紅露と黒巳と紫陽花のオリジナル小話不定期連載中
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レポートも終わってないのに、何やってんだっていう…。夏休みかあ…。うん。夏休みだよね。
紫陽花、ルビふったら大変なことになるの分かる!一太郎では上手くいくんだけど、ワードとかブログに映した途端だめになる。もう、字の後ろに()でくくって入れるしかないと思う。私もブログに載せるときは、漢字ひらがなに直したりしてる箇所あるよ。
まあ、とにかく続きから。今回短いです。そのかわり続きが長くなる予定。
本当はこの前にももう一つ、五月の部誌用に書いていたものがあったのですが、気に入らないので飛ばします。いつか書き直して載せることがあるかも?
紫陽花、ルビふったら大変なことになるの分かる!一太郎では上手くいくんだけど、ワードとかブログに映した途端だめになる。もう、字の後ろに()でくくって入れるしかないと思う。私もブログに載せるときは、漢字ひらがなに直したりしてる箇所あるよ。
まあ、とにかく続きから。今回短いです。そのかわり続きが長くなる予定。
本当はこの前にももう一つ、五月の部誌用に書いていたものがあったのですが、気に入らないので飛ばします。いつか書き直して載せることがあるかも?
大池には何か、性質のよくないものがいるらしい、というのはもっぱらの噂だ。
初めは平太だった。隣の村まで使いに行った帰りに、大池のほとりを通りがかると、ふいに水面が泡立って、白い腕が、ぬっと伸びてきたという。すんでの所で捕まりそうだったのを避けて、後は命からがら逃げてきた。
それからも同様の話がぽつぽつと挙がってきて、村の者は遠回りして、大池を避けるようになった。
その大池へと続く道を、今三人の旅人が歩いている。
不思議な道連れだ。
真ん中に、塗り笠を被った千早姿の巫女を挟んで、両脇に子供が一人ずつ。
一人は、よく日に焼けた赤銅色の肌をした男の子で、いかにも利かん気そうな顔の上に、ぶかぶかの頭巾を被っている。今一人は、頭巾の男の子と同じか少し高いくらいの背丈で、頭から胸までを、すっぽりと布で覆っていて、顔は窺えない。
日差しのきつい日で、三人が三人とも、暑さにまいっている様子だった。
そうして三人は、当然のように、大池のほとりで足を止める。
「ここでちょっと休憩していこうか」
「やったあ」
「あー助かった」
頭巾の少年─彪は、即座に傍の柳の木陰に飛び込んだ。青蓮と架楠もそれに続く。
「ちくしょう。なんでこんなに暑いんだ」
「彪はまだいいでしょう。僕なんか頭が蒸れて仕方ないよ」
ぺたりと尻を着いた彪の横から、架楠が訴える。
「二人とも、少し水をとっておきな。次の村までまだあるから」
そう言って、青蓮が差し出した水筒に、子供達が飛びつく。ひとしきり喉の渇きを潤してから、水筒を両手で持ったまま、架楠は池を見遣った。
「ここのお水が飲めるのなら、汲んでゆくのだけど」
「さてどうかねえ。溜め池のようにも見えるけど」
架楠の言葉に、三人ともが緑色の静かな水面に顔を向けた時、突如岸辺近くに白い泡が湧き上がった。
目を見開く三人の前で、ぬらり、と白い腕が水面に生える。その腕が、三人に向かって伸ばされる。
しかし、腕が何かを成す前に、子供達を守るように前に出た青蓮に、ぴしゃりと強か叩かれた。
腕はならばと、青蓮に掴みかかってくる。しかし青蓮も自作の札を懐から出して応戦する。突きつけられた札に触れた途端、火花が散って、腕ははじかれた。
子供達を背に庇って立ち、青蓮は声を張り上げた。
「挨拶もなしに随分なことだね。用があるなら姿を見せな」
凛とした声が響き渡るやいなや、にわかに池全体が揺れ始めた。池の中央から、大きな水柱が立ち上がる。
一番非力な架楠を彪が後ろにやった。
水柱から現れたのは、長々とうねる躰を持った、巨大な蛇だった。
「連れて行け。連れていけぇ」
目をぎらぎらといからせて、蛇は続ける。
「出来ぬなら、喰ってやる」
言うなり、大口を開けて岸に迫ってきた。
「なんだい。その八つ当たりは!」
青蓮は、手の中に札を用意する。先の札の効果から鑑みて、充分対応できる相手だ。そうして両者が臨戦態勢に入った時、
「どこに!?どこに連れて行ってほしいの?あなたを?教えて!」
叫んだのは、架楠だった。
目を丸くする青蓮の前で、大蛇が動きを止めた。
