」(バカかっ!!!)
 パ「どちらが馬鹿だっ!! 誰が食うかも分からんのに、唾つけたやつを元の場所に戻すなっ!! 非常識なっ!」
 レ「よーぅ。お前ら、やっと来てくれたのか」
 枕、煎餅、部屋に備え付けられている木でできたパズル、ハンガーなどが空中を舞う中、すでに満身創痍のレムが匍匐前進で、玄関にまで近づいてきた。どうやら長身故に、立つと飛んでいるものがガンガン当たるらしく、折角の美形な顔の所々に青あざができていた。
 ス「……、大変ですね、レム先輩」
 レ「分かるか? 夕飯食って帰ってきて十分と経たずに喧嘩し始めてなぁ(苦笑 止めようとすれば止めようとするほど巻き込まれるんだよ」
 プ「ほんと、相変わらずだね。中身がクッションビーズの枕で良かったよ。(それでも痛かったけど)」
 リ「つーか、またくだらねぇことで喧嘩してやがるなぁ。(煎餅ごときで)」
 ス「やっぱり、せめてあのお二方だけでも離した方が良いんじゃないですか?」
 リ「別に今更いいだろ? また荷物持って移動するのもめんどうだし」
 レ「ひまわりぃ〜! 他人事だと思いやがって」(ちょいキレ)
 サ「んー、でもよくよく考えればこの部屋って、僕らの部屋のちょうど真ん中なんだよね。夜中にこんな喧嘩されちゃ、たまったもんじゃないよ」
 リ「そりゃ困るな。……、約一名を除いては」(レスを見る)
 ス「?」
 レ「それ以前に、俺絶対寝れないからな。この状況じゃ。旅行どころじゃなくなる」
プ「折角の旅行なのに、ギスギスしてるのは嫌だよ」
 サ「仕方ない。僕が魔法の言葉を言ってきてあげるよ」
 自信有りげに、サトはニコリと笑うと戦陣の中へと歩み寄っていく。サトが放った一言に、恐怖で顔を真っ青にした二人を見て、「あちら側でなくてよかった」と胸なでおろす他四人だった。
 
******
 サ「さぁて、面倒ごとは終わったことだし、普段の妬み嫉み、愚痴悩みはきれいさっぱり忘れて盛り上がろー!」
 リ「なんだよ、そのテンション……。お前ちょっと気持ち悪いぞ?」
 サ「(無視)で、雑談会の内容だけど、折角レトロないい感じの旅館に泊まってるんだし、時期はすこーし外れるけど『怪談』なんてどうだい?」
 リ「はぁっ?! なんで?!」
 ハ「面白そうだぜぃ! 部屋暗くして、百物語するのもいいな!」
 プ「百はちょっと……。七人でやってたら時間かかりすぎちゃうし」
 レ「まぁ、一人一回ずつぐらいにすりゃ、それほど時間はかからないだろ? 和室でいい感じの部屋だし、面白いかもな」
 パ「……まぁ、全員話すネタを持ってるならやってもいいだろうが……」
 そう言ってパズが冷たい目線をリーズに向ける。それに倣うように、一斉に視線がリーズに集まった。無理に作り笑いをしているが、顔は真っ青、目は泳ぎ、必死にふるえているのを隠そうとしているのが丸分かりだった。
 パ「どう考えても、持ってないだろうな(ハハン)」
 リ「は、はぁっ?! こ、こわいはなしの一つや2つ! お、俺だって持ってるし! 六人衆の一角だぞ、俺は!」
 レ「それは関係ねぇだろ(笑」
 ハ「リーズ、怖いんだぜぃ? やっぱ明かりはつけといてやろうか?(ぷぷぷ)」
 サ「むしろ盛大に怖がってほしいんだよねぇ。その様子、動画で撮ってビーズに転送するから(笑」
 リ「それただの嫌がらせじゃねぇかっ?!!!」
 サ「案外ビーズは喜ぶと思うよ(笑 まぁ、スミレやアカネも違う意味で喜ぶと思うけどね(ニヤリ」
 リ「俺を辱めて遊ぶの止めろっ!(毎度毎度!)」
 プ「レスはどう? 怖い話とか、できそう?」
 一同が爆笑する中、部屋にあったらしい旅館の周辺ガイドブックを読んでいるレスにプスが話しかける。レスは「こわい話というと?」と、ガイドブックから目を離して尋ねた。
 ス「拷問や殺されかけた話ならいくらかありますが?」
 プ「うん。その「恐い」じゃなくて……。ホラーな方ね」
 ス「ホラー……、それ系統の本の話でよければ」
 レ「それで十分だぞ、レス。 たぶん、リーズの奴どんな話しても怖がるから(笑」
 リ「うるせぇ! やってみやがれ!! 俺ぁもう、一切怖がらねぇぞっ!!!」
 顔を真っ赤にして怒るリーズに、とても悪い顔でサトが携帯を向けていた。どうやら動画を撮っているらしく、それに気づいたリーズはさらに顔を真っ赤にして怒声を上げた。
 ス「……それにしても、先輩方はすごいですね。ここに来てまだそれほど時間も経ってないのに、もう知り合いの方ができたんですか?」
 プ「はえっ?」
 ギャーギャー騒いでいる面々を、苦笑いして見ていたプスは、突然そう言ったレスに思わず変な声を出した。レスは「俺、変なこと言いましたか?」と言いたげな目で自分を見返してきている。だが、プスにはそれがどういう意味かわからない。
 プ「え? 別に僕ら、誰とも知り合いになってないし……。この七人以外じゃ旅館の人や、他のお客としか会ってないけど……、別に知り合うってほどじゃ」
 ス「? じゃぁ、今この部屋にいる人達は誰なんです?」
 プ「え?」
 ス「……え?」
 ハ「どうしたんだぜぃ? 二人共」
 顔を突き合わせて大量のクエスチョンマークを浮かべている二人の間にハリトーが割って入る。その一声で我に帰ったのか、プスは一度頭を振ると「ちょっ、ちょっと待ってね」と少し考え込んだ。
 プ「えーと……、レス? 今この部屋にいる人数を、声に出して数えてみてくれる? レス自身から初始めて、時計回りに」
 ス「? 分かりました」
 何始める気だ?というメンバーが殆どの中、徐にレスが自分を指し、「1」と言い、右隣にいたプス、ハリトー、リーズ、サト、パズ、レムと順に指で追いながら「2、3、4、5、6、7」と数字を数えていく。なんだ、部屋にいる人数数えてるだけかと、状況を読めていなかったメンバーが気を緩めた時だった。
 ス「8、9、10」
 レ「ん?」
 レムの隣、誰もいない空間を指差し、レスは数え続ける。
 ス「11、12」
 リサパ「は?」
 リーズ、サト、パズのそれぞれの間を指してさらに続ける。
 ス「13、14、15」
 ハ「えぇ?! えぇ?!」
 ハリトーの周りで三度、誰もいない場所を指差してさらに続く。
 ス「16、17、じゅうは」
 プ「やめて、レスっ!! もういい、もういいから!!!」
 ス「えー? まだあと10人くらいいるんですが」
 さらに自分の周りを指しながら続けようとするレスをプスが止めた頃には、全員の背筋に冷たいものが走っていた。こいつは一体何を見て、何を数えていたんだろう。正直、考えたくもないことだった。
 ハ「レッスー、もしかして幽霊がみえぶっ!」
 リ「その単語を口にするなよっ! こんなの夢だっ!! ど、どうせこいつがね、寝ぼけてるだけに決まって」
 サ「そういやー、レスってさぁ。たまに戦教でも、誰もいないところで会釈したり、何にもない空間じーっと見てたり……するよね?」
 リ「えっ?(汗」
 レ「そういえば前にユウイ先生がレスといて火の玉みたって興奮気味に話してたなぁ」
 リ「……」(顔面真っ青)
 ハ「うほーっ! レッスー、すげー!」
 パ「……」
 プ「やっぱり、レス。君、霊感持ってるんだね」
 ス「? 冷感でしたら、常に持ってますが?」(冷気垂れ流し)
 プ「いや、そっちじゃなくて(汗」
 リ「あー、そっちの冷感かぁ。そうだよなぁ。そうだよなぁ。いやー、良かった」(アハハハ……)
 サ「冷や汗かいて、顔は真っ青、作り笑いだってバレバレだよ。(ビデオ回しながら)まぁ、それはいいとして……、百物語やりたい人ー?」
 サトが全員にそう言ってビデオを向ける。誰も手を挙げなかった。
 サ「ですよねー(笑」
 プ「も、もっと楽しい話しよう! そ、そうだ! 温泉に来たんだし、卓球とかゲームしたいなー。な、何がいいだろーねー」
 パ「楽しんでこいと、マサ先生も仰っていたしな! ……、そうだったな? レム」
 レ「そーだなー。何が面白いだろなー」
 ハ「はいはーいっ!!! 俺っちのすんばらしい歌声を披露するためのカラオケなんてど」
 他「それは絶対却下」(ハ「ガクッ」)
 ス「先輩方、盛り上がるのはいいんですが、やらないんですか? 百物語。 皆さん(幽霊)、楽しみに待ってますが」
 リ「楽しみって、お前それおどかすの待ってんじゃねぇかっ?!! 誰がやるかっ!!」
 ス「でも、なんか余興しろよ的な、期待の眼差しで皆さん見てるんですが」
 他「お前はもう黙ってろっ!!」(状況説明いらないからっ!!)