「では妾を連れて行くか?」
「努力する。だからまずは、事情を聞かせて?」
臆せずに、真っ直ぐ目を合わせてくる架楠をしばし見つめて、大蛇は口を開いた。
「よく見れば子供じゃない。喰らう気も失せた」
そうして三人の見つめる中、大蛇はぐにゃりと姿を変えた。その躰が縮んだかと思うと、あっという間にそこに一人の妙齢の女性が浮かんでいたのだ。
波打ち流れる髪は濡れ色。不自然な、鉛白のような白い肌に、豊満な肉体。─女が口を開いた。
「この先の村へ、妾を連れて行って欲しい」
そして続く言葉を、ひどく愛おしげに、大切そうに、発音した。
「息子が居るのよ」
初めは平太だった。隣の村まで使いに行った帰りに、大池のほとりを通りがかると、ふいに水面が泡立って、白い腕が、ぬっと伸びてきたという。すんでの所で捕まりそうだったのを避けて、後は命からがら逃げてきた。
それからも同様の話がぽつぽつと挙がってきて、村の者は遠回りして、大池を避けるようになった。
その大池へと続く道を、今三人の旅人が歩いている。
不思議な道連れだ。
真ん中に、塗り笠を被った千早姿の巫女を挟んで、両脇に子供が一人ずつ。
一人は、よく日に焼けた赤銅色の肌をした男の子で、いかにも利かん気そうな顔の上に、ぶかぶかの頭巾を被っている。今一人は、頭巾の男の子と同じか少し高いくらいの背丈で、頭から胸までを、すっぽりと布で覆っていて、顔は窺えない。
日差しのきつい日で、三人が三人とも、暑さにまいっている様子だった。
そうして三人は、当然のように、大池のほとりで足を止める。
「ここでちょっと休憩していこうか」
「やったあ」
「あー助かった」
頭巾の少年─彪は、即座に傍の柳の木陰に飛び込んだ。青蓮と架楠もそれに続く。
「ちくしょう。なんでこんなに暑いんだ」
「彪はまだいいでしょう。僕なんか頭が蒸れて仕方ないよ」
ぺたりと尻を着いた彪の横から、架楠が訴える。
「二人とも、少し水をとっておきな。次の村までまだあるから」
そう言って、青蓮が差し出した水筒に、子供達が飛びつく。ひとしきり喉の渇きを潤してから、水筒を両手で持ったまま、架楠は池を見遣った。
「ここのお水が飲めるのなら、汲んでゆくのだけど」
「さてどうかねえ。溜め池のようにも見えるけど」
架楠の言葉に、三人ともが緑色の静かな水面に顔を向けた時、突如岸辺近くに白い泡が湧き上がった。
目を見開く三人の前で、ぬらり、と白い腕が水面に生える。その腕が、三人に向かって伸ばされる。
しかし、腕が何かを成す前に、子供達を守るように前に出た青蓮に、ぴしゃりと強か叩かれた。
腕はならばと、青蓮に掴みかかってくる。しかし青蓮も自作の札を懐から出して応戦する。突きつけられた札に触れた途端、火花が散って、腕ははじかれた。
子供達を背に庇って立ち、青蓮は声を張り上げた。
「挨拶もなしに随分なことだね。用があるなら姿を見せな」
凛とした声が響き渡るやいなや、にわかに池全体が揺れ始めた。池の中央から、大きな水柱が立ち上がる。
一番非力な架楠を彪が後ろにやった。
水柱から現れたのは、長々とうねる躰を持った、巨大な蛇だった。
「連れて行け。連れていけぇ」
目をぎらぎらといからせて、蛇は続ける。
「出来ぬなら、喰ってやる」
言うなり、大口を開けて岸に迫ってきた。
「なんだい。その八つ当たりは!」
青蓮は、手の中に札を用意する。先の札の効果から鑑みて、充分対応できる相手だ。そうして両者が臨戦態勢に入った時、
「どこに!?どこに連れて行ってほしいの?あなたを?教えて!」
叫んだのは、架楠だった。
目を丸くする青蓮の前で、大蛇が動きを止めた。
「では妾を連れて行くか?」
「努力する。だからまずは、事情を聞かせて?」
臆せずに、真っ直ぐ目を合わせてくる架楠をしばし見つめて、大蛇は口を開いた。
「よく見れば子供じゃない。喰らう気も失せた」
そうして三人の見つめる中、大蛇はぐにゃりと姿を変えた。その躰が縮んだかと思うと、あっという間にそこに一人の妙齢の女性が浮かんでいたのだ。
波打ち流れる髪は濡れ色。不自然な、鉛白のような白い肌に、豊満な肉体。─女が口を開いた。
「この先の村へ、妾を連れて行って欲しい」
そして続く言葉を、ひどく愛おしげに、大切そうに、発音した。
「息子が居るのよ」
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