 六人がそう叫んだ瞬間、部屋の明かりがブツッと嫌な音を立てて消えた。幽霊がいると分かっている空間で、突如として電気が消えたのだ。残念ながら、七人の頭に「停電か?」という言葉は浮かんでこなかった。浮かんでくるのは、嫌な想像ばかり……。薄い月明かりが窓から差し込む中、息を殺し、六人がレスにしがみついていると、廊下を誰かがパタパタと歩いている音が聞こえてきた。レスを除く全員がガタガタ震えながら、徐々に徐々に近づいてくるそれに身構えていた、その時だった
。七人が目線を向けていた逆方向、窓のすぐ側にあった床の間の掛け軸が、誰が触った訳でもないのに、突然壁から外れ、音をたてて落ちた。一斉に七人が振り向くと、窓にそれまでいなかったはずの青白い何かが写っていた。
 六「ぎゃーっ!!!!!!」(マジで出たっ!!!)
 ス「(うるさ……)」(慣れっこ)
 滅多に出さない悲鳴を六人が揃って上げたところで、パチンと電気は何事もなかったかのように点いた。
 ス「……、いい加減、皆さん離してもらえませんか? 重いし、痛いです……」
 プ「うっ、ごめん、レス。でも今は無理かも、腰、ぬけちゃって」
 サ「ま、ま、まぁ、これくらいの方がスリルあって良かったんじゃないかな? うん」
 パ「く、くだらんな」(幽霊なぞ)
 レ「思わず思いっきり肩持っちまったからなぁ。ごめんな、レス(苦笑 いやー、びっくりした」
 ハ「やっぱ本物は違うぜーぃ!! お化け屋敷なんかより、スリルあんなぁ! なぁ、なぁ、もっぺんやろうぜぃ!」
 サパレプ「二度とやるかっ!!!」
 それぞれにレスから手を離しながら感想を言っていく五人。しかし、いつになっても手を離そうとしない(ちょうど胸辺りを抱え込まれているせいでかなり苦しい)リーズを、レスは横目で睨みつけた。
 ス「リーズ先輩、いい加減苦しいんですが……っ!」
 リ「べ、別にこわ、怖がってなんか、ない、ないぞ!お、おばけの一つや二つッ!!」
 ス「分かりましたから手を離せ」 
 最早先輩もくそもないのか、いつもの敬語口調も忘れ、レスはリーズの手を引き剥がそうとする。が、力で到底敵わない上に、リーズはリーズで無理に引き剥がされるのが嫌でさらに力を入れてくる始末である。当然、さすがに可愛そうだと思った五人が、リーズを宥めにかかる。
 プ「リーズ、もう大丈夫だって。明かりもついてるし」
 リ「こ、怖くなんかねぇって言ってるだろっ?!」
 パ「本当に怖くない奴は、人に縋ってガタガタ震えなどしない」
 レ「そうそう。むしろ、怖いってことを認めればどうだ? そしたら案外怖くなくなるかもしれないぜ?」
 リ「どんな理屈だ、それっ!!!」
 ハ「文句ばっかなんだせぃ。いい加減にしねぇとレッスーが可哀想だろぅ、リーズ。お前ってば、力つえーから」
 リ「お前にだけは言われたくねぇっ!!!」
 サ「なんでもいいけどさ、リーズ。霊感ある人の側に長くいると、霊感伝染るらしいけど、お前、幽霊みたいの?」(サラリ)
 リ「!!!?!!」(バッ!!)
 ス「……それはそれであからさま過ぎて腹立ちますね(イラッ)」 
 サトの一言に、一瞬にしてリーズはレスから離れ、敷かれてあった布団の中に潜り込んだ。「怖がってねぇぞ? 怖いんじゃなくて……、レスのやつの側にいて、寒くなっただけだからっ!!」と布団越しに言い訳しているのを、全員がはぁと呆れてため息をついた時だった。
 キャハハハハハハハハッ!
 天井の方から大きな声で笑う子供の声が聞こえてきて、全員が息を飲む。ここは、一応二階建ての旅館の二階にある部屋だ。上に部屋はない……はず。
 ス「座敷わらしって本当にいるんですね」
 誰もが押し黙るなか、レスだけが何かを見ていたらしく、のんびりとそう呟いた。
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